中国共産党主催の「中国人民抗日戦争並びに世界反ファシズム戦争勝利80周年」が、2025年9月3日に北京・天安門広場で正式に開催された。習近平国家主席に加え、ロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩委員長、イランのライスカイアン大統領も出席し、大規模な軍事パレードが行われた。この集まりは、国際的に「新たな悪の枢軸」とも評されている。台湾の政治関係者は、特に国民党関係者の対応に注目していた。
今回のイベントで注目されるのは、名称において「中国人民抗日戦争」が「世界反ファシズム戦争」より優先されている点だ。中華人民共和国と中華民国の双方にとって、対日抗戦の正統性をめぐる史観は重要で、歴史認識を巡る争いは過去にも繰り返されてきた。中華民国は、8年間の抗戦で国軍が時間を稼ぎ、百万人以上の軍民が犠牲となりながら日本軍に立ち向かったことを強調している。一方、中共軍は「七分発展、二分対応、一分抗日」といった批判を受けてきた。2015年9月、当時の総統・馬英九氏は台北で抗戦勝利70周年を記念し、中共による国民政府の功績の抹消を批判。国民政府が抗戦を主導した歴史的事実を改めて強調した。こうした背景もあり、今回の「新邪悪軸心」集会は、両岸関係に複雑な影響を与えている。

連戦氏の抗戦論と台湾国内の反応
2015年8月末、元中華民国副総統で国民党主席だった連戦氏は、中国からの招待を受け、習近平総書記と会談した。その際、連戦氏は蒋介石率いる国軍を「正面戦場」、毛沢東率いる共産党軍を「敵後戦場」と位置付け、日本軍と戦った経緯を説明した。
しかし、2017年に中国共産党は、対日抗戦を従来の8年間ではなく、満洲事変から始まる14年間として再定義。「敵後戦場」でのゲリラ戦が国軍の正面戦場と相互に補助したと主張した。連戦氏の説明はこの中国側の史観に近く、国民党が重視する中華民国の史観とは大きく異なる内容だった。
このため、台湾国内では議論を呼んだ。当時の総統府報道官である陳以信氏は、正面戦場でも敵後戦場でも対日抗戦は国民政府が指導したとして、「否認できない歴史的事実」として反論した。今回の中国主導の軍事パレードでは、国民党関係者は軍事展示だけでなく、抗戦史の扱いにも強い関心を寄せている。

対岸積極的な招待 国民党の大物たちが不参加
『風傳媒』の調べでは、国民党の多くの大物は中国側から招待を受けていた。元総統の馬英九氏、前党書記長の李乾龍氏、前主席の洪秀柱氏、副主席の連勝文氏などだ。しかし、歴史的論争や、総統に就任した頼清徳氏の下で両岸交流が縮小される状況を受け、ほとんどの国民党大物は出席を固く拒否した。7月末には、中国側の積極的な招待状が党内に伝えられたが、政界、商界、学界を含む幅広いリストにもかかわらず、出席者は限られたとされる。 (関連記事: 舞台裏》台湾・元国民党主席 洪秀柱氏、天安門で国家指導者級待遇?当局が動向を確認、批判覚悟で参加 | 関連記事をもっと読む )
出席予定と報じられた中では、国民党内でもあまり知られていない中常委の何鷹鷺氏がいた。2024年3月の中常委選挙では、27人が同時に当選したが、党主席の朱立倫氏が欠員補充のため数名を無理やり参選させた結果だった。多くの資深常委は自分たちのポジションを低く評価していたという。