台湾の防疫体制に再び緊張が走った。10月22日、台中市梧棲区の養豚場で死亡した豚が検査の結果「アフリカ豚熱(African Swine Fever、ASF)」に感染していることが確認された。2018年に国境検疫を強化して以来、台湾で初の国内感染例となる。
このニュースが報じられると、台湾全土の養豚業者や消費者の間に不安が広がり、「人に感染するのか」「感染した豚肉は食べても大丈夫か」という2つの疑問が焦点となった。
アフリカ豚熱は人に感染しない 致死率は最大100%
アフリカ豚熱は豚にのみ感染するウイルス性疾患であり、人間には感染しない。致死率は90〜100%と極めて高く、現在ワクチンや特効薬は存在しない。しかし、世界動物保健機関(WOAH)および各国の研究によると、ASFは人畜共通感染症ではないとされている。
また、検査に合格した豚肉を70℃以上で十分に加熱すれば、人体への害はないとされている。
感染豚の肉を食べても大丈夫? リスクは「密輸肉と残飯飼育」
理論的には、ASFウイルスを含む豚肉を食べても、人が病気になることはない。真のリスクは、合法的な検査を経ていない豚肉製品にある。密輸肉や残飯を飼料にしている養豚場では、感染拡大の危険が高まる。
もし残飯に感染地域から輸入された肉の残りが混ざっていた場合、ウイルスは高温処理不足の状態で生き残る可能性がある。その後、飼料、輸送車両、靴底や器具を介してウイルスが拡散し、新たな感染経路を作る。台湾農業部は「合法的に検査された豚肉を購入し、十分に加熱調理すれば安全」と強調している。
台中の感染で警戒レベル引き上げ 「残飯養豚」が最大の盲点
農業部の調査によると、今回感染が確認された養豚場は「残飯飼育」を行っていた。これは防疫上、最も管理が難しい飼育方法だ。残飯に輸入加工肉やソーセージの残りが含まれている場合、それが感染源となる可能性が高い。
台湾政府は感染拡大を防ぐため、次の7項目の緊急対策を発表した:
- 全国の豚の移動・と畜を5日間停止
- 残飯による飼育を全面禁止
- 感染地域から半径3キロ圏を防疫管制区に指定
- 養豚場、屠殺場、輸送車両の徹底消毒
- 感染経路の追跡調査と封鎖措置
- 農家への通報義務強化
- 防疫人員の常駐と検査体制の拡充
ワクチンも薬もなし 唯一の防御策は「早期通報と封じ込め」
アフリカ豚熱は「最も防ぐのが難しい豚の病気」と呼ばれる。ウイルスは冷凍肉で数カ月、乾燥環境下では1年以上生存する。そのため各国は「感染が見つかれば殺処分、疑いがあれば封鎖」という厳格な対策を採っている。
台湾でも防疫当局は緊張を強めており、もしウイルスが広がれば、1997年の口蹄疫(FMD)流行の悲劇が再来しかねない。当時、台湾では400万頭以上の豚が殺処分され、経済損失は1,000億台湾ドルを超えた。
消費者は冷静に 「検査済み豚肉を選べば防げる」
専門家は、「ASFは人には感染しないが、養豚産業全体を壊滅させる可能性がある」と警告する。消費者に求められるのは恐怖ではなく、「正しい選択」と「検査制度の支持」だ。
購入時の注意点は以下の通り:
- 「屠宰衛生検査合格印」がある豚肉を選ぶ
- 表示が不明確な肉製品・ソーセージは避ける
- デマを拡散せず、買いだめを控える
農業部は「政府・業者・国民が一体となって防疫を徹底すれば、感染は養豚場で止められる」と強調している。
編集:梅木奈実 (関連記事: 内部暴露》台湾・盧秀燕台中市長に批判集中 国民党の最有力総統候補が不満噴出し反撃 | 関連記事をもっと読む )
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