台湾・民進党若手党員が見る賴清徳総統 「退屈で自己愛的」「情緒的価値を与えられない」

2025-08-26 12:46
国民によるリコールと国民投票で賴清徳総統に厳しい審判が下されたが、彼が変わるのかどうか、党内の若い職員たちも疑問を抱いている。(写真/顏麟宇撮影)
国民によるリコールと国民投票で賴清徳総統に厳しい審判が下されたが、彼が変わるのかどうか、党内の若い職員たちも疑問を抱いている。(写真/顏麟宇撮影)
目次

2024年に再び政権を握った台湾民進党だが、2025年の「726」「823」のリコールや国民投票では惨敗を喫した。その一方で、国民党は「南方公園」風の動画に「ライアー(嘘つき)校長」と揶揄したキャラクターを登場させ、賴清徳総統を批判。これが若者層で拡散され、ネット上で広がりを見せている。

台湾のオンラインメディア《美麗島電子報》が2025年7月に行った世論調査によれば、賴氏の若年層での支持は急落している。20〜29歳の信頼度は就任直後の44.8%から36.4%に低下。30〜39歳も47.2%から32.6%に落ち込んだ。民進党への好感度も20〜29歳で43.6%から29.2%へ、30〜39歳で37.8%から31.9%へと大幅に低下している。かつて民進党を支えてきた若者層の離反は、賴政権にとって大きな警鐘となっている。では、いま民進党内部で働く若手党員は、賴清徳氏をどう見ているのか。

(圖/翻攝政客爽粉專)
かつて民進党を支持していた若者の一部が、2025年726・823のリコールや国民投票では、国民党が仕掛けた風刺動画「ライヤー(Liar、嘘つき)校長」(米アニメ「サウスパーク」を模したもの)を拡散する現象まで起きた。(画像/政客爽フェイスブックより)(圖/翻攝政客爽粉專)

蔡英文を支持した若者、賴清徳には冷ややか

民進党の若手幹部である30代の党員C氏は、2022年の選挙前に入党。同性婚合法化を実現した蔡英文政権に感銘を受け、選挙応援に加わったという。彼は蔡氏を高く評価する一方で、「賴清徳は好きになれない」と語る。

「蔡英文を支持していた人が、みんな賴清徳を支持するわけではない。彼は自分が蔡総統ではないことを忘れている」と厳しく批判する。蔡氏の時代は国会多数を背景に、同性婚法制化や年金改革といった改革を次々に実現。コロナ初期対応も評価され、党員の多くが支持を寄せた。だが賴氏は2023年に党主席を引き継いだ後、それらの支持基盤を「丸ごと受け継げる」と考えているように映ると指摘した。

20150711-028-台灣伴侶權益推動聯盟「為婚姻平權而走」遊行-余志偉攝.jpg
蔡英文政権下で婚姻平等などの改革が推進され、若者の支持を集めたが、現在その支持は賴清徳総統には向かっていない。(写真/余志偉撮影)

「昔の嫌われた古参幹部のよう」 若手が抱く違和感

C氏は賴氏の政治手法を「自己愛的で、まるで昔嫌われた「老緑男」(古参の民進党幹部)のようだ」と評する。具体例として、蔡英文時代に整備された支持者向けネットワークを挙げた。当時は党中央や地方支部が一体となり、争点ごとに統一したメッセージや画像を配信。支持者の反応も良かった。

ところが賴氏が党運営を握った後は、自らの側近をグループに送り込み、従来の運営者を指揮下に置いた。作成される画像は文字ばかりで見づらく、内容も浅い。議論を深める説明もなく、同じ素材を繰り返し拡散するため、支持者からも「やる気が感じられない」と不満が出ている。

C氏は「蔡英文も第1期では党内外との意思疎通が不十分で苦労したが、反省し学びを重ねてスタイルを確立した。その結果、第2期では817万票を獲得できた」と振り返る。「多くの人は民進党だから支持したのではなく、蔡英文だから支持した。賴清徳はその点を理解していない」とも語る。

さらに「彼は自分を過大評価し、自己愛的な姿勢が目立つ。周囲も賛辞ばかりで、責任を常に野党や中国に転嫁している。その姿は、かつて最も嫌われた“老緑男”そのものだ」と批判を強めた。

