日本とインドの経済界を代表するリーダーが一堂に会する「第12回日印ビジネス・リーダーズ・フォーラム(BLF)」が2025年8月29日、東京都内で開催された。今回の会合では、国際秩序の維持や経済安全保障、脱炭素社会の実現、産業協力の多様化など、日印間の経済関係強化に向けた幅広い議論が行われ、共同声明が発表された。
ルールに基づく自由貿易体制を再確認 CPTPPへのインド参加も視野に
声明ではまず、2011年に発効した日印包括的経済連携協定(CEPA)および2014年に格上げされた「特別戦略的グローバル・パートナーシップ」により、両国の経済関係が深化してきたことを確認。今後、CEPAの改訂や租税条約の見直しを通じて経済関係をさらに強化する必要性があるとした。
また、インドの「CPTPP(包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定)」への将来的な参加に向けて協力していく方針を共有。QUAD(日米豪印)枠組みにおける新興技術・鉱物資源分野での協力深化や、WTO改革の必要性についても一致した。
経済安全保障へ官民対話を創設へ
経済安全保障分野では、2024年11月に発足した「日印経済安全保障対話」を受け、官民連携の重要性が強調された。双方は、①産業防衛(protection)、②産業促進(promotion)、③越境連携(partnership)という「3P」戦略を共有。今後、重要インフラや先端技術の保護・研究開発を視野に、「日印民間経済安全保障対話(仮称)」の立ち上げ準備に合意した。
エネルギー・脱炭素・半導体など分野横断的な連携確認
脱炭素社会の実現に向けては、クリーンアンモニア・水素の活用や火力発電の脱炭素化、CCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)技術の連携などを推進。日本のネットゼロ目標とインドの間に20年の差がある中で、二国間クレジット制度(JCM)の構築が重要と指摘された。
また、インドの「Make in India」政策に基づく産業育成、特に半導体や先端製造技術分野での協力強化を確認。日系企業の現地研究開発拠点やインドにおける信頼性の高い半導体供給体制の構築に向け、官民双方で取り組む意向を示した。
中小企業・スタートアップ、人材・宇宙・エンタメ分野でも協力へ
日本の中小企業やスタートアップにとって、インドの成長市場は大きな機会であるとして、相互補完的な技術連携や人材育成支援を強化することでも一致。とくに今後5年間で50万人規模の双方向人材交流を進める「日印人材交流アクションプラン」に基づき、日本語教育・多様性配慮・DX推進といった受け入れ体制整備が求められた。
さらに宇宙分野では、月探査ミッション「LUPEX」を含むJAXAとISROの協力を基盤に、宇宙デブリ除去や地上局連携など民間企業間の連携拡大にも期待を寄せた。
インドのエンタメ市場の急成長を背景に、アニメ・映画・XR・ゲームなどの共同制作や市場展開についても具体的な協力可能性が語られた。
編集:柄澤南 (関連記事: 北京観察》九三軍事パレードを前に日中で世論戦勃発 日本は560億円で国際イメージ刷新、中国メディア「何を恐れているのか」 | 関連記事をもっと読む )
世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版 X:@stormmedia_jp