台湾国民党・鄭麗文氏、対中路線を本格化か 党務人事で「地雷」埋設、盧秀燕氏の2028年構想に波紋

2025-10-29 17:40
国民党の新任主席・鄭麗文氏が進める党務人事をめぐり議論が広がり、対中路線の親中傾斜が2026年・2028年選挙に及ぼす影響を懸念する声が党内で強まっている。(写真/柯承惠撮影)
国民党の新任主席・鄭麗文氏が進める党務人事をめぐり議論が広がり、対中路線の親中傾斜が2026年・2028年選挙に及ぼす影響を懸念する声が党内で強まっている。(写真/柯承惠撮影)
目次

台湾・国民党主席選で「世代交代」を掲げ、いわゆる「老藍男(国民党の年配保守層)」と評された郝龍斌・前台北市長を過半の得票で退け、新党首に選出された前立法委員の鄭麗文氏は、11月1日の正式就任を前に、副主席や秘書長、組織発展委員会(組発会)・文化伝播委員会(文伝会)の主委など主要ポストの人事を相次いで発表した。ところが蓋を開けると、「世代交代」の看板とは裏腹に、副主席や秘書長など意思決定の中枢に70代後半の人材が並び、「老藍男の中の老藍男ではないか」との批判も浮上。人事のスタイルは党内で賛否が割れている。

鄭氏はすでに4人の副主席を公表。このうち専任は3人で、李乾龍氏(76、元党秘書長)、季麟連氏(78、元黄復興党部主委=軍系組織責任者)、張榮恭氏(75、元副秘書長)を起用。李乾龍氏は党秘書長を兼ね、実権を握る副主席となる。もう1人は兼任で、蕭旭岑氏(51、前総統府副秘書長/現・馬英九基金会執行長)。蕭氏は副主席就任後も基金会の職を続ける見通しで、かつて黄敏惠・嘉義市長らが地方首長と副主席を兼ねた例に倣う形だ。

20251018-国民党主席選の当選者鄭麗文氏が勝利のスピーチを発表。(顏麟宇撮影)
前立法委員の鄭麗文氏が国民党主席に当選し、11月1日の正式就任前から主要人事を相次いで発表した。(写真/顏麟宇撮影)

中枢は高齢化? 鄭麗文人事の「文武両用」

ベテラン党務関係者によれば、専任副主席は党務に広く関与でき、李乾龍・季麟連・張榮恭の3氏は、鄭氏体制の最重要カードとなる。加えて、鄭氏の背後で影響力が大きいとされる「CK楊」こと楊建綱氏(異康会社会長、80歳近いとされる)を含めれば、4人の合計年齢は300歳超。この中核が、鄭氏主導の今後の両岸・国際路線の見直し、党務改革、そして2026年・2028年選挙の候補者選定や選挙戦略を担う見立てだ。

鄭氏の人事は「年長の老藍男で、より若い老藍男を入れ替えただけ」と揶揄され、「世代交代」の定義を逆説的に示した格好だが、党の有力者は「むしろ鄭氏の柔軟さと現実主義の表れ」と評価する声もある。というのも、鄭氏は党政の実務経験や人脈が十分とは言えず、要職を若手中心にすると党機構が回らず、地方派閥や県市長、党所属立法委員も党主席を軽視しかねない、いわゆる「命令が党中央から外へ出ない」事態を招く恐れがあるためだ。

この有力者は、鄭氏はネット上の発信力が高く、テレビ討論でも強みを持つため「空中戦」は安定して戦えるが、影響力の大きい派閥領袖や地方ボスをまとめるには弁舌だけでは不十分だと指摘。季麟連氏の起用で軍系支持層を固め、李乾龍氏は各県市議会議長や本土派との関係が良好。さらに2018年の統一地方選で陣頭に立ち大勝に導いた組発会主委・李哲華氏の手腕を組み合わせ、新体制の不安定期を乗り切り、党務・選挙実務の早期正常化を図る狙いがあるという。

20240309-国民党前秘書長李乾龍氏が党中常委選挙に出席。(柯承惠撮影)
国民党前秘書長の李乾龍氏が副主席に就任。(写真/柯承惠撮影)

