トップ ニュース 韓国の「原子力潜水艦」構想が現実味 東アジアの軍拡競争に拍車か 数千億ドル規模の案件にトランプ氏がゴーサイン、建造は米フィラデルフィア
韓国の「原子力潜水艦」構想が現実味 東アジアの軍拡競争に拍車か 数千億ドル規模の案件にトランプ氏がゴーサイン、建造は米フィラデルフィア 2025年10月29日、米国大統領トランプ氏が韓国慶州国立博物館で韓国大統領イ・ジェミョン氏と握手を交わす。(AP通信)
トランプ米大統領は30日、SNS「トゥルース・ソーシャル」で、韓国の原子力潜水艦建造要請を承認したと明らかにした。建造は米フィラデルフィアの造船所で行う計画という。韓国海軍が「原潜クラブ」に加わる道が開けた格好で、3500億ドル規模にのぼる経済・通商パッケージを伴う戦略転換だとして、東北アジアからインド太平洋にかけて潜水艦競争が一段と激化するとの見方が出ている。
トランプ氏は投稿で「彼らに原子力潜水艦の建造を許可する。古く遅いディーゼル電気潜水艦ではない」と強調。「米韓同盟はこれまでになく強固だ」と述べ、今回の訪韓についても「偉大な韓国大統領との素晴らしい会談だった」と持ち上げた。韓国メディアによれば、29日には投資や造船を含む包括的合意で一致したという。
李在明氏、「ディーゼルの限界」を直訴 韓国大統領府の説明では、李在明大統領は29日の首脳会談で、長年の宿願を率直に提起。「ディーゼル電気潜水艦は水中持続力が限られ、北朝鮮や中国の潜水艦追尾能力を大きく制約している」と述べ、米側に原子力推進用の燃料供給を決断するよう要請した。あくまで狙いは核兵器の搭載ではなく、原子力推進による航続と戦術上の優位だと明確化。韓国が周辺海域の水中脅威に自力対応できれば、米軍の負担軽減にもつながると訴えた。
朴正熙時代から韓国は原潜導入を模索してきたが、米韓原子力協定とワシントンの不拡散政策が壁となってきた。協定は再処理を厳格に制限し、濃縮度20%超のウラン利用を禁じ、民生を超える核活動は米国の同意が必要と規定。潜水艦炉の高濃縮燃料の確保には、米側の承認が不可欠だった。
会談の昼食会では、デザート皿に「PEACE!」の文字がチョコレートで描かれ、初会談時に掲げた「朝鮮半島の平和の推進役・歩調取り役」との誓いを想起させる演出も。和やかな空気のなか、トランプ氏が長く立ちはだかった核関連のハードルを崩す決意を固めたとの受け止めが広がっており、この合意が地域の軍事情勢を大きく塗り替える可能性がある。
フィラデルフィア製の「アメリカ産」? ハンファと米造船業の「復活劇」 トランプ氏は韓国の原子力潜水艦建造承認を受け、続けてSNSに詳報を投稿した。「韓国はフィラデルフィアの造船所で原子力潜水艦を建造する。ここは我々の偉大なアメリカ合衆国だ。米造船業は間もなく大規模な復活を迎える」と強調した。フィラデルフィア海軍造船所はかつて米海軍の象徴的存在だったが、製造業の海外移転で衰退した経緯がある。近年、韓国のハンファグループが買収して再生に乗り出しており、今回の合意は米韓間の産業協力を象徴する動きとも受け取られている。
韓国側は自国が民間造船で世界有数の競争力を持つにもかかわらず、トランプ氏は韓国資本と技術を米造船所の設備や労働力と結び付け、米国国内の雇用創出につなげる“ウィンウィン”の方策を打ち出したと報じられている。これは「アメリカを再び偉大にする」(MAGA)を掲げるトランプ政権にとって、造船業の国内回帰と揺れる州の有権者へのアピールに資する成果だ。一方で、潜水艦の核動力推進技術の供給源については明示されておらず、「AUKUS(オーカス)を事実上拡大した『AUKUS 2.0』ではないか」との臆測も浮上している。
