吳典蓉コラム:頼清德総統は台湾人に謝罪が必要

2025-08-28 11:58
2025年08月23日、頼清德大統領は23日に投票結果について談話を発表した。(写真/顏麟宇撮影)
2025年08月23日、頼清德大統領は23日に投票結果について談話を発表した。(写真/顏麟宇撮影)

台湾総統という職に対する敬意から、たとえ少数派の総統であっても一定の光環は伴うものだ。しかし、大規模リコールの惨敗を経た頼清徳氏にはもはやその光環は残っていない。野党からは嘲笑され、与党内からも「事を成せない」と罵声を浴び、頼氏の一挙手一投足はネット上で二次創作のネタにされる始末である。要するに、いまの頼氏は発言力をほとんど失っているのである。それにもかかわらず、頼政権は問題の核心を直視せず、リコールによる民意の反発に対し、的外れな対応しか示していない。

8月23日の投票で「32対0」が確定した夜、頼氏は記者会見を開いた。おそらくリコールの影を振り払い、台湾政治の新たな章を開こうとしたのだろう。しかしその発想は「転型正義」とは程遠いものであった。1年以上にわたるリコール攻防は、与野党の対立を激化させただけでなく、社会に憎悪と暴力的空気を蔓延させた。にもかかわらず、頼氏の会見には謝罪の言葉が一切なく、新たな展望を示すどころか、逆に論争の泥沼にはまり込んだ。

事実、頼氏自身が明確な改革メッセージを発しなかったため、この会見の焦点は「柯文哲氏に対する強引な供述引き出し疑惑」に覆い隠された。さらに、その後に副総統の蕭美琴氏や前総統の蔡英文氏と会談し、団結のメッセージを発するはずが、これも曖昧さゆえにネット上ではコラージュ騒動へと歪曲された。これらはいずれも発言権を失った兆候であり、頼氏はすでに自らが国民に伝えたいメッセージをコントロールできない状態に陥っているのである。

なぜこのような事態に至ったのか。大規模リコールの大敗北が直接の原因であることは明らかだが、頼清徳氏はまるで自らに責任はないかのような態度を示している。この免責意識はどこから来るのか。大規模リコールを推進した曹興誠氏や柯建銘氏は総統府や与党と直接の関わりを持ち、頼氏自身も民進党主席として党員に「市民と共に行動せよ」と呼びかけていた。それにもかかわらず、リコール前後を通じて頼氏は一貫してリコールを「市民の行動」と切り離してきた。与党寄りの学者たちも同様で、台湾大学の顏厥安教授が「大規模リコールは準クーデターであり、事実上の国会解散だ」と指摘したことに強く反発し、あくまで個々の市民による行動だと強調してきた。

しかし、国家と党の基盤を揺るがした大規模リコールをすべて「市民行動」として片づけるのは、まるで毛沢東が文化大革命を紅衛兵の自発的行動と説明したのと同じくらい滑稽である。実際、権威主義的な中国共産党ですら「誤った見通し」という表現を用い、毛沢東に文化大革命の責任を負わせた。にもかかわらず、頼氏と民進党は「誤判」でさえ責任を取ろうとしない。この態度を民主を掲げる台湾の人々がどうして受け入れられようか。

文化大革命になぞらえるのは単なる比喩ではない。リコールは表向き「市民」によって主導されたため、政党間競争のルールに縛られることなく、手段を選ばず事実を顧みずに在野の国会議員を「親中派」として攻撃することが可能であった。だが、大規模リコールの失敗によって、「習近平が国民党を操っている」との流言は自然に崩れ去った。考えてみれば簡単である。もし台湾の多数派民意が中共の支配を受けているというのなら、民進党は自ら台湾の多数派民意と決別することになってしまうではないか。

