台湾・民進党は18日、SNS上で「823核三延長公投(原発三号機延長稼働を問う住民投票)」に関連し、反原発を訴える複数の画像を公開した。その中で「原発は国際的な潮流ではなく、国際的な難題だ」と強調し、日本の事例を引き合いに出した。しかし、日本のエネルギー専門記者であるKosuke Ebi氏がこれに反論。「台湾の有権者に対し、日本の原発政策を歪めて伝え、内政に利用するのは誤りだ」と公開の場で批判した。さらに「事実を隠せば日台関係にも悪影響を及ぼしかねない」と警鐘を鳴らした。
Kosuke Ebi氏の専門的背景
Ebi氏は投稿へのコメントで「私は日本のエネルギー専門記者だ。民進党の対日友好姿勢は評価するが、日本の原発政策を歪め、国内政治に利用するのは誤りだ」と指摘した。具体例として志賀原発2号機を挙げ、能登半島地震の知見は運転評価に反映され、地震前の評価と一致しており問題はないと説明。「追加的な不確定要素は存在しない」と強調した。
また、2025年に閣議決定された日本のエネルギー基本計画にも言及し、脱炭素と電力需要に対応するため「最大限に原発を活用する」と明記されていると指摘した。
日本の原発政策の実態
日本の原発は福島第一原発事故後に全基が停止したが、エネルギー需要や脱炭素の要請から再稼働が進んでいる。Ebi氏は「最新のエネルギー基本計画では安全規制を強化しつつ、原発を最大限活用する方向が明確になっている」と解説。依然として国内には反対世論があるものの、政府方針は「原発回帰」に向かっていると述べた。
こうした指摘は、民進党の宣伝が日本の現実を正しく反映していないとの問題提起でもある。

民進党が発信した反原発メッセージ
民進党は同日、以下のような見出しを掲げたポスターを一斉に公開した。
- 「原発は国際的な潮流ではなく、国際的な難題」
- 「原発は安価ではない」
- 「停電は電力不足ではなく、送電網の事故」
- 「原発依存度が高い国ほど電気料金は高い」
- 「戦争下で最も脆弱なのは原発」
- 「AI発展に電力不足はない」
- 「核廃棄物処分を妨げてきたのは国民党」
さらに志賀原発2号機や敦賀原発2号機、柏崎刈羽原発6・7号機の再稼働問題に触れ、「安全性や地元の反発があり、国民党が主張するように簡単ではない」と訴えた。
批判と波紋
Ebi氏のコメントは台湾のネット上で大きな話題となり、1500件を超える「いいね」を集め数百件の議論が寄せられた。同氏は「私は緑(民進党)、藍(国民党)、白(民衆党)のいずれの支持者でもなく、中立だ。当然ながら中国共産党の支持者でもない」と強調。かつて日本の福島産食品(台湾では『核食』と呼ばれる)輸入を巡る論争では民進党を支持し、国民党に反対する立場をとったが、「私は一貫して事実と科学を尊重する台湾の人々と立場を同じくしている」と補足した。
この発言は政治家にも引用され、原発推進派の黄士修氏は「日本の記者が台湾政府の誤情報を正した」と強調。国民党の徐巧芯議員も「今回のポスターは大失敗」と批判した。
国民党を中心とする政界の反発
国民党の陳菁徽議員は「台湾は外交や国際的信用を重視している。民進党は国際情勢を切り取って利用するのではなく、真摯に向き合うべきだ」と指摘。民進党の「停電は電網事故」との説明には「小動物が毎年のようにスケープゴートにされている」と皮肉を込めた。
さらに「日本の政策はすでに原発比率の拡大に舵を切っている。日台友好を掲げる民進党が、実際には日本の姿勢を歪めて伝えている」と批判。「『デマをやめろ』と訴えるポスターこそ、最大のデマになっている」と断じた。
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