AUKUSの「翻版」か 核不拡散体制への挑戦 アメリカ、イギリス、オーストラリアは2021年に三国の安全保障パートナーシップ「AUKUS」を発表し、協議の核心は米英がオーストラリアの原子力潜水艦少なくとも8隻の建造を支援することにある。これは、米国が1950年代に英国と核技術を共有して以来、初めて他国へこれほど機微な技術を移転する事例であり、いまや韓国が次の例外となる可能性がある。ワシントンのシンクタンク「武器管理協会(Arms Control Association)」のダリル・キンボール事務局長は強い懸念を示し、韓国の原潜取得は「多方面の問題を引き起こし得る」と指摘した。
キンボール氏は英紙『ガーディアン』に対し、「先のAUKUSと同様、韓国が求めているのは潜水艦そのものではなく、米国による核動力推進の包括的サービスであり、そこには核燃料も含まれる」と述べた。潜水艦用原子炉は通常、兵器級の高濃縮ウラン(HEU)を用い、その濃度は民生用原発を大きく上回る。こうした燃料を非核兵器国へ移転する場合、国際原子力機関(IAEA)は新たに「極めて複雑な監督メカニズム」を構築し、兵器開発への転用を防ぐ必要があり、現行の核不拡散条約(NPT)体制に大きな挑戦を突きつけることになる。
「韓国にとって、使用済み燃料から兵器級プルトニウムを抽出したり、核兵器製造に資するウラン濃縮技術を習得したりすることは、技術的にも軍事的にも不要だ」とキンボール氏は警告する。「もし米国が本気で世界的な核拡散を防ぎたいのであれば、敵対国のこうしたデュアルユース技術取得を阻むのと同様に、同盟国からの提案にも断固たる姿勢で臨むべきだ。」
3500億ドル規模の「大取引」と地域の潜水艦競争 トランプ氏の承認は、巨額の経済取引と結び付く一面もある。報道では、韓国側が総額約3,500億ドル(約52.9兆円)規模の資金を動員し、その一部を米国側のエネルギーや造船プロジェクトに投じることに合意したとされる。さらに韓国側の企業による総投資額は6,000億ドル(約90.6兆円)を超えるとの主張もある。日経アジアなどは、提示された合意案の中で韓国が年換算2,000億ドル(約30.2兆円)を現金支払いし、残る1,500億ドル(約22.7兆円)を造船プロジェクトに充てるという枠組みが示されたと報じている。具体的な数値構造は流動的だが、原潜承認は米側が与えた重要な“見返り”の一つと受け止められている。
この決定により、東北アジアの水中戦力の競争は一段と激化する可能性がある。今年3月、北朝鮮は「核動力潜水艦」をうたう写真を公開しており、性能の真偽はともかく、平壌の非対称戦力強化の意図が表面化している。北朝鮮やロシアとの関係深化を背景に、韓国がより強力な水中抑止力を求める戦略的合理性はある。
原子力潜水艦は水中で長期間にわたり高速で行動でき、隠密性や行動範囲は従来のディーゼル電池式艦に比して格段に優れる。韓国海軍は現在、KSS-III級など最新鋭のディーゼル潜水艦を保有するが、広域作戦や長期追跡を要する任務では航続力が制約となる。原潜を擁すことで、朝鮮半島周辺やより遠隔の海域における監視・追跡能力は飛躍的に高まり、北朝鮮の弾道ミサイル搭載潜水艦(SSB)や中国海軍の水中活動への抑止力強化が期待される一方、地域の軍備増強競争を一層促す懸念も払拭できない。
更多新聞請搜尋🔍風傳媒
最新ニュース
FRBパウエル議長「12月利下げは確定でない」発言で市場動揺 米株・国債・金が一斉急落 米連邦準備制度理事会(FRB)の最新利率決定は市場の予想通りだったが、FRB議長の ジェローム・パウエル(パウエル)氏が「12月の利下げは確定事項ではない」と明言したことで、株式市場、米国債、金価格が一斉に急落し、台湾株価指数先物の夜間取引でも一時100点以上の下落を記録した。記者が原稿執筆する時点で、台湾株価指数先物の下落幅は縮小したものの、米株のダウ工業......
