公益財団法人旭硝子財団は9月10日、世界の環境有識者を対象に実施した「第34回 地球環境問題と人類の存続に関するアンケート」の結果を発表した。1992年から毎年続けられている調査で、今年は202カ国に調査票を送付し、121カ国から1,751件の回答を得た。

調査では、人類存続への危機意識を時計の時刻で表す「環境危機時計」が昨年より6分進み、9時33分となった。2021年から2024年まで4年連続で針が戻っていたが、今年は8年ぶりに大きく進行した。地域別では中東が34分、オセアニアが23分、西欧が14分と、いずれも顕著な悪化を示した。
回答者の年代別にみると、60代以上は例年より危機意識がやや後退した一方、20代から50代では時刻が進み、世代間で認識に差がみられた。危機時刻を決める上で重視された項目は「気候変動」が29%で最多となり、8年連続で首位を占めた。次いで「生物多様性の保全」が13%で続いた。
また、気候変動と生物多様性喪失の対応については、脱炭素社会への転換に比べ、野生生物の生息地の保全・再生が進んでいないとみる意見が目立った。特に若い世代では他世代よりも楽観的に捉える傾向があった。
持続可能な開発目標(SDGs)の達成度については、全目標達成を100%とした場合の平均が33.7%にとどまり、14.1%は「0%」と回答した。20代や30代は40%以上と感じる割合が多かったのに対し、50代以上は30%未満とする人が多く、年代による意識の差が際立った。
環境問題の解決に向けて最も重要な主体について尋ねたところ、世界全体では「中央政府」との回答が最多だった。企業関係者の68%が中央政府や地方自治体を重視すると答えた一方で、中央政府の人々自身が「中央政府が最も重要」と答えた割合は27%にとどまった。
今回の調査結果の詳細は「第34回 地球環境問題と人類の存続に関するアンケート調査報告書」として公開されており、同日午前11時から財団の公式ウェブサイトでも閲覧できる。
調査は2025年4月から6月にかけて実施され、世界各国の政府・自治体、非政府組織(NGO/NPO)、大学・研究機関、企業、マスコミなど環境問題に携わる有識者を対象に行われた。送付数は約4万2,000件(海外約3万9,000件、国内約3,000件)、有効回答は1,751件で、回収率は約4.1%だった。
編集:柄澤南 (関連記事: 再生エネルギーの逆襲?2040年に50万トンの廃棄太陽光パネル 環境汚染の新たな火種に | 関連記事をもっと読む )
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