韓国の若手理工人材、7割が「海外でキャリアを築きたい」 医学部を除き国内離れが進む背景とは

韓国の大学キャンパスで学ぶ理工系人材をイメージした画像。(Geminiによる生成イラスト)
韓国の大学キャンパスで学ぶ理工系人材をイメージした画像。(Geminiによる生成イラスト)
目次

韓国はサムスン(Samsung)やSKハイニックスなど、世界を代表するテクノロジー企業を抱える国として知られている。しかし、韓国銀行(中央銀行)の最新報告によれば、同国の若手理工系人材の間で「国外流出」の動きが加速している。20〜39歳のSTEM(科学・技術・工学・数学)分野出身者のうち、実に7割が「今後3年以内に海外移住を検討している」と回答。その理由として、低賃金とキャリア成長の機会不足を挙げる声が目立つ。専門家は、この人材流出が韓国の技術競争力を長期的に損ない、革新力の低下を招く恐れがあると警鐘を鳴らしている。

韓国では理工系人材の社会的価値が高まり、政府も経済成長を担う中核人材として彼らの育成を重視してきた。

一方で、韓国時報が伝えた韓国銀行の報告書は、国内の「産業構造上の制約」が理工系人材の潜在力の発揮を阻んでいると指摘している。研究開発(R&D)従事者は人口1万人あたり170人超と主要国でも高水準だが、待遇や職場環境への不満は根強い。

「韓国の理工専門職は仕事の条件や待遇への満足度が低く、スタートアップの生態系や投資基盤も未成熟なため、高い報酬を得にくい状況にある」

医学生だけが例外?

報告書はさらに、優秀な学生の多くが理工系を避け、安定したキャリアを求めて医学部へ進学する傾向が強まっていることも指摘する。医療分野に進んだ人材は国内で就職する場合もあるが、研究環境や待遇面の限界から、一定数が後に海外へ移るケースも少なくない。

海外移住先として最も人気が高いのは、やはり太平洋の向こう側にあるアメリカだ。

韓国系の理工系博士号取得者数は、2010年の約9,000人から2021年には約1万8,000人へと倍増。特にバイオテクノロジーや情報通信(ICT)分野に集中しており、韓国人の高度専門職が太平洋を渡る流れは顕著になっている。

2024年11月14日、韓国ソウルで大学修学能力試験(大学入学試験)が行われている。(美聯社)
2024年11月14日、ソウルで実施された大学修学能力試験(大学入学試験)。(AP通信)

韓国銀行が実施した2,700人規模の調査では、国内勤務者の42.9%が「3年以内に海外移住を考えている」と回答。若手層(20〜39歳)ではその割合が70%に達した。

なぜ海外を選ぶのか

調査によると、最も大きな理由は「金銭的要因」だった。回答者の66.7%が収入格差を挙げており、韓国で働く理工系専門職の半数以上が自らの給与に不満を持っている。一方で、海外で働く同分野の韓国人で給与に不満を持つ人は2割未満にとどまった。また、61.1%が「より良い環境と人脈形成」、48.8%が「明確なキャリアアップの機会」を求めて海外を志向している。

韓国大学入学試験の一風景。(美聯社)
韓国の大学入学試験の一場面。(AP通信)

専門家は「個人の選択としては合理的だが、これが続けば韓国の高度技術人材の流出が進み、国家の競争力や成長潜在力を削ぐ恐れがある」と警告している。

どう改善すべきか

韓国銀行は報告書で、企業に対し「給与体系の抜本的な見直し」を提案。年功序列に依存した硬直的な報酬制度を改め、成果や能力に応じた柔軟な報酬体系を導入すべきだとした。さらに、若手研究者が国内にとどまり、長期的に活躍できるような環境整備も求められるとしている。

「優秀な研究者が成長を実感できる明確な昇進制度と、自由な研究が可能な環境が不可欠だ」と報告書は強調。加えて、スタートアップへの支援拡充や、戦略的技術分野でのオープンな産業エコシステム構築も急務だと指摘している。

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編集:田中佳奈

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