NVIDIAがH20輸出許可取得　トランプ氏に15％マージン献上も中国は不使用表明

トランプ政権による半導体輸出規制の劇的な転換が世間を驚かせたが、その背景にある動機は純粋な国家安全保障ではなく、実利の獲得にあった。ドナルド・トランプ米大統領は自ら、当初はNVIDIAに対し中国での売上の20％を納めるよう求めていたが、同社のジェンセン・フアン最高経営責任者（CEO）がホワイトハウスに直接出向いて交渉した結果、これを15％に引き下げたと明かした。大統領と企業CEOが対面で歩率を交渉する場面は米国史上極めて異例であり、トランプ氏が商人的手法でテクノロジー戦に関与する姿勢を鮮明にしたものである。

一方、NVIDIAが苦心の末にH20チップの輸出許可を取り付けた矢先、中国当局は企業に対し、とりわけ政府関連分野でのH20使用を避けるよう強く求める指針を発表した。これは同社の中国市場再進出計画に深刻な打撃を与えるとともに、米中テクノロジー戦争における複雑な権謀を浮き彫りにしたものである。

トランプがH20を旧型とし、「分け前取引」を20％から15％に引き下げた

H20は、米国の輸出規制に対応するためNVIDIAが設計した中国向け特別版で、性能はH100やH200より低く、主にAI推論段階（モデルの認識や判断）に用いられる。トランプ政権は4月、このH20チップに輸出禁止措置を講じ、販売が停止された。NVIDIAのジェンセン・フアン最高経営責任者（CEO）は、中国に米国の技術を使わせることは国家安全保障に資すると主張し、そうでなければ中国の国産産業の追い上げを加速させると警告していた。

米経済メディアCNBCによれば、トランプ米大統領は8月11日（月）の記者会見でH20を「時代遅れのチップ」と評し、中国はすでに華為（ファーウェイ）の同等製品など類似技術を有していると述べた。その上で、輸出禁止を緩和する条件として、中国での売上の15％をNVIDIAが納めることを求めたと明かした。トランプ氏は「もし国家のためにこれを認めるなら、私は20％を取る」と述べ、8日にフアン氏がホワイトハウスを訪れ直接交渉した結果、歩率は15％に引き下げられたという。

この「収益分配」合意はNVIDIAに限られたものではない。AMDも、中国向け専用AIチップ「MI308」について売上の15％を支払うことで輸出許可を得ることに同意した。

トランプ政権が特定企業の事業から一定割合の利益を徴収することについて、米CNNは憲法上の問題を指摘した。米国憲法第1条第9節は輸出への課税を禁じており、法的論争を回避するため、合意は「自主的な支払い」として設計され、税や関税とは見なされない。不特定の米政府関係者によれば、企業は「自主的」に政府に資金を提供し、その使途を問う権利はないという。

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法的な疑義だけでなく、政界からも懸念が出ている。米下院中国特別委員会のジョン・ムーレナール委員長（共和党）は英紙フィナンシャル・タイムズに対し、「輸出規制は国家安全保障を守る第一の防波堤であり、中国のAI技術を高める製品の輸出を認める許可証を政府に発行させる前例を作るべきではない」と述べた。

フィナンシャル・タイムズは、トランプ政権内の一部国家安全保障担当官が辞任を検討していると報じた。関係者の一人は「これが輸出規制当局者が毎朝出勤する理由ではない。この合意は米国の輸出規制体制に長期的な損害を与え、国家安全保障を売り物にしたくはない」と語った。

一方、トランプ政権の高官らは、H20チップの輸出規制緩和は中国のAIエコシステムを米国がコントロールし、華為（ファーウェイ）などの国内企業の成長を遅らせることにつながると主張する。ハワード・ルートニック商務長官やスコット・ベセント財務長官は、これが中国とのレアアース貿易との交換であるとも述べたが、以前はそのような取引を否定していた。7月末、ベセント氏がレアアース問題は「解決した」と発言し、2週間足らずでNVIDIAとAMDの許可が下りた。しかし、中国当局はH20チップの輸出規制と米中貿易協議の関連を否定している。

NVIDIAの広報担当者は11日、「ここ数か月、中国向けにH20を出荷していないが、輸出規制の調整によって米国が中国および世界市場で競争できるようになることを望む」と述べた。

