舞台裏》敵を撃退するか、それとも自滅か?漢光演習は「史上最長・最実戦的」も、台湾の弱点を露呈

2025-08-18 17:39
漢光41号演習は外国メディアから「民間防衛の部分が演技的だ」と批判されたが、軍関係者の目にはむしろ2つの作戦想定こそ戦場現実から乖離していると映った。(写真/軍聞社提供)
漢光41号演習は外国メディアから「民間防衛の部分が演技的だ」と批判されたが、軍関係者の目にはむしろ2つの作戦想定こそ戦場現実から乖離していると映った。(写真/軍聞社提供)
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「史上最長かつ最も実戦的」とされた漢光41号演習は、2025年7月中旬に10日9夜の連続演練を終えた。台湾内の多くの軍事専門家や学者は、国軍兵士の奮闘や国防部の想定計画を高く評価している。

だが意外にも、8月初めに米誌TheDiplomatが掲載したウクライナ学者の寄稿は、漢光演習を「パフォーマンスのようだ」と批判し、台湾社会や民間防衛が戦争に備えていないと指摘した。

台湾メディアがこの論考を引用した際、強調されたのは「漢光演習はショーだ」という表現だった。これに国防部は強く反発し、「漢光41号演習は実戦に即したものであり、『ショー』呼ばわりは国軍兵士への冒涜だ」と異例の声明を発表した。

ただし実際には、ウクライナ学者が「表演的」と批判したのは民防演習部分であり、実兵による軍事演練を否定したわけではない。誇張された見出しが「アメリカの有力誌が演習全体をショーと断じた」と受け取られたことに、軍内部でも不公平との声がある。

20250718-第三作戦区部隊18日に新北地区で縦深防御作戦逐次抵抗演練。(第三作戦区提供)
ウクライナ学者の「演出」批判は、あくまで民間防衛演習への疑問であり、実兵・実戦演練そのものを否定するものではない。(写真/第三作戦区提供)

実戦演練は真剣 民防は課題山積

ある軍関係者は、「国防部が兵士の努力や進歩を強調するのは事実であり、例年との比較としても正当だ」と語る。一方で、The Diplomat の指摘にも一定の妥当性があると認める。寄稿したウクライナの研究者は、自国で実際に戦争を経験している立場から台湾の「都市防衛・レジリエンス演習」を比較し、台湾社会が実際の戦争に備えていないと論じたのだ。こうした観察は実戦体験に基づくもので説得力があり、軍側も問題を自覚しているため、正面から反論しなかったのだという。

軍関係者はさらに指摘する。2025年の漢光演習で本当に再検討すべきは、兵士の奮闘や民防演習の未熟さではない。民防と軍事の連携は、もともと繰り返しの演習や動員を経て成熟するものだからだ。
むしろ注目すべきは、国防部が誇る「実戦化演練」そのものだ。演習終了から20日余り、複数の軍事情勢専門家や退役将校の間では「一部の想定は現実の戦場からかけ離れている」との批判が出ている。「本当にこれではショーと変わらない」との厳しい声も上がり、演習のあり方に疑問符がつけられている。

20250714-国軍「漢光41号」演習14日に陸軍206旅後備部隊が林口地区のキャンパス内で臨戦訓練を実施。傍らで児童が廊下で見学中。(柯承惠撮影)
台湾における軍と民間の調和はなお途上にある。写真は国軍がキャンパスで臨戦訓練を行う一方、児童がカメラに向かってポーズを取る場面。(写真/柯承惠撮影)

軍の想定は現実的か? 「逆の展開」が起こり得るとの指摘も

2025年の漢光41号演習で注目を集めたシナリオの一つは、7月14日に中国軍が台湾本島への上陸に成功し、都市部で戦闘が始まった際、首都防衛を担う憲兵部隊が台北MRT(捷運)を使って機動展開や弾薬補給を行うという想定だった。

もう一つは、北・中・南の各作戦区で国軍が敵の上陸阻止に失敗した後、都市部へ後退しつつ縦深防御を展開し、伏兵や待ち伏せで敵を撃破するという想定である。

しかし、ある元作戦区司令官の退役将官は「ウクライナ戦争の実態から見れば、これらの想定は現実性に乏しく、むしろ正反対の事態が高確率で起こるだろう」と警告する。 (関連記事: 中露の極秘軍事協定が流出 プーチン氏、中国の台湾侵攻演習支援か 8年越し計画の存在明らかに 関連記事をもっと読む

この退役将官によれば、もし中国軍が本島上陸に成功した時点で、国軍はすでに制空権・制海権を失い、電力などの基盤施設も大きな被害を受ける可能性が高い。台北MRTは全面的に停止するはずで、兵士が地下鉄で移動することなど現実的ではない。さらに、運行が止まったMRTの広大な地下トンネルは、国軍が徒歩で移動するのに使えるだけでなく、中国軍の特戦部隊にとって首都突入の「抜け道」となる危険もある。実際、ウクライナでは類似の戦例がすでに複数確認されているという。

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