インドネシア大統領、就任1年足らずで抗議3度 強権と譲歩の狭間で統治危機

2025-09-04 13:20
2025年8月29日、インドネシアのジャカルタにおいて、国会議員の自己利益を図る行為に抗議する学生と機動隊が衝突し、配送員1名の死亡を契機に全国的な大規模暴動に発展した。(写真/AP通信提供)
2025年8月29日、インドネシアのジャカルタにおいて、国会議員の自己利益を図る行為に抗議する学生と機動隊が衝突し、配送員1名の死亡を契機に全国的な大規模暴動に発展した。(写真/AP通信提供)
目次

インドネシアのプラボウォ大統領は就任から1年も経たないうちに、すでに3度にわたり全国規模の抗議を引き起こしている。直近の抗議は議員手当をめぐる問題が発端となり、少なくとも10人が死亡する事態に発展し、政権発足以来最大の危機となった。複数の海外メディアは9月の分析で、プラボウォ氏が抗議に対し軍や警察を動員して弾圧する一方で、象徴的な譲歩を見せていると指摘した。これに先立ち、教育やインフラの予算を大幅に削減しながら国会の特権は温存し、長期的な経済計画を推進する一方で、失業の増大や重税には対応していない。また軍人を官僚機構に積極的に配置する動きも進めている。専門家は、政府が引き続き民衆の困窮を軽視すれば、不満は国会から大統領本人に向かう恐れがあると警告している。

大統領就任1年未満で3回の抗議を引き起こす

インドネシアのプラボウォ・スビアント大統領は、2024年10月の就任からまだ1年を迎えていないが、すでに全国規模の大規模抗議が3度発生している。2月には軍の権限拡大や警察の暴力、汚職に反対する「暗黒のインドネシア」(Gelap Indonesia)運動が起き、5月のメーデーには最低賃金の引き上げを求めるデモが展開された。そして8月の抗議では、国会議員が毎月3,000ドルにのぼる住宅手当を受け取っていることが発端となった。この額は現地の最低賃金の約10倍に相当し、学生や労働組合が強い怒りを抱いて街頭に繰り出した。

当初、抗議は首都ジャカルタの国会議事堂前に集中し、比較的平穏に進んでいた。しかし8月29日深夜、国家憲兵の装甲車が突如現場に突入し、21歳の配達員を轢き殺す事件が発生。映像がネット上で拡散すると情勢は一変し、怒りを募らせた群衆が全国各地で抗議行動を展開、立法機関や警察署を焼き討ちし、さらには財務相や複数の議員の自宅を襲撃する事態に発展した。

9月初めには抗議はジャワ島、スマトラ島、スラウェシ島、ボルネオ島の複数都市へ拡大し、少なくとも10人が死亡した。犠牲者には学生のほか、暴行に巻き込まれた一般市民や、催涙ガスの影響で昏倒した高齢の人力車夫も含まれる。警察と軍が街頭に展開し、大学キャンパスへの強制突入も行われ、新たな恐怖と反発を呼び起こしている。

抗議者をなだめつつ、「反逆者」とのレッテル貼り

8月末に吹き荒れた全国的な抗議に対し、プラボウォ大統領は「違法行為は法に基づき取り締まる」と強調する一方、急ぎ譲歩策を打ち出した。宗教指導者や労組、政界関係者と会談し、議員特権の一部廃止を表明、さらに物議を醸した発言を行った議員4人を停職処分にした。しかし相次ぐ対応も街頭の怒りを鎮めることはできなかった。

インドネシアの世論調査機関の分析者ケネディ・ムスリム氏は日経の取材に「政府の対応は極めて力不足だ」と指摘する。当初は国会や警察への怒りに集中していた民意が、次第にプラボウォ本人に向かい、政権の信頼を揺るがしているとし、「今回の運動は国民の公共意識を呼び覚ました」と強調した。

