台湾・花蓮県光復郷では、馬太鞍渓の堰塞湖が越流し、洪水が市街地を襲った。中央災害応変センターによると、24日午前時点で死者14人、負傷者34人、行方不明124人が確認されている。救助活動が続く一方、中央政府と地方の責任をめぐり現場で口論が勃発。行政院長の卓榮泰氏と国民党の傅崐萁立法委員が勘災会議で衝突し、政治的な緊張が救災現場を覆った。
卓榮泰氏と傅崐萁氏、最初の衝突はどう始まったのか
午前の会議で、傅崐萁氏が中央政府の過去の決定や資金配分を詳細に説明しようとしたが、卓院長は「長話は不要」と発言。午後に予定があることを理由に発言を制止したが、傅氏は発言を続け、卓氏は不満を示して退席。傅氏は「これが行政院の態度か」と声を上げ、場は一気に混乱した。
対立の焦点はせき止め湖対策の遅れと責任問題
傅崐萁氏は、農業部が8月13日の協議で「直ちに決壊の危険はない」と説明しながら、早急に着工しなかったと批判。さらに「600億元を渡したのは善後処理のためだ。堰塞湖の対策をしっかり行ったのか。はっきり答えろ」と強い口調で迫った。
これに対し卓榮泰氏は「今は責任追及ではなく、災区の問題解決に集中すべきだ」と反論した。
卓榮泰氏と傅崐萁氏、口論の激化
その後、前進指揮所での会議でも両者は再び衝突。卓氏が「現段階では救助を優先すべき」と主張したのに対し、傅氏は「中央は責任を回避している」と批判。さらに民進党の立法委員・呉思瑤氏にまで矛先を向け「民進党の側近はみな同じだ。院長も批判されると退席する」と非難した。これに対し、民進党の沈伯洋氏が「今日は救災が目的であって、あなたの演説を聞く場ではない」と反論し、会議は再び紛糾した。
傅崐萁氏の追加批判
傅氏はさらに、中央が「直ちに危険はない」と発言したことで地方政府や住民が状況を過小評価し、重大な犠牲を招いたと指摘。花蓮県政府は専門家の助言に従い、垂直避難や避難所設置、医療支援を実施していたと主張し、「それでもネット世論に批判され、第一線の救助隊員が士気を失った」と述べた。
これに対し卓院長は「避難計画に不備はあったが、重要なのは責任逃れではなく、問題を見つけ改善することだ」と応じた。
なぜこの衝突は注目されるのか
今回の口論は単なる政治的対立にとどまらず、台湾の災害対応の構造的課題を浮き彫りにしている。専門家はせき止め湖対策の難易度を指摘し、地質的・技術的制約から長期的な監視と計画が必要だと強調してきた。しかし、政治家は「即時の危険性」に焦点を当てがちで、リスクが過度に単純化される傾向がある。
また、中央は「統括的な調整役」を強調する一方、地方は「現場の負担を押し付けられ、批判だけ受ける」と不満を募らせている。この対立は、救災と責任追及の間で揺れ動く台湾の構造的矛盾を象徴する出来事といえる。
編集:梅木奈実 (関連記事: 台湾・花蓮で再びせき止め湖越流の恐れ 残水3100万トン、決壊リスク高まる専門家警告 | 関連記事をもっと読む )
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