東京・京橋の国立映画アーカイブで開催中の「第47回ぴあフィルムフェスティバル2025」にて9月16日、第30回PFFプロデュース作品『メイメイ』の完成披露上映が行われた。上映後には主演の王渝萱(ワン・ユーシュエン)さん、王渝屏(ワン・ユーピン)さん、共演の朝井大智さん、水間ロンさん、そして監督の蘇鈺淳(スー・ユチュン)さんが登壇し、作品誕生の舞台裏や撮影を振り返った。

PFFプロデュース(旧称PFFスカラシップ)は、橋口亮輔さん、矢口史靖さん、李相日さん、荻上直子さん、石井裕也さんら多くの俊英監督を送り出してきた。今回メガホンを取ったスー・ユチュン監督は、『豚とふたりのコインランドリー』でPFFアワード2021審査員特別賞を受賞した新進気鋭の監督で、翌年の修了制作『走れない人の走り方』は劇場公開を果たしている。主演を務めた台湾の人気女優・王渝萱さんと王渝屏さんは実の姉妹で、本作でも姉妹役を演じ、注目を集めた。
上映後のトークでスー監督は、当初の構想は「姪と叔母の物語」だったが、途中で姉妹設定に変更したと明かした。「その方が感情の幅を描きやすいと思いました。そこから実の姉妹であるお二人に出演してもらうことが決まりました」とキャスティングの経緯を説明した。

完成作品を初めて観たという王渝萱さんは、「姉のシーンがどうなっているかは台本でしか分からなかった。今日観て姉妹の関係性がよく分かり、とても嬉しかった」と笑顔を見せた。姉の王渝屏さんも「妹と一緒に作品をつくる経験は貴重でした。現実のようで現実でない、不思議な感覚でした」と語った。

また、日本語のセリフに挑戦した王渝萱さんは「日本語は本当に難しい」と打ち明けた。撮影の1カ月前から勉強を始め、ひらがなから学んでセリフを習得したという努力を明かすと、共演の朝井さんが「日本語をあれだけ自然に演じていたのは本当にすごい」と称賛し、会場は温かな拍手に包まれた。

日本と台湾の撮影文化の違いについて、王渝屏さんは「日本ではリハーサルと本番の境界が掴みにくかった」と戸惑いを振り返りつつ、「現場の雰囲気に徐々に慣れていった」と語った。さらに「日本語ができない役なのに、実際は勉強を始めて5~6割理解できるようになっていた」と明かし、会場を笑わせた。
トークでは、共演者たちの言語をめぐる苦労や、リアルな姉妹の間に“夫”として入り込む難しさを語った朝井さんのエピソードも披露され、観客の笑いを誘った。
『メイメイ』は、中国語・英語・日本語が入り混じる国際色豊かな作品で、日本と台湾のキャスト・スタッフが協力して制作された。上映会場は満席となり、観客は次世代を担う新進監督と実力派キャストによる化学反応に熱心に耳を傾けた。
第47回ぴあフィルムフェスティバル2025は9月20日に閉幕し、コンペティション部門「PFFアワード2025」の表彰式も含め、全プログラムを終えている。
編集:梅木奈実 (関連記事: 第47回ぴあフィルムフェスティバルで『メイメイ』完成披露上映決定 台湾の王渝萱・王渝屏姉妹が来場へ | 関連記事をもっと読む )
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