トランプ氏は記者会見で、ジェンセン・フアン氏が再びホワイトハウスを訪れ、より先進的な「ブラックウェル」チップの輸出について協議する予定であることを示唆した。同氏はブラックウェルを「世界最高峰」と評し、中国がこれに追いつくのは5年以内には不可能だと強調。性能を30〜50％低下させない限り、輸出を認可することはないと述べた。

北京、安全性懸念からガイドラインを設置し、企業にH20の使用を止めるよう促す

米ブルームバーグ通信の独占報道によれば、複数の関係者が明らかにしたところでは、ここ数週間、中国当局が複数企業に対し、NVIDIAのH20チップの使用を強く控えるよう指示を出し、特に政府や国家安全保障関連分野での利用を禁止したという。指針には「なぜH20を選ぶのか、国産代替品ではない理由は何か」「使用は本当に必要か」「安全上の問題を確認したか」といった質問項目が含まれている。

中国側がH20チップに抱く懸念は大きく二つある。第一に安全面の不安で、H20に位置追跡や遠隔停止の機能が組み込まれている可能性を警戒している。NVIDIAは繰り返し否定しているが、偶然にもトランプ政権が密輸防止のため追跡技術活用を検討しており、米議会でも関連法案が提出されている。第二に、中国は国産産業の育成を強く推進しており、企業に華為（ファーウェイ）などの国内チップへの切り替えを促して自給自足化を加速させている。昨年9月にはすでにH20使用の回避を勧告し、エネルギー効率基準を設定して同製品が規格に適合しないようにしていた。

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中国国営メディアは最近、H20チップの安全性や信頼性への疑念を強調する報道を展開しており、監督当局もNVIDIAに直接疑問を突き付けた。これに対しNVIDIAは、「H20は軍事用や政府インフラ向けの製品ではなく、中国は十分な国産チップを有しており、政府運営に米国製チップを依存したことはない」と回答した。

関係者によれば、中国当局はこの指針の適用範囲をさらに広げる可能性があり、現時点では議論は初期段階にあるものの、NVIDIAやAMDの中国市場での展開に支障をきたすことは避けられない見通しだ。

しかし、これは同時に中国企業をジレンマに追い込むことにもなる。アリババやテンセントなど中国の大手テクノロジー企業は依然として、AI推論におけるH20チップのメモリ帯域幅の優位性に注目しているが、政策リスクがより多くの国産代替案の検討を迫っている。これはすなわち、たとえ禁輸措置が緩和されたとしても、実際の受注は大きく減少する可能性があることを意味する。

米中テクノロジー戦争の矛盾　利害取引の陰で揺れる安全保障

今回の一件は、米中テクノロジー戦争における矛盾を浮き彫りにした。トランプ政権は「収益分配」と引き換えに輸出を認め、表向きは米国の優位維持を装いながら、実際には政策転換の商業的動機を露呈した。政権関係者はH20を「時代遅れ」と評し、中国はすでに同等技術を持っているとし、米国は中国を低性能製品に依存させることで華為（ファーウェイ）の収益と技術を削ぐべきだと主張する。しかし北京は「脱米化」を加速させており、国産代替が未成熟であっても歩みを止める気配はない。

NVIDIAにとっては二重の打撃となった。ようやく許可を取り付けたにもかかわらず、中国当局の使用制限圧力に直面しているからだ。ジェンセン・フアン氏が見込んだH20販売回復の展望は不透明で、AMDも同様に影響を受ける。全体として数十億ドル規模の売上に影響し、米国が供給を支配しようとする一方で、中国は自立を推し進めるというAI分野での綱引きが鮮明になった。

トランプ氏が対中姿勢を軟化させた背景には、習近平国家主席との首脳会談や貿易協定を確保する思惑があるとされるが、北京の動きはテクノロジー戦争が終結には程遠いことを示している。台湾を含むアジア諸国にとって、これは半導体サプライチェーンの脆弱性を改めて示す警鐘であり、米中の駆け引きがもたらす波及効果への警戒が一層求められる。

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編集：柄澤南 （関連記事： 国際ニュース特集》北京、企業にNvidiaチップ購入の自粛要請。70万個の大型注文取消しか―なぜ中国はNvidiaにひかれつつも恐れるのか？ ｜ 関連記事をもっと読む ）

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