舞台裏》台湾・鄭麗文氏、米国との摩擦拡大 AITが不満 国民党内では懸念の声も

2025-11-11 18:00
国民党主席の鄭麗文氏(左)は就任間もないが、発言・行動が相次いで波紋を呼んでいる。とはいえ、彼女が本当に向き合う難題はこれからだ。(写真/劉偉宏撮影)
国民党主席の鄭麗文氏(左)は就任間もないが、発言・行動が相次いで波紋を呼んでいる。とはいえ、彼女が本当に向き合う難題はこれからだ。(写真/劉偉宏撮影)
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国民党の新党首・鄭麗文氏が就任してまだ半月。白色テロ時代の犠牲者を追悼する秋季慰霊大会に出席し、「共産スパイ」とされる呉石氏を追悼したことが波紋を呼んだ。与党・民進党からは激しい非難が起き、国民党内でも「政党イメージに影響しかねない」との不安が広がっている。

しかし、党内関係者によれば、これらの騒動は「まだ序章にすぎない」。本当の難題は、これから国会で審議される2026年度の国防予算だという。行政院が発表した2026年度中央政府予算によると、国防費は9,495億元(約4兆6,500億円)で、GDPの3.32%に相当。前年より1,768億元(約8,600億円)増加し、伸び率は22.9%に達している。

このほかにも「非対称戦闘・戦闘レジリエンス特別予算」と呼ばれる約1兆3,000億元(約6兆3,000億円)規模の大型計画が準備されており、審議はこれから本格化する見通しだ。国民党は審議の中で「削減」「凍結」「抑制」など、どの戦略を取るかの方針を統一する必要がある。鄭麗文氏は就任前から一貫して「国防費の急増には反対」の立場を取っており、外国メディアの取材でも明確にそう発言している。

国軍戦備演習、国軍戦力、国軍装備、国防予算。(柯承惠撮影)
国民党の国防予算対応は米国との関係のみならず、2026年・2028年の選挙情勢にも影響を及ぼす可能性がある。写真はイメージ。(写真/柯承惠撮影)

「台湾は米国のATMではない」 鄭麗文氏の挑発的発言

行政院が8月下旬に公表した2026年度中央政府総予算では、国防費は9,495億元でGDP比3.32%。2025年度より1,768億元増の22.9%増と大幅な伸びとなった。ただ、総予算はなお立法院本会議で停滞し、委員会審査にも入っていない。このため、超高額な年次国防予算や特別予算を前に、国民党の院内会派は「審議で抑制するのか、削減か、凍結か、それとも通すのか」という対応方針を内部で擦り合わせる段階にある。

一方、鄭麗文氏は就任前の海外メディア取材から一貫して、国防費の大幅増に反対の立場を明言。AFPに対しては、民進党政権の軍拡は「上限なき空白小切手」であり、「米国の期待は台湾の合理的負担をはるかに超えている。台湾は米国のATMではない。本当にそんな金はない」と批判。ドイチェ・ヴェレのインタビューでも「国防費がGDP比3%超は多すぎる」と言い切った。

この発言は、深藍(国民党支持の保守強硬層)の空気を色濃く反映していると党内要人は見る。今後、国民党本部は年次・特別いずれの国防予算に対しても、厳格な監視と強硬な精査を打ち出す公算が大きい。 (関連記事: 舞台裏》台湾・野党共闘はまた難航か 国民党・鄭麗文氏は民衆党との橋渡し役になれるのか 関連記事をもっと読む

20251031-総統頼清徳31日主持「陸軍装甲第五八四旅聯兵三営换裝M1A2T戦車成軍典礼」。(顔麟宇撮影)
頼清徳政権(中央)は2026年度の国防費を9,495億元(GDP比3.32%)に編成した。(写真/顏麟宇撮影)

米国と真っ向から AITは腹に一物

外交通の国民党関係者によれば、鄭氏は「両岸の和解と対話が進めば、軍拡に投じる資金を健保・教育・介護などの民生に回せる」とも海外メディアに語っている。国民党の伝統的な国防・対中路線に沿う主張ではあるが、今このタイミングでは「米国側には極めて刺々しく聞こえる」と同関係者は指摘する。台湾の国会第一党が国防費増を拒み、自助努力の意思を示さないどころか、米国が最も警戒する中国との協調に傾くシグナルになりかねない。つまりトランプ政権下の米国と正面衝突する構図だ。

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