小和田恆氏、戦後80年の日本外交と課題を語る「被害だけでなく加害の視点も必要」

小和田恆氏、「戦後80年を問う」講演で日本外交を回顧 被害と加害の双方の視点や国際社会での責任を強調。(写真/日本記者クラブ提供)
小和田恆氏、「戦後80年を問う」講演で日本外交を回顧 被害と加害の双方の視点や国際社会での責任を強調。(写真/日本記者クラブ提供)
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日本記者クラブで9月12日、「戦後80年を問う」シリーズ第18回が開催され、元国際司法裁判所(ICJ)所長であり元外務事務次官の小和田恆氏が登壇した。93歳を迎えた小和田氏は、自らの外交経験を交えながら戦後日本外交の軌跡を振り返り、歴史認識や安全保障、さらには地球規模課題に至るまで幅広く論じた。

受難と加害の視点

小和田氏は、戦後80年の節目に各地で報じられる記録に触れつつ、「国民の受難を語り継ぐことは極めて重要だが、それだけで良いのか」と問題を提起した。沖縄戦や原爆、空襲など被害の側面が強調される一方で、「必ず存在する加害の視点が見落とされている」と指摘し、日本の加害責任を直視する必要性を強調した。

日韓交渉と戦後処理

外務省入省後に深く関わった日韓国交正常化交渉を振り返り、「基本条約や請求権協定など六つの協定に携わったが、今日に至るまで完全に解決されたとは言えない」と回顧した。また中国や東南アジア、ヨーロッパ、アフリカとの戦後処理についても言及し、「戦後の課題は被害者と加害者双方の視点から検証すべきだ」と訴えた。

歴史認識と近代日本の歩み

1933年の国際連盟脱退から1956年の国連加盟までの過程を「日本外交最大の試練」と位置付け、「満州事変が背景にあったことを忘れてはならない」と指摘した。また「近代化を誇るだけでは不十分で、その過程における行為をどう評価するかが重要だ」とし、夏目漱石や浅川寛一の言葉を引用しながら、日本が近代において隣国とどう向き合ってきたかを問い直した。

国際社会復帰と日本の立場

1956年の国連加盟は日ソ共同宣言を背景に実現したと解説。その後のOECD加盟や1975年のランブイエ・サミット参加を節目に、「国際社会に戻ること自体が目的だった時代から、一員として責任を果たす段階へと移った」と分析した。

ランブイエで三木首相が「何を議論しているのか分からなかった」と語った逸話を紹介し、当時は参加自体が目的だったことを象徴する出来事だとした。その後、日本は経済成長を背景に「コミットメントの時代」に入り、国際社会における責任を自覚するようになったと述べた。

冷戦後の課題と憲法9条

冷戦終結についてはフランシス・フクヤマの「歴史の終わり」論を批判し、「ソ連は時代の潮流の中で自壊したのであり、資本主義の最終勝利ではない」と語った。ロシア勤務の経験から崩壊を予見していたことに触れつつ、「歴史の決着はまだついていない」と指摘した。

日本の安全保障については「憲法9条の下で非軍事国家として歩んできたことは誇りである」としながらも、「冷戦崩壊後はアメリカ依存だけでは立ち行かなくなった」と述べた。その上で「自立的な安全保障のあり方を模索しつつ、非軍事的手段で国際社会に責任を果たすことが求められる」と提起した。

地球規模課題と外交の本質

最後に小和田氏は、気候変動やパンデミックといった地球規模課題に触れ、「人類は運命共同体であることを自覚せざるを得ない」と語った。京都議定書やパリ協定が努力目標にとどまる現状を批判し、「強制力ある国際秩序が存在しないことが問題だ」と指摘した。そして「外交とは国同士の複雑な方程式に解を見出す技術であり、日本は国際社会と協調しながら責任を果たさなければならない」と結んだ。

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