最新ニュース
WBC2026、日本でNetflix独占配信決定 地上波中継消滅の可能性に読売新聞社が声明
テイラー・スウィフト婚約発表 米メディア「神業マーケティング」と分析、NFLスターとの戦略的カップル誕生
英空母「プリンス・オブ・ウェールズ」来日 日英安保協力は「同盟」へ進化するのか?RUSI研究者が分析
エンスカイは周年記念展示、セガ フェイブは世界初公開コラボ 東京おもちゃショー2025で注目ブースが集結
地球温暖化が新段階へ 東京大学・今田由紀子准教授「異常気象は温暖化なしでは起き得なかった」
米メディアが「世界5大火薬庫」を警告 最大リスクは台湾海峡危機、誤判断で全面戦争の恐れ
天気予報》台風発生の恐れ 台湾で猛暑続く、新北・桃園で38度超 午後は雷雨に警戒
女子スポーツの華麗と哀愁──惨敗しても優勝者以上の人気!アメフト女子選手、900万人のファン獲得 稼ぎは試合よりファンから
トランプは台湾を「金のなる木」に? 張亞中が2文字で予言―「盲目的な親米」の行き着く先は、露骨な覇権的恐喝
柯建銘は民進党の孫文か 林濁水「党内に異論なし 愚昧では敗北必至」
『エコノミスト』がウクライナ海軍の秘密兵器を明らかに:主力艦がロシアに破壊されても、「海上無人機」「蚊群艦隊」で黒海を守る
東京おもちゃショー2025、8月28日から東京ビッグサイトで開催 木村昴がアンバサダー続投、すみっコぐらしも登場
台湾北部でM6.0地震 台北・宜蘭で震度4 防災警報システム作動
SUUNTO「Race 2」「Wing 2」発表 次世代GPSウォッチ&骨伝導ヘッドホンが日本初公開
SUUNTO、新作「Race 2」「Wing 2」を日本発表 次世代GPSウォッチと骨伝導イヤホンの進化点
九三軍事パレードを前に 中国無人機群が台湾に照準 米国を上回る強みも「侮れない」
独自》台湾、米国に市場全面開放を約束 企業投資は4年で2,500億ドル規模へ
論評:「どの産業も犠牲にしない」──台湾・鄭麗君副行政院長のユートピア的哲学
調査:台湾海軍の「言えない弱点」 中国最新艦隊に直面、今も百年前の水雷を運用
TSMC米国投資の内幕 ルートニック長官「魏CEOに直接圧力」暴露
【新新聞】台湾グリーンエネルギー汚職で波紋 「経済部の元エリート官僚」鄭亦麟氏を台北地検が勾留請求
李在明大統領、トランプ氏と会談後にCSISで演説 「国益中心外交」と韓米同盟強化を強調
中国「九三軍事パレード」参加めぐり日中対立激化 日本は各国に慎重対応を要請
天気予報》台風14号(ノンファ)1日発生へ 全台湾3日連続雷雨
トランプ氏は台湾を取引材料に? 豪専門家が「中国譲歩」の危険性を警告
舞台裏》台湾・国民党リコール全勝も党内混乱 朱立倫氏退任宣言と盧秀燕氏辞退で次期主席不透明に
TSMC投資の次は全面関税撤廃要求 頼清徳政権に「屈従批判」拡大
東京都心、猛暑日が10日連続で過去最長記録更新 累計23日で年間最多に
日本政党支持率最新調査 参政党が支持率9.9%で野党第1位に浮上
評論:台湾の頼清徳総統、リーダーシップ欠如の声広がる リコール大敗の余波
台湾・賴清徳総統に「決まり文句ばかりで心に響かない」 民進党寄りの学者が苦言
インド人はなぜ台湾を嫌うのか?世論調査に見る背景 ――中国の影と共同利益、若い世代のまなざし
顏厥安氏の視点:台湾「ブルーシート政権」化 リコール大敗で卓内閣に総辞職要求の声広がる
台湾・民進党若手党員が見る賴清徳総統 「退屈で自己愛的」「情緒的価値を与えられない」
TSMC「米国は出資せず」明言 トランプ氏がインテルを選んだ背景と郭明錤氏の分析
李在明氏、台海リスクを前に訪米決断 トランプの対中要求に揺れる韓国外交
JR東日本、高輪ゲートウェイシティで初のドローンショー開催 都市空間で「ドローンが当たり前に飛ぶ未来」を目指す
JR東日本、高輪ゲートウェイシティでのドローンショーを総括 「300機による都市空間での挑戦」
台日作家交流座談会東京で盛況 楊双子と角田光代が文学対話
「The Ordinary」下北沢にコンビニ風ポップアップ 米や弁当セットなどユニーク企画、8月31日まで
動員数 約20万人を記録 「We TAIWAN 台湾文化 in 大阪・関西万博」大盛況で閉幕
アコメヤ トウキョウ、令和7年度産「新米」入荷開始 契約農家インタビューで今年の米作りを深掘り
万博で「WORLD YOSAKOI DAY」開催 学生チーム「旅鯨人」が熱演、産業ブースも《風傳媒》が現地取材
よさこい発祥の地・高知、万博で文化と観光を世界に発信 『WORLD YOSAKOI DAY 』
「多元台湾文化漫画展」東京で開幕 民族・ジェンダー・人権をテーマに多彩な台湾漫画を紹介
台湾・盧秀燕台中市長「国民党主席選には不出馬」 関税ショックで地元経済守る姿勢強調