北欧の人気ブランド「ムーミンアラビア」は、2025年にムーミン誕生80周年を記念した特別コレクションを発表した。台湾ではムーミンが「ルルミン」と呼ばれ親しまれるなど、世代を超えて幅広いファン層を持つ。今回、同ブランドのデザインヘッドであるアンニカ・ティックル氏が風伝媒の単独インタビューに応じ、ムーミン80周年コレクションに込めた思いや制作の裏側、日本や台湾への考えを語った。
アンニカ・ティックル氏はフィンランド・ヘルシンキ芸術大学でファッションデザインを学び、ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートで修士号を取得。アーバンアウトフィッターズやスウェーデンのファッションブランド「Carin Wester」で経験を積み、H&Mの新ブランド「Arket」ではチームを率いた。2021年にフィスカースグループに加わり、現在はムーミンアラビアのデザイン全般を統括している。ファッションと日用品の両分野を横断するキャリアを背景に、ブランドの新たな方向性を切り拓いてきた。
「デザインは私のDNAの一部です。街の看板や広告から常にインスピレーションを受けています」と彼女は語る。ロンドンでは多彩で刺激的な文化に触れ、若者文化から豊かな着想を得た。一方で、スウェーデン・ストックホルムでは落ち着いたミニマリズムや北欧的なシンプルさに学んだという。「それぞれの土地の文化を吸収し、デザインに生かすことができました」と振り返った。
日本市場については「食卓文化や器の多様性から大きな刺激を受けています。日本の消費者はキャラクターごとの感情や個性に共感しやすく、その点を今後のデザインに反映したい」と語った。ヨーロッパが物語全体を重視する傾向があるのに対し、日本はキャラクターの個性や感情表現を強調するという違いも指摘した。
ムーミン80周年のフェスティブ モーメントコレクションの企画は2年前から始まった。1948年の原作『楽しいムーミン一家』のイラストを用い、乾杯のシーンを象徴的に採用。「ムーミン80周年という大きな節目にふさわしく、家族や友人と共に祝えるシリーズにしたかった」と説明する。シリーズは赤を基調に、生活空間との調和を重視。さらに、今年の冬限定コレクションにはフィンランドの冬の習慣である寒中水泳やサウナをモチーフに取り入れ、四季感と文化的背景を融合させた。
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アンニカ氏は「ストーリー性やキャラクター同士の感情表現を感じ取ってほしい」とシリーズの魅力を強調。今回のコレクションで最も愛用している商品はムーミン アラビア定番の「マグカップ」だという。「色合いは派手すぎず癒やしを与えてくれる。毎朝の気分に合わせてマグを選べるのは『使えるアート』そのものです」と微笑んだ。また、今回のコレクションに含まれるツリー用のバブルオーナメントについても「家を華やかに彩ることができ、とても気に入っています」と付け加えた。
さらに、赤十字とのコラボレーションである「ホームアットラスト」についても言及し、「意義ある取り組みに携われたことが嬉しかった」と振り返った。日本では2度に分けて展開され、最初は温かみのあるハッピーな配色、次はクラシックで落ち着いた色調が採用されるなど、消費者の生活に寄り添う工夫が凝らされていたという。
現在、ムーミンアラビアのデザインチームは4人で構成され、テキスタイルやセラミックなど得意分野を持つデザイナーがそれぞれの個性を尊重しつつ協働している。「誰かが上に立つのではなく、互いのスタイルを尊重しながらアイデアを交換しています。すべての作品に手描きの温かみを残すことを大切にしています」と語った。
将来の計画について問われると、「それはまだ秘密です」と笑い、「ぜひ楽しみにしていてほしい」とファンの期待を煽った。最後に台湾や日本のファンに向けて「遠く離れた国々の人々とムーミンを通じてつながれることをとても幸せに思います」とメッセージを送った。ムーミンアラビアは今後も「物語と生活をつなぐ器」として、世界中のファンの暮らしに寄り添い続けることになりそうだ。