評論:裏切るのは常に同盟国─台湾とTSMCの悲劇

2025-08-12 10:40
TSMC漏えい事件に日系企業が関与、裏切るのは常に同盟国。写真は、TSMCの2ナノメートルチップ案件に関与したとされる陳容疑者(浅色の上着)を台北市博愛路の台湾高等検察署に送致する様子。(写真/林益民撮影)
TSMC漏えい事件に日系企業が関与、裏切るのは常に同盟国。写真は、TSMCの2ナノメートルチップ案件に関与したとされる陳容疑者(浅色の上着)を台北市博愛路の台湾高等検察署に送致する様子。(写真/林益民撮影)

TSMC、さらには台湾全体にとっても、近ごろの一連の出来事は「背後から刺すのはいつも同盟国だ」という言葉の真意を痛感させるものである。

先週、国内のハイテク業界を最も震撼させたのは、TSMC社員複数名が2ナノメートル技術に関する機密不正取得に関与したとされる事件である。報道によれば、2ナノメートルは国家の核心技術に指定されており、外部流出は国家安全法違反に当たる可能性がある。このため、高等検察署は国家安全法に基づき捜査を行い、現職および元社員計6人を拘束した。彼らは在職中に数百枚に及ぶ重要な工程統合画像や技術文書を持ち出したとされ、その流出先は日本企業に向けられている。具体的には、元同僚を介して日本の大手製造装置メーカー東京エレクトロン(TEL)に渡り、さらに日本の半導体国家プロジェクト「Rapidus」に設備調整の参考資料として提供された疑いがある。

ハイテク業界において、引き抜きや情報漏洩、司法手段による妨害や競争相手への追撃といった事例は珍しくない。だが、半導体の先端技術が地政学的競争の核心となり、TSMCが列強の角逐の最前線に立たされているこの時期に、この事件が発覚したことは、なおさら多くの示唆を与える。地政学的な駆け引き、企業間、さらには国家間の競争とは、やはり利益だけが存在し、道義は存在しないという現実である。

米中対立の構図において、台湾と日本は疑いようのない同盟関係にある。日本の「台湾有事は日本有事」という姿勢がその象徴だ。地政学的要因により各国がこぞって半導体製造能力の再構築に乗り出す中、TSMCは2022年に熊本での工場建設を決断し、迅速に完成・稼働させた。熊本第一工場は主に28ナノ、12ナノの成熟プロセスを手掛け、今年着工予定の第二工場では6/7ナノプロセスへの移行が進む。

一方で、日本政府は国内の主要企業――トヨタ、NTT、ソニー、NEC、ソフトバンク、日本政策投資銀行(DBJ)など――を糾合し、日本の半導体国家プロジェクト「Rapidus」に投資させ、先月には日本初となる2ナノメートルチップの試作成功を発表した。かつて日本は半導体王国だったが、1980~90年代の日米半導体摩擦で地位を失い、生産の多くは台湾や韓国へ移った。依然として実力はあるものの、最先端製造技術の最前線に立つのは台湾・韓国・米国の企業であり、日本企業ではなかっただけに、日本国家プロジェクトによる2ナノ成功は大きな驚きをもって受け止められたのである。 (関連記事: TSMCの2ナノ技術流出疑惑で急浮上 Rapidusとは何者か──日本半導体産業の逆襲 関連記事をもっと読む

今回のTSMC機密流出事件が日本の国家プロジェクト「Rapidus」に直結していると知り、多くの人が「やはりそうか」と膝を打ったのではないか。そこには二つの嘆息すべき点がある。第一に、台日同盟がいかに緊密であっても、自国が先端技術を掌握することに勝るものはなく、たとえ同盟国から技術を盗むという手段に訴えてもためらわないという現実である。第二に、いつの間にか台日間で「技術窃取」における役割が逆転してしまったことだ。かつては日本が技術を盗まれる側だったが、今や日本のネット上でも「日本は技術を盗まれる国から、盗まなければならない国になってしまった」と嘆く声が広がっている。

