最近、中国軍機が台湾海峡で昼夜を問わず異常な活動を見せている。その背景には、中国民間のロールオン・ロールオフ(Ro-Ro)貨物船団が南下する動きがあり、軍機が護衛する形で集結している可能性が指摘されている。
中露の公式報道によれば、第6回中露合同巡航は8月20日に終了し、西太平洋の海域で分離行動に移った。筆者の推測では、中国東部戦区海軍の052D型駆逐艦「紹興(134)」と903型補給艦「千島湖(886)」は8月下旬、日本南西諸島の海峡を経由して舟山へ帰還する見通しだ。一方、ロシア太平洋艦隊の対潜艦「トリブツ提督(564)」は付近の海峡から自国基地へ戻るとみられる。(22日午前9時時点で日本側からは動向が発表されていない。)そのほか、基洛級潜水艦と随伴艦隊は8月20〜21日に東シナ海から対馬海峡を抜けて日本海へ移動し、基地へ帰還している。台湾国防部も20日に「共軍機21機・軍艦7隻が台湾周辺で活動」と発表した。
さらに《中天新聞網》は「823投票前夜、中国爆撃機が台湾南西の防空識別圏に侵入した」と伝え、《聯合新聞網》は「国軍が屏東・九鵬で年次の精密ミサイル実射演習を実施した」と報道。国防部の情報によれば、20日朝6時から翌21日朝6時までに共軍機22機・艦5隻を確認した。筆者は8月19〜20日の活動を精査し、「台海正面空域で全時間帯・全空域・昼夜連続の異常な行動が行われていた」と指摘、その目的に疑念を抱いている。
中国大陸のAIS船舶情報によれば、8月17日に民間のRo-Ro船8隻が渤海・黄海を経て上海から台湾海峡に向けて高速で南下。この間、在日米軍のRC-135偵察機が緊急発進し、該当空域で監視を行った。8月19〜20日、同船団は台湾海峡を抜け泉州沖に到達。共軍機も同時期に台海正面で昼夜活動を展開しており、両者の関連性が推測される。
国防部の発表では、19日午前6時〜20日午前6時にかけて共軍機21機(うち17機が台湾海峡中線を越えて南西空域に侵入)、軍艦7隻を確認。筆者の分析によれば、この間、戦闘機や支援機が東引以南から福建東山島沖にかけて活動、さらに金門沖から台湾南西空域を経て南南西端に至るケースも見られた。20日午前6時〜正午過ぎには、広東・南澳島沖から台湾南西空域にかけて12機が活動している。
翌21日も活動は継続。国防部は20日朝〜21日朝までに22機・艦5隻を確認し、うち15機は台海中線を越え北部・南西空域を侵犯した。特に19日夜〜20日夕方には戦闘機や無人機16機が浙江・福建沖から台湾南西空域へ進出し、一部は鵝鑾鼻南方まで飛行。無人機による目標監視の可能性もある。21日未明〜午前には反潜機「運-8」とみられる機体を含む6機が台湾南西空域を活動していた。
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また、米国の軍事専門家トム・シュガート氏によると、8月17日以降、中国のRo-Ro船「中華復興」「永興島」「長山島」「普陀島」「渤海鑽珠」「渤海寶珠」「渤海翡珠」「渤海恆達」が通常の航路を外れ、隊列を組んで南下した。これに合わせて在日米軍のRC-135W偵察機も渤海〜東シナ海で監視活動を行った。AIS情報では、同船団は19〜20日に台湾海峡を通過し、福建・泉州沖に集結したことが確認されている。