最新ニュース
ポルトガル首都リスボンの象徴ケーブルカーが脱線横転 死者15人、負傷者18人に拡大
強震直後のアフガニスタン 白布不足で遺体は毛布に、住民「村が壊滅」と絶望
中国、戦勝80周年軍事パレード 核兵器と無人機で軍事力を誇示
台風15号(ペイパー)発生 週末日本列島に台風接近、九州・四国を直撃へ
AKOMEYA TOKYO、埼玉西部初の直営店「グランエミオ所沢」9月5日開業 県内初「米の量り売り」も開始
九三軍事パレード習近平演説まとめ 「台湾には触れず」も主権強調、抗日戦線の主導を再確認
トランプ氏のガザ再建構想が明らかに 38ページの機密文書で200万人移住計画、国際的批判相次ぐ
東京駅に新登場「東京ばにゃ奈クッキーズ」 発売1か月で15万枚突破、SNSでも話題沸騰
インドネシア学生デモ、死者8人に 催涙弾と火炎瓶で緊張高まる
習近平氏、プーチン氏、金正恩氏が「歴史的共演」 中国の軍事パレードで中ロ朝が連携誇示か
陸文浩の見解:「軍事パレード」直前、中国沿岸で航行禁止措置なし 民間RORO船は訓練継続か
東大とデンソー、先進AIで「次世代生産システム」構築へ 社会連携講座を開設
イチロー&松井秀喜の直筆サイン入り!MLB公式メモラビリア新作、大谷翔平・山本由伸も登場
トランプ政権の「対印50%関税」と親パキスタン政策、長年の友好関係に亀裂 専門家「地政学的な自滅」と警鐘
エバー航空、日本就航30周年で「サルヴァトーレ クオモ」と初コラボ 特別メニュー&航空券割引キャンペーン開始
評論:台湾人気YouTuber・萊爾氏が『零日攻撃』に圧勝した衝撃の理由とは?
習近平、反米外交を誇示 上海協力機構サミットと九三軍事パレードで示した存在感
米国、TSMC南京工場の輸出特例を撤廃 サムスン・SKハイニックスに続き、台湾経済への影響は限定的か
米国株、台湾指数先物夜間取引急落!米国、TSMC南京工場の調達免除撤回 経済部対応発表
北京で「93軍事パレード」開催 習近平「中国人民解放軍を世界一流軍へ」強調、プーチン・金正恩も出席
台北地裁「京華城事件」証人尋問終了 柯文哲前台北市長、収賄容疑を改めて否定 京華城事件で「7つの法的争点」指摘
アフガニスタンでM6.0地震 死者1400人超、タリバン政権が国際支援を要請
2ナノ半導体戦争:TSMC・サムスン・IntelにRapidus参戦、世界市場再編へ
天気予報》台風15号(ペイパー)発生の恐れ、進路変動で週末の天気が注目
Rapidus、2ナノ技術でTSMCに肉薄 日本半導体復権の歴史的転換点?
賴清徳総統、東京大学訪問団と会見 「台日協力と友情をさらに深化」
台湾、福島食品の輸入規制を全面解除へ 世界で残る規制国は中国・韓国・ロシアのみ
台湾は周縁化?中国「九三軍事パレード」プーチン・金正恩出席で地政学リスク拡大へ
西武鉄道、ハリー・ポッター特別列車を運行開始 池袋駅で「バック・トゥ・ホグワーツ」イベント開催
九三軍事パレードで披露される新兵器とは?金正恩氏が北京入り習近平氏、プーチン氏と同席 台湾社会に広がる温度差
台湾で「海底ケーブル9本断線」報道 中華電信が否定「自社ケーブルは全て正常稼働」
中国科学は世界一になるのか? トランプ政策で米国科学力が低下、日本専門家が警鐘
中国、9月3日に「93軍事パレード」 中国の学者が警鐘「2027年に台湾武力解決の可能性」
世界最大級の屋内型ハリー・ポッター施設「スタジオツアー東京」、国内外ファンを魅了 台湾からも観光客殺到
李忠謙コラム:台湾賴清徳総統の「大いなる幻想」を検証——「今日のウクライナ、明日の東アジア」が突きつける現実
舞台裏》情報員がUSBを民進党に置き忘れ 台湾調査局で不祥事相次ぎ、陳白立局長は苦慮
評論:米裁判所、トランプ関税を「違法」と判断 台湾は「敗者」から「勝者」へ転じるのか
TSMC、先端半導体を一斉値上げ 2〜5ナノで5〜10%上昇へ 米中対立と巨額投資が背景
日本のRapidus、2ナノ試作でTSMCに並ぶ快挙 インテル18Aを超えるロジック密度を達成
デンソー、スパークプラグ・排気ガスセンサー事業を日本特殊陶業に譲渡 電動化戦略へ集中投資
Netflix、日本上陸10周年で渋谷にて記念イベント開催 「今際の国のアリス」シーズン3グローバル企画も
上海協力機構(SCO)首脳会議、天津で開催 習近平主席が「五大堅持」を提唱し国際秩序への影響力拡大を狙う
国民党・民進党・民衆党が「最も平和な一日」 黄国昌が柯建銘に皮肉、過去の抗議運動を揶揄
トランプ関税は「違法」で失効か? 米最高裁が最終決戦の場に 232条関税は維持の可能性
初音ミク「マジカルミライ2025」東京公演開幕 星空テーマでライブと展示、熱気に包まれる幕張メッセ