最新ニュース
危機を演出し「救世主」を装う? 日本メディア人が暴くトランプ関税交渉の弱点
トランプが対中関税90日休戦延長発表、中国も即応し「相互破壊」回避の危機突破
台湾民意基金会の世論調査》頼清徳支持率が急落 不満噴出し地元台南も失う
台湾関税「重複なし」の裏側 中経院長が韓国との差明かす
日米関税合意が暗礁に 「戦国時代」突入の日本政治に波紋
三浦半島最大級1万発が夜空を彩る 「よこすか開国花火大会2025」10月5日開催
米・イスラエルの対イラン攻撃は「長年の核開発阻止政策の延長」 高橋和夫氏が分析
参政党はなぜ支持を広げたのか 成蹊大・伊藤教授が分析する「右派ポピュリズムの構造」
文総主催「TAIWAN PLUS 2025 台日新風」大阪で開幕 初日半日で来場1万人突破 限定グッズは1時間で完売
「蕭美琴神話」崩壊か 米専門家が賴政権のトランプ巡る誤判断を痛烈批判
米中「新冷戦」は既成事実か 東大名誉教授がトランプ第2期の影響を分析
張鈞凱コラム:台湾で父の日前日に親子衝突 政治対立で娘が72歳父殴打
舞台裏》台湾インディーズ音楽界と民進党の深い縁 国民党と交わらない理由とは
トランプ関税に苦戦 台湾、関税引き下げ狙い巨額ロビー 頼清徳政権が直面する「想定外の壁」
中国、米中貿易協議でHBM解禁を要求 AI覇権争いに直結か
台湾文化イベント「TAIWAN PLUS」&文学展「魔幻台湾」、大阪で同時開幕 雨にも負けず3万人が熱狂
田中貴金属グループ、金・銀・プラチナが奏でるクラシック 前例なき音楽作品が配信開始!
台海衝突時に100万人退避は可能か 机上演習で浮上したシンガポールの「秘密カード」
幅わずか0.2ミリ!田中貴金属が史上最小テープ接点を開発
TAKANAWA GATEWAY CITY、100日で未来都市構想加速 2026年春グランドオープンへ
「すみっコぐらし」と「からぴち」が立体アートに!エンスカイの人気クラフト新作登場
台風11号ポードル、今夜中規模へ発達 台湾13県市で暴風率70%超 深夜に海上警報・上陸も
最重要同盟国トランプ氏の変節と傲慢 石破政権に広がる強い不満
米財務長官「相互関税は氷塊のように溶ける」 日米貿易協定で引き下げも示唆
ABABA総研調査】就活生の約9割が生成AI活用にメリット実感 ES作成や面接対策で効果
アニメ東京ステーションで夏休み特別上映会 ガッチャマンとコナンが登場
成田空港で「ディズニーフラッグシップ東京ジャパンツアー」千葉会場が開幕 限定グッズや新作ぬいぐるみも登場
民進党リコール騒動で台湾分裂 北京の思惑通りか、英紙が指摘
日本で中国人オーナーが突然の家賃2倍要求 日中の法律認識の違いが引き起こした混乱
ホテル椿山荘東京、三重塔移築100周年記念演出「涼風竹あかり」7月16日から開催 100個の竹まりと風車が夜空を彩る
旭化成など4社、食塩電解セル・電極の金属リサイクル実証を開始
アニメ東京ステーションにて『SPY×FAMILY』特別企画展を開催
ロサンゼルス豪邸から22人の赤ちゃん 中国人夫婦に代理出産・人身売買疑惑
フィリピン・マルコス大統領「台海有事なら必然的に巻き込まれる」 中国は強く反発
45人の記者が命の危険 イラン当局の脅迫で国連に緊急支援要請
日台関係で歴史的進展 台湾代表が初の平和記念式典に招待、林外交部長も極秘訪日
日本への憧れが人生を動かした 台湾出身インフルエンサー「Tiffany碰到日本」さんが語るリアルと信頼
年間821万人参拝 台湾一の人気は朝天宮や大甲鎮瀾宮ではなく荘厳な建築の寺院
ASICS、新感覚アクティビティ「DISCOVER. by ASICS」を6月4日から開催 光と音に包まれる没入型運動体験
台湾土産に新定番登場 外国人が絶賛、安くてユニークで地元でも人気沸騰の逸品
『エコノミスト』による「米中AI戦争」の分析:AI分野で後れを取る米国 ペンタゴン巨額投資で巻き返しなるか
眠れる断層が強震周期に接近 専門家が台湾の2.4倍規模巨大津波の危険性を警告
大阪・関西万博で「こども食堂」国際フォーラム むすびえ、韓国実践者らと社会の未来を議論
ラムセス大王展、来場者15万人突破 アン ミカさん登壇の記念トークイベント開催
「コメ離れ」進む中で価格は急騰 米店経営者らが警鐘――「『コメ』はいつまで主食か」
飛行機だけでなく!モバイルバッテリーの台湾鉄道・高速鉄道における新規定、誤った扱いで罰金の恐れ
トランプ関税がインドの「親ロ」を追撃、世界の石油価格高騰の恐れ! 『エコノミスト』警告:中国が漁夫の利を得る
中国が激しく反発!ジョンソン氏「台湾は国家と認識される資格がある」と発言 訪台の裏で動いたこの人物
英最新鋭空母「プリンス・オブ・ウェールズ」、8月下旬に東京寄港へ 日英防衛連携の象徴に