トランプ関税勝利の代償 世界は結束、中国が最大の勝者?

2025-08-22 10:28
アメリカの関税の圧力の下、各国は市場を開拓し、新たな同盟を探している。(写真/AP通信提供)
アメリカの関税の圧力の下、各国は市場を開拓し、新たな同盟を探している。(写真/AP通信提供)
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トランプ氏は自信満々に「トランプ・ラウンド」と称する貿易戦を仕掛け、米国を再び世界貿易の中心へ押し戻そうと妄想した。しかし、8月20日付の『エコノミスト』は、この戦略は覇権を再建するどころか、各国をして新たな枠組みを模索させる結果となったと指摘する。各国は表向き米国に頭を下げつつも、急速に代替市場や新たな同盟を探し始めた。シンガポールや韓国は市場開拓に奔走し、カナダとメキシコは連携して自衛を図り、BRICSは存在感を拡大。さらに中国は、アフリカ、ラテンアメリカ、ASEANへと勢力を伸ばし、米国が自ら手放した舞台を着実に引き継いでいる。

トランプ氏「新世界構想」 『エコノミスト』一刀両断「夢物語だ」

各国が次々と関税を決定するなか、トランプ政権は今回の貿易交渉を誇らしげに「トランプ・ラウンド」と名付け、米国が世界経済秩序の主導権を再び握ると高らかに宣言した。米国通商代表のジャミソン・グリア氏は自信満々に語り、長年の盟友であるピーター・ナバロ氏に至っては、トランプ大統領こそノーベル経済学賞を受けるべきだと称え、「世界最大の市場がいかに世界を従わせるかを示した」と持ち上げた。

ホワイトハウスの計算は単純である。「旧世界を壊し、米国が支配する新世界を築く」というものだ。世界貿易機関(WTO)の古びた、しばしば機能不全に陥るルールを取り払い、新しい制度を導入すれば、その中心に米国が座るのは当然だという発想である。

しかし『エコノミスト』は、これはトランプ氏の一方的な幻想にすぎないと指摘する。現実には、米国はもはや誰もが避けて通れない市場ではなくなっている。21世紀初頭、米国の輸入額は世界全体の5分の1を占めていたが、現在はわずか8分の1に縮小した。米国を再び中心に据えようとする試みは、市場の実態と大きく乖離しているのである。

各国政府は当然その現実を理解している。米国市場にアクセスするため、表向きは関税協定に署名せざるを得ないものの、裏では代替策の構築に奔走している。ある韓国政府関係者は「第一歩は米国に譲歩すること。第二歩は別の道を探すことだ」と本音を吐露した。

各国が他の道を模索

トランプ氏の関税戦争は、各国に奇策を強いる結果となっている。『エコノミスト』の分析によれば、被害を受けた各国はそれぞれ異なる道を歩み出した。巨額の資金投入で産業を支えようとする国もあれば、補助金を積み増して防衛線を張る国、新たな市場を開拓する国、さらには同盟を組んで米国を牽制する国もある。多くの国々にとっての真の選択肢は、「ワシントンに全面服従する」か「弱肉強食の混乱に沈む」かではなく、短期的な対処と長期的な代替戦略の間で揺れ動くことなのである。

最も一般的なのは資金を投じる手法だ。ブラジルは総額60億ドル(約9,600億円)に上る融資策を打ち出し、減税から政府による買い上げまで手厚い支援を並べ立てたが、投資家には財政悪化への懸念を抱かせた。カナダも木材産業を救済するため、約10億ドル(約1,600億円)の支出を約束。南アフリカは輸出業者に輸送費の共同負担やインフラ建設を求め、独禁法違反すれすれの強硬策に出ようとしている。『エコノミスト』は、トランプ氏の関税は一度課されれば撤回されにくく、補助金頼みでは資金を浪費し、市場を歪めるリスクが高いと警告する。

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