TSMCの「台湾リスク」を深掘り分析 『エコノミスト』提言:成長を続けるにはグローバル展開が不可欠

2025-08-23 14:06
最新号の『エコノミスト』の表紙は、トランプ大統領の「半導体製造の夢」を描いている。
最新号の『エコノミスト』の表紙は、トランプ大統領の「半導体製造の夢」を描いている。
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最新号の英誌『エコノミスト』のカバーストーリーは、トランプ大統領が掲げる「オール・アメリカン・シリコン」構想、すなわち米国主導で完結する半導体産業だ。しかし、この「アメリカ製造の夢」を阻む最大の存在は、台湾に研究開発と主力生産拠点を構えるTSMCである。TSMCが強大であるほど、トランプ大統領の構想実現は遠のくと分析している。

もっとも、TSMCでさえ地政学リスクや電力不足といった成長の壁に直面している。『エコノミスト』は、今後も成長を維持するためには「海外展開」を加速させるほかないと指摘する。

『エコノミスト』は21日に掲載した記事「世界最大の半導体メーカーは台湾を超えて進まなければならない」(The world’s biggest chipmaker needs to move beyond Taiwanは、台湾で実施された空襲警報訓練「万安演習」と、同日に発表されたTSMCの過去最高益という対照的な出来事を並べて紹介する。戦争を想定する現実と、台湾が誇る世界的企業の成長の輝き。その落差が台湾の置かれた現実を際立たせている。

TSMCは世界の半導体供給の要であり、ファウンドリー分野で世界シェアの3分の2を占め、先端プロセスに限れば90%を超える。AI開発に不可欠な半導体に至っては、NVIDIA(エヌビディア)やAMDといった米大手が全面的に依存しており、Googleの親会社Alphabet、Amazon、Apple、Microsoftも自社設計の半導体を最終的にはTSMCに委託しているのが実情だ

AIブームが牽引する成長と課題

AIブームが牽引する先端半導体需要により、TSMCの売上は2014年の240億ドル(約3兆5,300億円)から2024年には880億ドル(約12兆9,400億円)へと急成長を遂げた。現在、同社の時価総額は1兆ドル(約147兆円)に達し、世界で11番目に価値のある企業となっている。特に2022年11月のChatGPT登場以降、株価は2倍以上に跳ね上がった。しかし、規模が大きくなればなるほど支配力も増し、それに比例して直面する課題も一層深刻化している。

『エコノミスト』によれば、TSMCは長年、先端半導体の大半を台湾国内の工場で生産してきた。これまで海外拠点は主に低性能チップの生産に限られていたが、近年になって初めて一部の最先端プロセスを国外に移す動きを始めた。過去5年間で同社が打ち出したグローバル拡張計画の規模は総額1,900億ドル(約28兆円)に上る。そのうち1,650億ドル(約24兆3,000億円)は米アリゾナ州に投じられ、現地に6つの先端工場を建設する計画だ。ただし、米国内でTSMCの精緻な製造プロセスを完全に再現することは容易ではなく、同時に地政学リスクから中核事業をどう守るかも大きな課題となっている。

TSMCの黄仁昭(ウェンデル・ファン)CFOは『エコノミスト』のインタビューで、「当社は本来、目立たない方が望ましい」と語り、近年の厳しい注目や監視に「まだ慣れていない」と率直に明かした。『エコノミスト』は、顧客を前面に立て、自らは黒子に徹するという創業以来の企業文化が、同社の過度な露出への違和感につながっていると分析する。それでも、内外の環境要因に押される形で、TSMCは避けられない海外拡張に踏み出している。

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