台湾の「新南向政策」は持続可能か 中国がASEANを深く取り込み米国を牽制——貿易協定をアップグレードし二国間関係を強化

ASEANと中国が「3.0」版の貿易協定に署名。(写真/AP通信)
ASEANと中国が「3.0」版の貿易協定に署名。(写真/AP通信)
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東南アジア諸国連合(ASEAN)はこのほど首脳会議を開催し、中国・日本・韓国も首脳級を派遣した。中国は李強・国務院総理の下、28日にASEANと強化版の自由貿易協定に署名。米国との通商対立が続くなか、域内での関係強化と利益確保を狙う。

《亞洲衛視》報道によれば、今回の協定は2002年の《ASEAN–中国自由貿易区協定(ACFTA)》の二度目の大型アップグレード。原協定は中国にとって初のFTAで、ASEANにとっても主要パートナーとの初のFTAで、2010年発効、前回の拡充は2014年9月に合意し2019年に承認された。

現行の「3.0」では、近年急成長するデジタル経済、グリーン経済、国際サプライチェーン連携を新たに組み込んだ。署名は中国の王文濤・商務部長と、ASEAN議長国マレーシアのアジズ投資貿易産業相が行い、李強総理とアンワル・マレーシア首相が立ち会った。

ASEAN議長国は2025年がマレーシア、翌年はフィリピンに引き継ぐ。加盟は東ティモールを含む11カ国。

名詞解釈:

ASEAN+3(ASEANの11カ国に中国・韓国・日本を加えた枠組み)——3カ国が首脳会合に参加するのは、ASEANと共同のパートナーシップを築いているため。地理的には、ASEANの11カ国にこの「+3」を合わせると、東アジアと東南アジアの大半を網羅する(中華民国、北朝鮮、モンゴルを除く)。

李強氏は、中国とASEANは「良き隣人・良き兄弟」で相互依存が深いと述べ、新協定で「経済・貿易協力を一段と拡大・強化できる」と強調。単独主義や保護主義で国際秩序が揺らぐ中、外部からの干渉が増しているとして、名指しは避けつつ米国を念頭に「根拠のない高関税の影響」を批判。「強権政治や経済的いじめに対しては、団結と自立を保ち、相互支援で正当な権利を守るべきだ」と訴えた。

東協三位夥伴關係成員代表:中國總理李強(左)、日本外務大臣茂木敏充與南韓總統李在明。(美聯社)
ASEANのパートナー出席者:李強・中国国務院総理(左)、茂木敏充・日本外相、李在明・韓国大統領。(写真/AP通信)
東協在東北亞三個重要夥伴,中、日、韓都派高層代表出席。(美聯社)
北東アジアの主要パートナーである中国・日本・韓国も高官を派遣。(写真/AP通信)
東協與中國簽訂新版本貿易協定。(美聯社)
ASEANと中国、新版の貿易協定に調印。(写真/AP通信)

李強氏は各国に対し、国際情勢の新たな動きを注視するよう呼びかけた。ユニラテラリズムや保護主義の台頭で国際経済・通商秩序が揺らぎ、ASEANへの外部干渉も強まっていると指摘した。

名指しは避けたものの、発言の矛先は米国とみられる。「根拠に乏しい高関税に多くの国が影響を受けている」と述べ、現状への不満をにじませた。

「いま私たちの発展は、かつてないリスクと挑戦に直面している。強権的な手法や経済的ないじめに抗するには、団結して立ち向かわなければならない。さもなければ、外部勢力に分断され、支配されるだけだ。状況が厳しさを増すときこそ、団結と自立を堅持し、相互に支え合って正当な権利を守る必要がある。」

中国 ASEANの通商実績

中国税関の統計では、中国は16年連続でASEANの最大貿易相手。2025年前3四半期の双方向貿易額は5.57兆人民元(約24兆円)で前年同期比9.6%増。ASEANの公表値では、域内総生産は3.9兆ドル(約589兆円)、2024年の対中二国間貿易は7710億ドル(約116.4兆円)に達した。

中国商務部は「3.0」が生産・供給網の深い統合を促すと説明する一方、北京は米国向けにレアアースなど重要鉱物の輸出制限も続け、自由貿易の旗と資源カードを併用している。

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