大老の均衡人事で党権を固める? 鄭麗文氏は「集団指導」路線を取らず

張榮恭・蕭旭岑両氏の副主席起用については、「党内各派の均衡を意識した」との見方が出ている。張氏は連戦・元主席系、蕭氏は馬英九・前総統の直系とされる。加えて、王金平・前立法院長の推薦で李乾龍氏、吳敦義・前副総統が重用した李哲華氏を配し、「党の大老」各陣営から広く登用したことで、「一人が全てを決める」旧来型を脱し、集団指導に舵を切るのではないかとの観測だ。

ただし、党務高層は「“集団指導”という理解は実情に合わない」と否定的だ。まず、馬英九氏や連戦氏ら大老はすでに党務から距離を置いて久しい。李哲華氏は実際には馬系に近く、吳敦義氏が育てた人材とは言い難い。鄭氏が張榮恭・蕭旭岑・李哲華各氏を登用した主因は、出自よりも能力評価だという。加えて、もし本当に集団指導を志向するなら、台中市の盧秀燕市長、台北市の蔣萬安市長、桃園市の張善政市長ら実力派の側近を党本部に招くはずだが、現時点で彼らの陣営から要職登用は見当たらない。さらに、間もなく任期を終える朱立倫氏の人脈も、党本部に残る気配はないという。

