インタビュー》「平和教育」欠落する唯一の中国語圏 台湾元文化部長・龍應台氏「宝島のはずが、なぜ戦艦になったのか」

2025-09-19 16:13
元文化部長の龍應台氏がインタビューに応じ、台湾は「平和ルート」を設計し、戦争への道を避けるために各方面が理性を発揮すべきだと呼びかけた。(写真/蔡親傑撮影)
元文化部長の龍應台氏がインタビューに応じ、台湾は「平和ルート」を設計し、戦争への道を避けるために各方面が理性を発揮すべきだと呼びかけた。(写真/蔡親傑撮影)
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台湾の元文化部長である龍應台氏は、『風傳媒』のインタビューで「欧米や日韓の子どもたちは幼い頃から“平和教育”を受け、対立をどう解決するかを学んでいる」と指摘した。一方で、中国語圏ではこの教育がほぼ欠落していると語る。特に台湾では「平和」という言葉が「降伏」と同義に扱われている現状に危機感を示し、「台湾は宝島であるべきなのに、なぜ戦艦になってしまったのか」と疑問を投げかけた。

龍氏は9月15日付『聯合報』に寄稿した「なぜ今、平和を語るのか」という特集記事の中で、平和は屈服ではなく「未来を自ら選ぶこと」であると強調。台湾は「第一列島線の最前線に立つハリネズミ」として犠牲になる必要はなく、平和を中国に委ねるべきでもないと主張した。台湾自身が主体的に「平和への道筋」を設計すべきだという立場を示している。

さらに、龍應台文化基金会は9月20日に台北で「2025台北国際平和持続フォーラム」を開催予定で、海外の活動家7人や台湾の学者、実務者を招き「なぜ平和のために努力するのか」を議論する場を設ける。

なぜ平和教育が欠かせないのか

龍氏は「脅威を感じない社会では、平和について考えることもない」と語る。基金会が初めて戦争をテーマに議論したのは2017年だったが、当時は社会の関心も薄く、「遠い問題」とみなされていた。だが数年後、戦争は身近で最も熱い議題となり、情勢は急速に緊迫している。

欧米では「平和学」が大学・専門家の研究分野として存在し、「平和教育」が一般市民、特に子どもたち向けに導入されている。幼稚園から始まる国もあり、日本や韓国でも重視されている。しかし、中国語圏の教育現場にはその要素がほとんど欠けていると龍氏は指摘する。

龍氏によれば、平和教育は段階的に行われるべきものだ。例えば、子ども同士のいじめにどう向き合うか、教師の不公平な対応をどう受け止めるか、といった日常の中の対立から学ぶ。欧米の学校では立体地図を作り、子どもたちに「国」として役割を与え、対立を分析し、交渉や対話を体験させる教育も行われているという。

「なぜ台湾の教育にはこの重要な内容が欠けているのか」と龍氏は問いかける。職場の人間関係はもちろん、男女関係においてもそうだ。台湾社会では「恐怖の恋人」事件が繰り返されているが、その背景には対立をどう処理するかを学ぶ機会が極めて少ない教育環境があると警鐘を鳴らした。

納粹德國在波蘭南部建立奧斯威辛集中營,約有110萬人在此遭屠殺(AP)
龍應台氏は、西洋では平和教育が幼少期から始まっており、かつて侵略と被侵略の関係にあったドイツとポーランドでも青少年交流プログラムが始められたと語った。写真はポーランド・アウシュビッツ強制収容所。(写真/AP通信)

「平和」が「降伏」と同一視される現実

龍應台氏は、かつてドイツに滞在していた頃、小学校のクラスがポーランドに旅行し、現地の同世代の子どもたちと交流していたことを思い出す。第二次世界大戦後、ドイツとポーランド、あるいはフランスなど戦争当事国は大規模な青少年交流を開始し、次世代が幼い頃から「かつての敵国」の子どもと親しくなり、相互理解を深める機会を持つようにした。こうした取り組みは日本や韓国でも見られるが、「中国語圏だけが欠けている」と龍氏は強調する。

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