安倍晋三襲撃で「家の中の野党」は世界を失った 安倍昭恵さんが語る悔恨――政治をもっと語ればよかった、夫の幼少期の日記に涙

2025-10-29 17:55
(写真/安倍昭恵さんXより)
(写真/安倍昭恵さんXより)
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2022年7月8日、奈良市での街頭演説中に響いた銃声が、日本の最長政権を率いた安倍晋三氏の命を奪った。容疑者・山上徹也被告の公判が本日(28日)始まり、事件の衝撃はなお癒えていない。安倍氏の政治的遺産が霞が関の上空を覆うなか、この暗殺は三人の女性にも深い影を落としている。亡き夫の面影に「使命」を探す妻・安倍昭恵さん、家族を窮地に陥らせ信仰の枠組みに縛られ続ける被告の母、そして遺産を引き継ぎつつ「負の遺産」も背負う現首相・高市早苗氏である。

涙を流せない3年間:安倍昭恵さんの「使命」探求の旅

「3年間、感情を押し殺してきたため、ほとんど泣けなかった」。安倍昭恵さん(63)は毎日新聞の取材に、涙をにじませながらそう語った。2022年7月8日の朝は、いつもと変わらなかった。東京・富ケ谷の自宅で夫の安倍晋三氏、義母の安倍洋子さんと朝食をとり、夫は参院選の応援へ向かうため、笑顔で「行ってきます」と奈良へ出発。昭恵さんは掃除に取りかかったが、それが最後の別れになるとは思いもしなかった。

数時間後、事務所からの電話が日常を打ち砕く。「撃たれました」。震える女性職員の声。テレビには混乱する現場が映し出され、昭恵さんは無意識に「入院だろう」と考え、数日分の着替えを手に家を飛び出した。だが午後5時、奈良の病院で院長から「全力を尽くしました」と告げられ、初めて事態の重さを理解する。「晋三」と呼びかけて夫の手を握ると、わずかに握り返されたように感じたという。

その後の生活は、悲しみと責務に追われる長い儀式の連続だった。通夜、葬儀、国葬、山口県民葬へと続き、「政治家の妻」として自らに気丈さを課した。弔問客に冷静に応じる一方、涙もろい性格でありながら「思い切り泣けない」時間が続いたと振り返る。

(翻攝安倍昭惠X)
(写真/安倍昭恵さんXより再掲)

2024年、義母の洋子さんが逝去し、昭恵さんは思い出の詰まった富ケ谷の自宅を離れざるを得なくなった。遺品を整理する過程で、夫の子ども時代の日記が偶然見つかる。「日本のために働く」との意思がはっきり記され、小学校卒業時に同級生から贈られたカードには「将来は総理大臣に!」の文字。胸に秘めた夢は、やがて現実となった。

昭恵さんには深い悔いが残る。「『安倍さんが今も生きていれば』と言われるたびに、彼が日本の政治をどう見ていたのか、各国のリーダーとどう向き合っていたのか——もっと尋ねておけばよかった、と」。

かつて自らを「家の中の野党」と位置づけ、時に夫の政策に異を唱えることで、多様な意見の存在を示してきた。もっとも、それは形式的な範囲にとどまり、政治を正面から語り合う機会は多くなかったという。

「これからは一人です」。亡き夫のためにも、昭恵さんは日々「自分の使命は何か」を問い続けている。 (関連記事: 高市首相は「安倍カード」 李在明氏は金冠贈呈 トランプ訪アジアで日韓が見せた「贈り物外交」の真意 関連記事をもっと読む

その手がかりは意外な場所で見つかった。昭恵さんは、これまで携わってきた社会活動の一環として、刑務所や少年院での講話を続け、殺人犯と面会した経験もある。講演後に届いた手紙には「大罪を犯したが、どう償えばよいかわからない」とあった。その瞬間、昭恵さんは自らが「元首相夫人」ではなく「犯罪被害者の遺族」として語る意味を自覚したという。相手に寄り添いきれない局面でも、遺族だからこそ伝えられる言葉がある——そう感じた。

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