米軍艦情報を中国に売却 25歳華裔水兵にスパイ容疑 終身刑の可能性も

2025-08-22 10:40
アメリカ海軍現役揚陸強襲艦「エセックス号」(USS Essex)。(写真/アメリカ軍DVIDSシステムより)
アメリカ海軍現役揚陸強襲艦「エセックス号」(USS Essex)。(写真/アメリカ軍DVIDSシステムより)
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米国司法省はこのほど、華裔の海軍水兵を正式に起訴した。被告は中国の工作員に取り込まれ、金銭的な誘惑を受けて長年にわたり多数の海軍艦艇に関する「機微情報」を売却していたとされる。6項目の罪状が確定したことを受け、この若い水兵は今後、最高で終身刑に処される可能性が高い。

BBCの報道によれば、米海軍の水兵を務めていた華裔の兵士は、現在25歳の魏金超(英名パトリック・ウェイ)である。逮捕前は強襲揚陸艦「エセックス」(USS Essex)に所属し、主に機械技師として勤務していた。職務上の特性から安全許可を有しており、それにより「エセックス」や米太平洋艦隊(United States Pacific Fleet)の他の艦艇に関する機微な情報に接することができたという。

米司法省の声明によれば、魏は米国に帰化した市民であり、2023年に同じく華裔の海軍下士官、趙文恆と共に逮捕された。司法省は趙について、中国国家安全部から1万4800ドル(約45万2千台湾ドル)以上の現金を受け取り、その見返りとして機微な写真や映像を接触先の中国情報員へ送信したと指摘している。

しかし、両者は秘密裏に情報を売却しながらも証拠隠滅を一切行わず、逮捕後には膨大な通話記録、SNSの私信や音声メッセージなどが次々とFBIと司法省に押収された。これにより、魏金超と趙文恆が機密を漏洩していた事実が裏付けられたのである。

近年、米軍で発生した間諜罪に問われた華人兵士たち。
近年、米軍で発生した間諜罪に問われた華人兵士たち、海軍士官趙文恆(右)と兵士魏金超。(画像/CBS 8ニュース映像より)

現在、魏金超はスパイ罪など6つの罪状に直面している。本件を担当する検察官のアダム・ゴードン氏は声明の中で彼の行為を厳しく非難し、米軍人でありながら重大な裏切りを行ったと強調した。ゴードン氏は「金銭のために軍事機密を中華人民共和国に売り渡したことは、同僚兵士の命を危険にさらすだけでなく、国家全体および同盟国の安全をも脅かすものである」と強く批判した。

自分だけでなく母親もスパイ活動を容認していた?

連邦捜査局(FBI)が通話記録を調べたところ、魏金超は中国側の連絡人を「ビッグブラザー・アンディ(Big Brother Andy)」と呼び、相手の指示に従って複数の暗号化通信アプリを用いながら連絡や金銭の受け取りを行い、関係を秘匿していたことが判明した。また、連絡人から提供された新しいパソコンや携帯電話を使用し、周囲の目を欺いていたという。

さらに皮肉なことに、魏がスパイ活動を行っていたことを裏付ける検察側の証拠の一つは、彼と母親の短いメッセージのやり取りであった。魏は母親に対し、「米海軍にいる他の中国人は副収入を得ようと苦労しているが、私は機密を漏洩するだけでいい」と繰り返し送信しており、母親は「よくやった!」と返信していた。このやり取りから、魏が自らの行為を間諜活動として完全に認識していたことが明らかであり、そこに欺きや誤解の余地はなかったのである。

1週間に及ぶ審理を経て、魏金超はFBIに経緯を供述した。それによれば、彼はまだ米国市民権の取得を申請中であった2022年2月、中国の工作員に接触され、協力者として取り込まれたという。この中国側の情報員は当初、SNSを通じて魏と連絡を取り、自らを「海軍ファン」と称しつつ、中国国有の中国船舶工業集団に勤務していると明かしていた。

最高で終身刑に直面する可能性

交流が深まるにつれ、魏金超は協力者となることを承諾した後、強襲揚陸艦「エセックス」の写真や映像を繰り返し提供し、さらに複数の海軍艦艇のリアルタイムの位置を伝えたほか、「エセックス」に搭載される各種防御兵器の詳細な説明も行っていた。さらには同艦および他の軍艦が抱える内部的な問題まで漏洩していたという。

これらの情報提供に対し、中国側の情報員は過去18か月間で合計1万2,000ドル(約36万6,000台湾ドル)以上の報酬を魏に支払った。

前述の元海軍下士官、趙文恆は作戦海域での演習計画やレーダーシステムの設計図を漏洩したとして、2024年に裁判所から27か月の懲役刑を言い渡されている。一方、魏金超は12月に判決が下される予定であり、最悪の場合は終身刑に処される可能性がある。

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