TSMC、さらには台湾全体にとっても、近ごろの一連の出来事は「背後から刺すのはいつも同盟国だ」という言葉の真意を痛感させるものである。
先週、国内のハイテク業界を最も震撼させたのは、TSMC社員複数名が2ナノメートル技術に関する機密不正取得に関与したとされる事件である。報道によれば、2ナノメートルは国家の核心技術に指定されており、外部流出は国家安全法違反に当たる可能性がある。このため、高等検察署は国家安全法に基づき捜査を行い、現職および元社員計6人を拘束した。彼らは在職中に数百枚に及ぶ重要な工程統合画像や技術文書を持ち出したとされ、その流出先は日本企業に向けられている。具体的には、元同僚を介して日本の大手製造装置メーカー東京エレクトロン(TEL)に渡り、さらに日本の半導体国家プロジェクト「Rapidus」に設備調整の参考資料として提供された疑いがある。
ハイテク業界において、引き抜きや情報漏洩、司法手段による妨害や競争相手への追撃といった事例は珍しくない。だが、半導体の先端技術が地政学的競争の核心となり、TSMCが列強の角逐の最前線に立たされているこの時期に、この事件が発覚したことは、なおさら多くの示唆を与える。地政学的な駆け引き、企業間、さらには国家間の競争とは、やはり利益だけが存在し、道義は存在しないという現実である。
米中対立の構図において、台湾と日本は疑いようのない同盟関係にある。日本の「台湾有事は日本有事」という姿勢がその象徴だ。地政学的要因により各国がこぞって半導体製造能力の再構築に乗り出す中、TSMCは2022年に熊本での工場建設を決断し、迅速に完成・稼働させた。熊本第一工場は主に28ナノ、12ナノの成熟プロセスを手掛け、今年着工予定の第二工場では6/7ナノプロセスへの移行が進む。
一方で、日本政府は国内の主要企業――トヨタ、NTT、ソニー、NEC、ソフトバンク、日本政策投資銀行(DBJ)など――を糾合し、日本の半導体国家プロジェクト「Rapidus」に投資させ、先月には日本初となる2ナノメートルチップの試作成功を発表した。かつて日本は半導体王国だったが、1980~90年代の日米半導体摩擦で地位を失い、生産の多くは台湾や韓国へ移った。依然として実力はあるものの、最先端製造技術の最前線に立つのは台湾・韓国・米国の企業であり、日本企業ではなかっただけに、日本国家プロジェクトによる2ナノ成功は大きな驚きをもって受け止められたのである。 (関連記事: TSMCの2ナノ技術流出疑惑で急浮上 Rapidusとは何者か──日本半導体産業の逆襲 | 関連記事をもっと読む )
今回のTSMC機密流出事件が日本の国家プロジェクト「Rapidus」に直結していると知り、多くの人が「やはりそうか」と膝を打ったのではないか。そこには二つの嘆息すべき点がある。第一に、台日同盟がいかに緊密であっても、自国が先端技術を掌握することに勝るものはなく、たとえ同盟国から技術を盗むという手段に訴えてもためらわないという現実である。第二に、いつの間にか台日間で「技術窃取」における役割が逆転してしまったことだ。かつては日本が技術を盗まれる側だったが、今や日本のネット上でも「日本は技術を盗まれる国から、盗まなければならない国になってしまった」と嘆く声が広がっている。