最新ニュース
台湾の「新南向政策」は持続可能か 中国がASEANを深く取り込み米国を牽制——貿易協定をアップグレードし二国間関係を強化
安倍晋三襲撃で「家の中の野党」は世界を失った 安倍昭恵氏が語る悔恨――政治をもっと語ればよかった、夫の幼少期の日記に涙
論評:頼清徳総統の拙速さと、米国の不興を招く恐れのある国民党次期主席・鄭麗文氏
陸文浩氏の見解:中国軍初の電磁カタパルト搭載076型強襲揚陸艦「四川」、11月以降に海上試験へ
「台湾は孤独ではない!」ヨーロッパ17か国の議員が訪台 蕭美琴副総統:広義の安全保障と国防議題の交流を望む
高市首相は「安倍カード」 李在明氏は金冠贈呈 トランプ訪アジアで日韓が見せた「贈り物外交」の真意
台湾で初のアフリカ豚熱確認 「人には感染しない?」専門家が語る感染リスクと防疫対策
論評:ドナルド・トランプ-習近平会談カウントダウン 台湾の「Bプラン」、準備できているか?
日本の寿司の神、100歳でも現役! 健康長寿の秘訣ーー「最高の良薬は〇〇だ」
トランプ氏、高市首相と空母ジョージ・ワシントンに登艦 空母で「トヨタを買おう!」と呼びかけ 日米同盟「新たな黄金時代」に突入へ
日米首脳会談で台湾海峡の平和と安定を確認 高市首相、就任1週間で3度目の言及 台湾外交部「心から感謝」と声明
アマゾン、企業部門の約10%にあたる3万人削減へ AI時代の構造転換
【SMBC日本シリーズ2025第2戦】ソフトバンクが10-1で圧勝 山川3ラン&周東がシリーズ新記録の5安打 日本シリーズ1勝1敗に
SMBC日本シリーズ2025、阪神が逆転勝利で白星発進 ソフトバンクとの11年ぶり対決制す
SMBC日本シリーズ2025、11年ぶりの対決へ 開幕投手はソフトバンク・有原航平、阪神・村上頌樹に決定
トランプ大統領訪日で東京が星条旗カラーに染まる 高市首相「日米同盟をさらに強化」
高市早苗氏、トランプ氏と初会談 「日米新黄金時代」の構築を宣言 防衛費2%達成前倒し・レアアース供給網で協力、ノーベル平和賞推薦も
トランプ氏が来日、3日間の訪問を開始 「巨額投資」と「防衛費」の二大カード—高市早苗氏は最も手強い米大統領を手懐けられるか
年末旅行シーズン前に要注意 「世界最悪の航空会社」ランキング発表 アメリカン航空が1位に 手荷物紛失・機内煙トラブルも
「安倍暗殺事件」世紀の公判が本日開廷 崩れた家族、自製銃、そして日本政治を揺るがした旧統一教会の影
カンボジアの太子グループが示した「シンガポール・ウォッシング」の手口 シンガポールはマネロンの楽園か 詐欺産業が金融センターと交差するとき
気象予報》台湾で今週末さらに冷え込み 気温18度まで低下も 二つの台風発生の恐れ
トランプ氏の「台湾独立に反対」発言に先立ち、シンガポールの黄循財首相が立場を明示 「一つの中国を明確に支持、台湾独立に反対」
「台湾有事は日本有事―米国も?」 安倍氏の遺産を継ぐ日本初の女性首相、高市早苗氏 トランプ大統領を惹きつけつつ台湾情勢を見極める
トランプ氏に「ダブルの朗報」 米中が「首脳会談の積極的枠組み」で合意 カンボジア首相はノーベル平和賞推薦を発表
ユニクロ、西日本最大の旗艦店「UNIQLO UMEDA」開業へ 綾瀬はるか・松下洸平が登壇し新店舗の魅力語る
清水港マグロまつり2025、11月8日・9日に開催 冷凍マグロ水揚量日本一の港で解体ショーや無料振る舞いも
舞台裏》台湾・太子グループで9億台湾ドル横領発覚 元幹部が3カ月で巨額資金を個人口座へ送金
張鈞凱コラム:馬英九時代にまかれた種が、いま芽吹きつつある
トランプ・習近平会談で何を協議するのか トランプ氏「貿易・農業・フェンタニル」 ルビオ氏「台湾は交渉材料ではない」
第38回東京国際映画祭が10月27日に開幕 特集「台湾映画ルネッサンス」に4作品選出 台湾の新鋭監督が来日へ
百年政党は「対中再定義」へ? 台湾・国民党主席に鄭麗文氏 FT「親中路線がトランプ氏を刺激する恐れ」
陸文浩の見解:気象の影響で台湾海峡の中国軍用機・艦が急減 「徘徊型」電子偵察艦が日本周辺海域へ急行した理由
トランプ大統領が6年ぶりに来日 高市首相と初会談へ 首都圏は過去最大規模の厳戒態勢
台湾で今行くべき観光牧場は?「まるでスイス」清境農場が堂々1位 台湾観光農場TOP3が明らかに
台湾の夜市ランキングTOP3発表 訪台観光客に最もおすすめの台湾夜市は? 地元民が選ぶ「永和・楽華夜市」の魅力とは
台湾の「次の護国神山」はどこに? TSMC米投資の課題と産業構造の盲点 地政学リスク下で探る新たな兆元産業の行方
秋最強の寒気到来 北東季節風が連続襲来、台湾北部で今季最低18度の見込み
トランプが過去最大に台湾に近づく瞬間!アジア歴訪を徹底解剖:ホワイトハウス復帰後初の東アジア訪問で、どの国を訪れるのか、各国の期待とは?
“ゆるやかな隣人”と暮らす住宅モデル『nears』、都市部で人気上昇
ロイヤルホストが「Royal Host Deli」新商品を発売 復刻ドレッシング&限定ハン
吉永小百合さん、第38回東京国際映画祭で「特別功労賞」 日本映画界を象徴する存在に栄誉、オープニング作品でも主演
東京国際映画祭「TIFFCOM 2025」開幕へ 若手の海外進出支援から日本アニメの国際展開まで
淡路島に台南の味を──楊百泓さんと妻・中尾美嘉子さんが「台南家」を築く、山と海と小吃で旅人の心を癒やす
日本のチームは「台湾のチーム」 中国の反発は必至か 政治学者「高市早苗氏は自ら火遊びの自覚なし」
ドジャース×ブルージェイズのワールドシリーズ進出記念 ファナティクスが公式グッズ販売開始 大谷翔平&山本由伸モデルも登場
USJ、「Best Attraction(Asia)」受賞 アジアを代表するテーマパークに