最新ニュース
TSMC「米国は出資せず」明言 トランプ氏がインテルを選んだ背景と郭明錤氏の分析
李在明氏、台海リスクを前に訪米決断 トランプの対中要求に揺れる韓国外交
JR東日本、高輪ゲートウェイシティで初のドローンショー開催 都市空間で「ドローンが当たり前に飛ぶ未来」を目指す
JR東日本、高輪ゲートウェイシティでのドローンショーを総括 「300機による都市空間での挑戦」
台日作家交流座談会東京で盛況 楊双子と角田光代が文学対話
「The Ordinary」下北沢にコンビニ風ポップアップ 米や弁当セットなどユニーク企画、8月31日まで
動員数 約20万人を記録 「We TAIWAN 台湾文化 in 大阪・関西万博」大盛況で閉幕
アコメヤ トウキョウ、令和7年度産「新米」入荷開始 契約農家インタビューで今年の米作りを深掘り
万博で「WORLD YOSAKOI DAY」開催 学生チーム「旅鯨人」が熱演、産業ブースも《風傳媒》が現地取材
よさこい発祥の地・高知、万博で文化と観光を世界に発信 『WORLD YOSAKOI DAY 』
「多元台湾文化漫画展」東京で開幕 民族・ジェンダー・人権をテーマに多彩な台湾漫画を紹介
台湾・盧秀燕台中市長「国民党主席選には不出馬」 関税ショックで地元経済守る姿勢強調
台湾「核廃水」抗議が逆効果に 民進党元幹部・陳聖文氏の素顔
台湾・第三原発再稼働の国民投票不成立 「反原発票」が過去の4割に減少
特集》台湾・民進党に大打撃 国民党も長続きしない勝利 政界に広がる不安定
特集》台湾・賴清徳総統「先進的な原子力も排除せず」 第三原発再稼働の国民投票は不成立、与野党の思惑が交錯
調査》TSMC防衛に致命的穴 賴清德氏が強靭化推進、審計部が警告
台湾半導体の優位性は模倣困難 TSMC、米軍需産業も依存
台湾はウクライナと違う 郭岱君氏が警鐘「対米依存の危うさ」
米国は台湾を見捨てない 明居正氏「ウクライナと異なり交渉で優位に立てる」
大規模リコールは大失敗》蔡英文氏が総統府訪問 賴総統と民主の価値強調
「ハリー・ポッター ショップ 原宿」開業 トム・フェルトンが魔法の呪文でテープカット
「ハリー・ポッター ショップ 原宿」開幕記念イベントにトム・フェルトン&松島聡が登場 “マルフォイ愛”で特別な乾杯
台湾第3原発再稼働の国民投票、賛成多数も不成立 頼清徳総統「結果を尊重、原発政策は3原則を堅持」
台湾、大規模リコールと核三再稼働公投いずれも否決 賴清德総統、卓榮泰院長の続投要請と人事改組を発表
国民投票開票》台湾・第3原子力発電所の再稼働国民投票は不成立 賛成434万票も基準に届かず
特集》台中市・顏寬恒氏がリコール回避 真の焦点は江啓臣氏と楊瓊瓔氏の「市長接班戦」
リコール開票》新北・羅明才氏が議席守る 反対票が大差で上回り「感恩の心」を熱唱
特集》南投・馬文君氏と游顥氏がリコールを退ける 「中台湾の新女王」許淑華氏への期待強まる
東京駅八重洲口で「宵路灯籠2025」開催 全長40メートルの花火プロジェクションマッピングが夜空を彩る
台湾・新竹県、初の「ビブグルマン」入り 8店舗が選出 県長が美食と観光をPR
石破首相、TICAD9閉幕式に出席 日アフリカ連携強化を強調
リコール開票》台中二選区リコール不同意7万超 顏寬恒「監督機能守られた、与党は目覚めよ」
NOTHING、東京で「SUMMER UPDATE」開催 Phone (3)とHeadphone (1)を発表
ビッラモレッティ、渋谷で試飲イベント「Italia Terrace」開催
台東観光地ランキング激変 鹿野と三仙台敗北 103万人が訪問
リコール開票》台湾・新竹県第2選区の林思銘立法委員、リコール成立せず 「社会は和解し、対立を超えるべき」と呼びかけ
リコール開票》台中・楊瓊瓔立法委員が議席守る 「政府は正道に戻るべき」と訴え
台湾・南投の馬文君立法委員、リコール不成立 「国を良くするのは対立ではない」と強調
リコール開票》游顥リコール不成立 賴清徳式選挙を批判「南投の望む姿ではない」
リコール開票》江啓臣、立委議席を死守 不同意票が大幅リード
沖縄尚学が夏の甲子園で初優勝 県勢では興南以来15年ぶり2度目
国連創設80年、軍縮の課題と日本の役割 中満泉事務次長がFPCJで会見
桃園観光地が首位奪取!835万人来訪で大溪老街を超える
TSMCの「台湾リスク」を深掘り分析 『エコノミスト』提言:成長を続けるにはグローバル展開が不可欠