日本は自衛隊装備の海外輸出を解禁したのに続き、戦後平和憲法のもう一つの敏感な領域に挑もうとしている。核動力潜水艦の開発に踏み出し、自国の防衛力強化を図る意向である。
『日経アジア』の報道によれば、日本の専門家グループが中谷元防衛相に対し提言を提出し、新たな動力源を採用した潜水艦の導入を検討すべきだと主張した。水中での航行時間を延長することで、中国への抑止力を高め、同国の軍事拡張をより効果的に監視できると指摘している。提言は、次世代の自衛隊潜水艦において長距離ミサイルを垂直発射できる能力を備えるべきだと求める一方、動力源については「従来の制約に縛られるべきではない」と強調した。明言こそしていないが、核動力潜水艦の可能性を防衛省に示唆していることは明らかである。
原潜は「圧倒的アドバンテージ」 太平洋進出の中国に対抗 コストや「法制面の壁」が課題https://t.co/PaJd8lVWXz
— 産経ニュース (@Sankei_news)September 19, 2025
海洋進出を加速させる中国に対抗する「切り札」となるか。今後、防衛省が検討を本格化させる国家防衛戦略など「戦略3文書」の改定で原潜保有が焦点化する可能性もある。
前防衛副大臣の島田和久氏は、潜水艦は陸上施設や艦艇、航空機と比べて「攻撃目標になりにくい」と指摘する。島田氏によれば、動力源こそが潜水艦の弱点を解消する鍵であり、「核動力を含め、いかなる禁忌も設けるべきではなく、実際に検討の対象に入れるべきである」と述べた。
なぜ今、核動力潜水艦を提案するのか?
日本は現在、射程1,000キロを超えるミサイルの研究開発を加速しており、敵の攻撃圏外からの打撃を可能にするとともに、陸・海・空の各プラットフォームへの配備を検討している。
その選択肢の一つが潜水艦であり、長距離ミサイルを搭載すれば、日本海や東シナ海、太平洋上の水中から敵の陸上施設を直接攻撃できると同時に、隠密性を保てるため発見や反撃による撃破を防ぎ得る。しかし、自衛隊が直面する最大の課題は「動力」である。海上自衛隊が保有する潜水艦は現在、主に従来型のディーゼル動力であり、機動性や潜航時間に限界がある。航速は約20ノット(時速約37キロメートル)で、定期的に浮上して換気する必要があり、その際に敵に発見されるリスクが高まる。

米国やロシア、英国などは核動力潜水艦によって一連の課題を解決している。米海軍(US Navy)の現役核動力潜水艦は航速が25ノットに達し、トマホーク巡航ミサイルを搭載可能であり、長時間の潜航ができて浮上して換気する必要がない。
しかし日本国内では核動力潜水艦は長らく禁忌とされてきた。自衛隊が核動力潜水艦の研究・生産に着手すれば、原子力を「平和利用」に限定する法規に抵触すると見なされかねないためである。さらに、多くの国会議員は、核動力潜水艦を保有して長距離ミサイルを搭載し遠洋に展開することは、憲法が定める「専守防衛」という基本原則から逸脱すると主張しており、日本に不必要なトラブルや紛争を招くおそれがあるとしている。 (関連記事: 潜水艦ステルスの終焉迫る? 量子センサーとAI探知が揺さぶるAUKUS計画の行方 | 関連記事をもっと読む )
法規制と巨額費用が最大障壁
実際のところ、この問題について日本は一貫して極めて慎重な姿勢を取ってきた。林芳正官房長官は2024年9月、記者団に対し「現状では核動力潜水艦を保有するのは難しい」と述べている。