米アリゾナ州の州立農業アリーナで21日、今月初めに銃撃されて亡くなった保守系団体「ターニング・ポイントUSA」創設者、チャーリー・カーク氏(享年31)の追悼集会が開かれた。多くの弔問者が詰めかけた式典は、若き指導者を悼む場であると同時に、信仰・政治・保守運動が一体化した大規模集会の様相を呈した。トランプ米大統領は会場で、カーク氏を「アメリカ自由のために殉じた英雄」と称賛した。
会場にはトランプ氏のほか、ヴァンス副大統領、ルビオ国務長官、ヘグセス国防長官、ケネディ・ジュニア健康医療庁長官ら政権幹部が出席。ホワイトハウスは専用機2機を派遣して関係者を送り込むなど、カーク氏が共和党内で持っていた影響力の大きさを物語った。

「預言者」であり「殉教者」
トランプ氏は演説の中で「カークはアメリカ自由の伝道者であり、今や不滅の象徴となった」と強調。さらに大統領自由勲章を追贈する方針を発表した。この勲章は米国市民に授与される最高の栄誉である。
追悼集会には全国から支持者が集結し、多くは前夜からテントを張って入場を待ち続けた。アリーナは満席となり、キリスト教のロックバンドが歌を奏でる中、「決して屈しない」「これが私たちのターニングポイントだ」と書かれた標語が掲げられ、福音伝道集会のような熱気に包まれた。


ヴァンス副大統領は「カーク氏を殺害した邪悪な犯人は、今日の葬儀を望んだだろう。しかし我々は喪失を越え、復活を迎えている」と語り、同氏を「聖書の預言者」に例え、悪に立ち向かい真理を告げる勇気を称えた。
未亡人の訴え:「私は犯人を許します」
「私の夫は、迷える若者を救いたいと願っていました。たとえ自らの命を奪ったその若者であっても。──私は彼を許します。なぜなら、それはキリストが示された道であり、そしてチャーリーが生涯を通じて実践していたことだからです」
―― エリカ・カーク氏
チャーリー・カーク氏の未亡人、エリカ・カーク氏は追悼式で涙ながらに演説し、会場で最も大きな感動を呼んだ。彼女はターニング・ポイントの次期CEOに就任予定であり、深い悲しみを抱えながらも「夫を撃った犯人を許す」と語った。
「救い主は『父よ、彼らを赦してください。彼らは自分が何をしているのか分かっていないのです』と祈りました。私も彼を許します。憎しみに対する答えは決して憎しみではなく、愛なのです」と力強く語った。

エリカ氏は夫の使命について「迷える若者を救うことだった」と振り返り、病院で夫の亡骸に触れた瞬間、「かすかな微笑み」に神の慈悲を感じたと述懐した。さらに、結婚生活の秘訣として「夫は毎週欠かさずラブレターを書いてくれた」と明かすと、会場はスタンディングオベーションで包まれた。 (関連記事: 米保守派リーダー射殺事件 カーク氏はなぜ狙われたのか──容疑者の携帯メッセージ「彼の憎しみに耐えられなかった」 | 関連記事をもっと読む )
政治と信仰が交差する場
追悼式は宗教儀式にとどまらず、強い政治色を帯びていた。トランプ氏が登場すると会場は「U-S-A」コールに沸き、ボランティアが選挙登録の案内を配布。ターニング・ポイントのCOOタイラー・ボウヤー氏は「カークは常に『聖霊をトランプ集会に持ち込むべきだ』と語っていた。今日はまさにそれが実現した」と振り返った。