多くの市民が眠りに就いた深夜、桃園機場捷運の沿岸区間ホームでは、時間と錆、そして従来工法との静かな戦いが幕を開けようとしていた。これは単なる定期保守工事ではなく、数々の制約下で革新を武器に、都市インフラの「未来像」を築くための重要な戦いである。
桃園市の蘇俊賓副市長がSNSで明かしたように、この戦いの敵は、日々高い塩分を含んで吹き付ける厳しい海風である。それはA11坑口駅、A15大園駅、A16横山駅といった高架駅の鋼構造を容赦なく侵食し、塗装が剥離した無残な姿を残す。しかし、真の課題は目に見える錆だけではないのである。
深夜3時間の極限挑戦 「最良」が「唯一」の選択となる
「もし単に塗り直すだけなら、それは一時的な対策でしかない。私たちが求めているのは、本当に『耐候性』のある根本的な解決策だ。」半年前に蘇俊賓市長が提起したこの疑問が、桃園捷運のチームによる一連の困難な探求を始めさせた。
挑戦は立体的である。まず、時間の制約がある。すべての高所作業は深夜1時から4時の「黄金の3時間」にしか行えない。高架8メートルの駅の上部で、狭い軌道管理区域内で施工を行うため、1分1秒が貴重である。
次に、天候の制約がある。塗装作業は環境に非常に敏感であり、相対湿度が85%を超えると作業は中断される。沿岸駅で海風が吹きつける状況では、工事の進捗は常に天候に左右される。
「除塗」という最大の困難がこの作業の中核にある。伝統的な研磨工法では、大量の金属と塗装粉塵が発生し、施工スタッフの健康を深刻に脅かし、プラットフォームの空気質を汚染し、翌日の多数の乗客の健康に影響を及ぼす。このような手段は、公共輸送システムにおける責任として当初から選択の余地がなかった。
「環境や健康を犠牲にして、作業の利便性を追求することはできない。」この揺るぎない信念が、チームをこれまで誰も歩んだことのない道へと導いた。
「無塵革命」 磁気誘導テクノロジーで手際よく塗装を剥離
答えは、意外な分野からもたらされた――磁気誘導高周波塗装除去技術である。導入されたこの最先端設備は、従来の工法を根本から覆した。高周波電磁場を用いて鋼材と塗膜の境界面を直接加熱し、老朽化した塗装の付着力を瞬時に失わせることで、作業員はもはや力を込めて研磨する必要がなくなった。古い塗膜はまるでミカンの皮をむくように一枚ごとに剥がれ落ちる。粉じんが舞うことも、刺激臭が漂うこともない。ここ数か月の施工期間中も、ホームの空気環境は普段と変わらず、乗客は深夜に「外科手術級」の工事が進められていたことにまったく気付かなかったのである。

この「正しい判断」は、環境保護と健康という二律背反の課題を優雅に解決しただけでなく、極端に限られた工期の中で最大の効果を引き出した。新たな装いを施す前に、鋼構造には倍増した防護措置が施された。まず防錆用の下塗りを二層重ね、その上に高耐候性の上塗りを一層塗布。そして、法規で定められた高さ4メートル以下の区間では、コストを惜しまず防火塗料の上にさらに上塗りを加え、「防火・防錆・耐候」の三つの効果を兼ね備えた最高水準を実現したのである。
台風前線の勝利システム的解決策
ついに、今年最初の台風シーズン到来前に、この難工事は無事完了した。機場捷運の沿岸駅に堅牢な「見えない鎧」をまとわせただけでなく、将来に向けて再現可能な新たな更新工法を築き上げたことこそ大きな意義である。
「より困難な課題を提示する」ことから始まり、「市民と同僚を守るための妥協なき姿勢」を貫き、最後は「最先端技術の導入であらゆる困難を克服」した――桃園メトロのこの静かな革命は、「先見性によって主導される公共ガバナンス」の真意を体現している。
それは、公共工事がもはや粉じんと騒音の代名詞である必要はないことを証明した。知恵と決意をもってすれば、精密で清浄、そして人への配慮に満ちたアップグレードの過程となり得る。この高架軌道上で鍛え上げられた「桃園モデル」は、台湾全土の大型インフラ更新における参照モデルとなる可能性がある。
編集:柄澤南 (関連記事: 桃園メトログリーンラインが現実に!高架区間のテストが順調、2026年北区間・開業に向け前進 | 関連記事をもっと読む )
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