公益財団法人フォーリン・プレスセンターは9月12日、「日本の祭りを守る」をテーマにオンラインブリーフィングを開催し、國學院大學観光まちづくり学部の石垣悟准教授が登壇した。石垣氏は長年にわたり日本各地の祭りを研究・記録してきた経験をもとに、現代における課題と継承の可能性を語った。
「守る」とは形を固定することではなく「続ける」こと
石垣氏はまず、伝統的な祭りは地域社会に根差した無形文化財であり、「守る」とは形を変えずに固定化することではなく、続けていくことに意義があると強調した。その「続ける」には、毎年開催する継続性と世代を超えて引き継ぐ継承性の二つの意味があり、この両輪が揃ってこそ祭りは持続可能になると述べた。
担い手不足という最大の課題
一方、少子高齢化や過疎化が進む現代日本では担い手不足が深刻化しており、「人がいなければ祭りは成り立たない」と指摘。資金や道具よりも、祭りに主体的に参加したいと願う人を確保することが最大の課題だとした。そのため、従来の地域社会の枠を超えて、若者や女性、外部住民、さらには観光客までも巻き込む取り組みが求められると語った。
各地の取り組みと継続的参加の重要性
具体例として、富山県大洲市の「建物協力隊」や福岡県の「地域伝統行事お助け隊」、秩父夜祭における外部住民の参加、京都祇園祭での大学生や留学生の募集などを紹介した。これらは単なる体験参加にとどまらず、研修や準備・後片付けまで含めた主体的で継続的な関わりを生み出していると評価。「観光や体験として消費されるだけでは継承にはつながらない。継続的な主体的参加こそが未来への鍵になる」と強調した。
議論を重ねること自体が祭りを守る行為
質疑応答では、動物虐待を伴う行事の是非や、祭りの起源を守るべきか現代的基準に合わせるべきかが問われた。石垣氏は「歴史を必ず守る必要はないが、グローバル基準に合わせるだけでもない。その狭間で大切なのは、担い手が祭りを徹底的に知り、どう受け止めるかを尊重すること」と述べ、議論を続けること自体が祭りを守る行為だと強調した。
近年は変化への抵抗も和らぎ、「工夫しながら続けていこう」という流れが主流になっていると説明。ただし「変える」ことには段階があり、ときに「やめる」ことさえも変化の一形態になり得ると警鐘を鳴らした。
「誰のために祭りを守るのか」への問いかけ
最後に石垣氏は、「なぜ、誰のために祭りを守るのかという問いに一人ひとりが向き合わなければならない」と語った。その上で、地域博物館などを拠点に調査研究と情報発信を進め、住民と外部参加者が共に考える場を作る重要性を提言した。
石垣氏は「祭りは暮らしと共にあったからこそ続いてきた。人生の一部として深く理解し愛着を持つことが継承につながる」と結び、今後も研究を続ける決意を示して講演を締めくくった。
編集:梅木奈実 (関連記事: 小和田恆氏、戦後80年の日本外交と課題を語る「被害だけでなく加害の視点も必要」 | 関連記事をもっと読む )
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