【一文でわかる】釜山で開催の米中首脳会談はなぜ重要か? 両首脳が語り合う4つの核心議題とは アメリカのドナルド・トランプ大統領は日本訪問を終えた後、韓国へ移動し、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席する予定だ。しかし、海外メディアの関心は単に韓国との外交にとどまらず、トランプ氏が中国の習近平国家主席、さらには北朝鮮の金正恩総書記と会談するかどうかに注がれている。会談の場所と目的数日間の憶測を経て、北京は29日、習近平国家主席とトランプ......
日経平均が史上初の5万円超え!謝金河氏が明かす「狂気株」急騰で日本人驚愕 日本の新首相・高市早苗氏が就任直後から、来日したドナルド・トランプ米大統領と良好な関係を築き、外交デビュー戦で鮮烈な印象を残した。その勢いを受け、日経平均株価は29日、前日比1088円高の5万1307円と史上最高値を更新した。台湾の財信メディアグループ董事長・謝金河氏は自身のフェイスブックで「高市早苗が日本の新時代を切り開いた」とコメントしている。謝氏はこの......
【SMBC日本シリーズ2025第3戦】甲子園決戦へ 才木vsモイネロで「勝負の分水嶺」 10月25日にみずほPayPayドーム福岡で開幕した「SMBC日本シリーズ2025」は、1勝1敗のタイで舞台を関西へ移した。第1戦では阪神タイガースが投手戦を制して先勝したが、第2戦では福岡ソフトバンクホークス打線が初回から爆発。序盤2回で9点を奪う猛攻を見せ、最終スコア10対1で圧勝した。互いに対照的な展開となった2試合を終え、シリーズは一層白熱している。......
論評:頼清徳総統の拙速さと、米国の不興を招く恐れのある国民党次期主席・鄭麗文氏 米誌『タイム』がこのほど、米シンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ」アジア担当ディレクター、ライル・ゴールドスタイン氏の寄稿「The U.S. Must Beware of Taiwan’s Reckless Leader(米国は台湾の無謀な指導者に警戒すべきだ)」を掲載した。ほぼ同時期に、英紙『フィナンシャル・タイムズ(FT)』も「Taiwan's......
欧州17カ国の議員団が初訪台 蕭美琴副総統「台湾は孤独ではない」民主連帯を強調 欧州議会および欧州各国、カナダなど31カ国の国会「友台議員連盟」の代表が共同議長を務める「フォルモサ・クラブ(Formosa Club)」の2025年年次総会が、初めて台北で開催された。欧州議会と欧州17カ国の国会から40名を超える議員団が訪台し、28日午後に記者会見を開いた。蕭美琴(シャオ・メイチン)副総統はあいさつの中で、「フォルモサ・クラブの訪問は、台......
台湾で初のアフリカ豚熱確認 「人には感染しない?」専門家が語る感染リスクと防疫対策 台湾の防疫体制に再び緊張が走った。10月22日、台中市梧棲区の養豚場で死亡した豚が検査の結果「アフリカ豚熱(African Swine Fever、ASF)」に感染していることが確認された。2018年に国境検疫を強化して以来、台湾で初の国内感染例となる。このニュースが報じられると、台湾全土の養豚業者や消費者の間に不安が広がり、「人に感染するのか」「感染した豚......
論評:ドナルド・トランプ-習近平会談カウントダウン 台湾の「Bプラン」、準備できているか? 米中の新たな貿易交渉が初期合意に達し、「トランプ-習近平会談(米中首脳会談)」では台湾問題が取り上げられる可能性が高まっている。台湾の民進党政権はこれに対して冷静な構えを見せているが、海外メディアの多くは懸念を示している。英誌『エコノミスト』は最近、「台湾のBプランとは何か?」という特集記事を掲載し、トランプ2.0の「取引型性格」が台湾を犠牲にするリスクを高......
日本の寿司の神、100歳でも現役! 健康長寿の秘訣ーー「最高の良薬は〇〇だ」 日本寿司の伝説的人物、小野二郎氏の寿司店「すきやばし次郎」は十年以上にわたりミシュラン三つ星を獲得し、世界最高齢の三つ星シェフとしての記録を打ち立てた。数多くの世界的名士にサービスを提供してきたにもかかわらず、本日100歳を迎えた彼には完全に引退する意向はない。寿司の神・小野二郎氏:健康の秘訣は働くことAP通信によると、小野二郎氏は先月、「敬老の日」に贈り物......
