大阪と幕張で同時開催されている「MUSIC LOVES ART 2025」で16日、文化庁長官の都倉俊一氏が登壇し、冒頭の挨拶および取材に応じた。都倉氏は、サマーソニックとの連携で始まった本プロジェクトの意義を振り返り、「日本はアジアの才能を発掘し、世界へ発信する拠点となるべきだ」と強調した。さらに「海外展開はマスト。国は単独ではできない。民間のノウハウと国の支援を組み合わせてこそ文化芸術立国は実現できる」と述べた。

コロナ禍から始まった文化庁の関与
都倉長官はまず、文化庁がこのプロジェクトに関わるようになった経緯を説明した。
「2022年夏、コロナ禍の中で幕張のロックフェスに文化庁が参画し、マリンスタジアムや幕張メッセ、海岸一帯にアートを展開したのが始まりでした。15万人が集まり、世界中のアーティストを迎えて音楽とアートを組み合わせる取り組みがスタートしたのです」と振り返った。
その上で、「何万、何十万人もの若者が集まるフェスティバルに文化庁も一緒に関わるべきだと考えた。彼らは音楽フェスを開催していたが、そこにアートを加え、文化庁が企画から関わることで大きな広がりが生まれた」と語り、サマーソニックとの連携が原点であることを強調。大阪でも取り組みを拡大させ、昨年からは大規模展開に至ったと紹介し、「文化庁として今後も継続的に支援していきたい」と展望を示した。
官民連携と海外展開の重要性
都倉長官は懇談会後、「関西を中心に文化庁や経産省と業界関係者が集まり、物事を進める場になった」とし、「これは就任以来のテーマだ。国は何もできない。民間のノウハウを吸収し、ともに進めなければならない」と官民連携の必要性を強調した。
さらに「海外展開は必須であり、日本の文化芸術を広めるにはJETROなどの協力が欠かせない。霞が関だけでは実現できないことを痛感している」と語った。
韓国文化政策との比較
また都倉氏は韓国の文化政策に言及。「韓国は20年前から文化を国策として推進し、アカデミー賞、トニー賞、グラミー賞を次々と獲得している。一方で日本は後を追う形になっているのが現実だ」と指摘。その上で「同じ手法を真似ることはできないが、その姿勢は学ぶべきだ。日本には豊かなコンテンツと才能があり、それを発掘し支援するのが国の役割だ」と強調した。
アジアから世界へ―海外観客へのメッセージ
海外発信について問われた都倉長官は「アジアのアーティストが日本を通じて世界に羽ばたける環境を整えたい」と語った。実際、近年の「ミュージックアワードジャパン」ではベトナムの歌手がグランプリを、タイのアーティストがルビー賞を受賞している。「日本の音楽フェスやイベントを通じて、アジアの才能が世界に羽ばたく契機をつくりたい」と述べ、「こうした流れが日本に才能を呼び込むことにつながる」と強調した。
映画・舞台・ファッションへ広がる展望
最後に都倉長官は「音楽分野では成果を上げてきた。今後は映画、舞台、アート、ファッションなど幅広い領域にも力を注ぎたい」と述べ、日本を「文化芸術立国」とするため、さらなる展開を目指す姿勢を示した。
編集:梅木奈実 (関連記事: 「MUSIC LOVES ART 2025」大阪と幕張で同時開催 サマーソニック連携企画、都市をアートの舞台に | 関連記事をもっと読む )
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