陸文浩の見解:「軍事パレード」直前、中国沿岸で航行禁止措置なし 民間RORO船は訓練継続か

2025-09-03 17:52
「九三天安門軍事パレード」に参加するため、最終リハーサルを行う中国人民解放軍部隊。(AP通信)
「九三天安門軍事パレード」に参加するため、最終リハーサルを行う中国人民解放軍部隊。(AP通信)

中国共産党が主催する9月3日「軍事パレード」を目前に控えた8月24日から9月2日までの期間、中国沿岸の各海事局は、通常であれば軍事演習に伴って発表されるはずの航行禁止区域を設けていない。

こうした状況について、筆者は台湾南西空域で中国軍機が活動していることから、以前から大規模なロールオン・ロールオフ船(RORO船)が汕尾(さんび)近海で行っていた軍事訓練が、人民解放軍の水陸両用作戦における海上輸送支援を想定し、継続して実施されているとの見方を示している。

こうした中、米上院軍事委員会委員長のウィッカー氏夫妻と、同委員会「戦略戦力」小委員会のフィッシャー上院議員夫妻らが、8月29日から30日にかけて米行政専用機で台湾を訪問し、頼清徳総統と会談した。この動きに対し、中国外務省は強い不満を表明している。

中国は「中国人民抗日戦争および世界反ファシズム戦争勝利80周年記念大会」を記念する式典を開催しており、人民解放軍東部戦区は、式典終了後、慣例に従い「合同戦備警戒パトロール」を適時実施するとみられていた。

まず筆者は、パレードを控えた期間に、中国沿岸の各海事局が軍事活動、訓練、任務、実弾射撃などを伴う航行禁止区域に関する通達を一切発しなかったことに注目している。

この期間中、東部戦区は8月27日早朝、台湾に対する海空「合同戦備警戒パトロール」任務を遂行した。一部の専門家は、パレード期間中は北部と中部戦区が中心となるものの、東部戦区のパトロールにも引き続き注意が必要だと指摘していた。しかし、パレードのために各戦区から動員される人員はごく一部であり、戦区全体の配置や活動に影響はない。東部戦区の反応は、台湾と米国が何を発言し、何を行うかに応じて決まると筆者は分析している。また、筆者は以前、「九三軍事パレード」期間中、各戦区は管轄地域や海域を「祝日戦備」態勢と見なすと述べていた。

また、ある専門家は、パレードに米国を中心とする西側諸国が欠席し、中国を中心とする「グローバル・サウス」が参加したことで、互いの相容れない立場が浮き彫りになったと評している。

しかし、歴史的観点から見れば、第二次世界大戦はヨーロッパとアジアの二つの主戦場で戦われ、中国はアジアの戦場に身を置き、日本から侵略を受けた国である。今回の式典が歴史の教訓を刻む目的であるならば、当時日本軍の侵略対象であったベトナム、ラオス、マレーシア、カンボジア、ミャンマー、インドネシア(反政府デモにより直前で参加キャンセル)といった国々が参加するのは当然と言える。

一方、15世紀から16世紀にかけて勃興し、19世紀から20世紀にかけて世界の資源を略奪してきた米国を中心とする西側諸国とは、当然ながら対立関係が形成される。この点については、これ以上詳しく論じない。 (関連記事: 陸文浩の見解:中露潜水艦が東シナ海で初の連合巡航 同日に台湾海峡で「海空一体演習」 その狙いとは 関連記事をもっと読む

次に、筆者は、中ロ海軍が8月6日から行った6回目の合同巡航任務に注目している。水上部隊は8月20日に西太平洋北部海域で合同任務を終えて別れた。この時点で筆者は、東部戦区海軍の駆逐艦「紹興」(134号)と総合補給艦「千島湖」(886号)が8月下旬に日本の南西諸島間の海峡を経由して舟山へ帰還し、ロシア太平洋艦隊の対潜艦「トリブツ提督」(564号)も近隣の海峡を通って基地へ戻ると推測していた。(関連報道陸文浩氏の視点:中国軍機、台海で昼夜を問わぬ異常活動 Ro-Ro船団を護衛し南下集結か

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