アマゾン、企業部門の約10%にあたる3万人削減へ AI時代の構造転換 米国の電子商取引大手であるアマゾンは再び人員削減の嵐を巻き起こしている。複数の消息筋によると、アマゾンは28日から大規模な人員削減計画を開始予定で、最大で3万人の企業社員を削減する計画である。これは会社の企業職員の約10%に相当し、2022年末以降で最大規模に。当時、アマゾンはすでに2万7,000件の職位を削減し、今回の再度の措置はAI時代下での構造的な転換......
SMBC日本シリーズ2025、阪神が逆転勝利で白星発進 ソフトバンクとの11年ぶり対決制す プロ野球の頂上決戦、SMBC日本シリーズ2025の第1戦が10月25日、みずほPayPayドーム福岡で行われた。ソフトバンクが先制する展開となったものの、阪神が投打の主軸の活躍で逆転勝利を収めた。両チームが日本シリーズで対戦するのは2014年以来、11年ぶり。先発はソフトバンクが有原航平、阪神が村上頌樹と、両リーグの最多勝投手がマウンドに上がった。初回、ソフ......
トランプ大統領訪日で東京が星条旗カラーに染まる 高市首相「日米同盟をさらに強化」 アメリカのドナルド・トランプ大統領が27日、公式実務訪問賓客として日本を訪問した。高市早苗首相は自身のX(旧Twitter)で「トランプ大統領、ようこそ日本へ!」と投稿し、「明日お会いし、偉大な日米同盟を一緒に一層強化していくための議論ができることを楽しみにしています」と述べ、日米首脳会談への期待を表明した。投稿は日本語と英語の両言語で行われ、首相は温かい歓......
気象予報》台湾で今週末さらに冷え込み 気温18度まで低下も 二つの台風発生の恐れ 多くの市民が今朝目を覚まし、気温の急変を体感したことだろう。台湾中央気象署は10月28日、再び強まる東北季節風と華南から東に移動する雲の影響により、北台湾では明確な降雨が予想され、全体的に「湿って冷たい」気候に変化すると発表した。
気象署は基隆、台北、新北、宜蘭の4県市に大雨特報を発令。桃園以北および東北部では雨天となり、特に基隆北海岸、台北山地、東北部地......
舞台裏》台湾・太子グループで9億台湾ドル横領発覚 元幹部が3カ月で巨額資金を個人口座へ送金 米司法省と財務省は2025年10月中旬、電信詐欺や資金洗浄の疑いで太子グループに制裁を科し、数十億ドル規模の資産を押収した。制裁対象には台湾の企業9社と女性3人が含まれ、これを受けて台北地検、内政部刑事警察局、法務部調査局などが動員され、太子不動産や博居など関係企業の徹底調査に着手。過去数年にわたり電信詐欺の監督が不十分だった背景の解明を急いでいる。捜査の過......
張鈞凱コラム:馬英九時代にまかれた種が、いま芽吹きつつある 台湾光復80周年を受け、中国で記念大会が開かれ、「台湾光復記念日」が正式に設けられた。これに先立ち、北京の清華大学台湾研究院は設立25周年を迎え、23日に「両岸関係新情勢学術シンポジウム兼清華両岸フォーラム」を開催。両岸から140人超の専門家・研究者が集まり、①両岸の政治・経済関係の新潮流、②社会交流の新局面、③若者のデジタル知識の新たな展望、④両岸関係を取......
トランプ大統領が6年ぶりに来日 高市首相と初会談へ 首都圏は過去最大規模の厳戒態勢 アメリカのドナルド・トランプ大統領が27日午後、第二次政権発足後初めて日本を訪れる。2019年以来、約6年ぶりの来日となり、天皇陛下との会見や高市早苗首相との初の首脳会談に臨む予定だ。日本側は公式実務訪問賓客として国を挙げて迎え入れ、両国の経済・安全保障関係の強化を図る。皇居で天皇陛下と会見、高市首相とは28日に会談トランプ大統領は、アジア歴訪の最初の訪問地......