キヤノン、中国生産から撤退 「史上最高水準」の退職補償が注目集める

2025-12-12 18:11
キヤノンは、商用インクジェットプリンター「Gシリーズ」のラインナップを強化し、新たに「G6070」「G5070」「GM2070」を発表した。これらは、コンパクトサイズ、両面自動印刷、大容量給紙、そして有線・無線ネットワーク対応を備え、非常に高い印刷量を最も経済的なコストで提供する。(写真/キヤノン提供)
キヤノンは、商用インクジェットプリンター「Gシリーズ」のラインナップを強化し、新たに「G6070」「G5070」「GM2070」を発表した。これらは、コンパクトサイズ、両面自動印刷、大容量給紙、そして有線・無線ネットワーク対応を備え、非常に高い印刷量を最も経済的なコストで提供する。(写真/キヤノン提供)

日本の大手メーカー、キヤノン(Canon)が中国の生産ラインから撤退するという驚きのニュースが伝えられた。広東省のキヤノン中山プリンター工場が2025年11月21日に正式に閉鎖され、このニュースはすぐに中国のSNSで話題になった。しかし、注目を集めたのは工場の閉鎖そのものではなく、キヤノンが提示した「史上最高の補償金」だった。約1400人の従業員が笑顔で退職し、振込明細をSNSで公開。中には一度に80万人民元(約1,720万円)を受け取った人もいた。

中山工場はかつて世界最大のプリンター生産拠点の一つだった ピーク時には32億人民元(約688億円)の売上を誇った

報道によると、キヤノン中山工場は2001年に設立され、長らくキヤノンのグローバルなプリンター生産拠点として重要な役割を果たしていた。2022年には工業生産額が32億人民元(約688億円)に達するなど、規模は非常に大きかった。しかし、ここ数年で世界のプリンター市場が縮小し、中国の国産ブランドが急速に台頭、オフィスのペーパーレス化が進んだことにより、プリンターの需要が減少。この3つの要因が重なり、事業運営に大きなプレッシャーを与えた。

競争と市場環境の変化でキヤノンの中国市場での売上は低下し、工場の従業員も最大3300人から約1400人に縮小。結局、事業の再編成を余儀なくされ、工場閉鎖が発表された。

2.5N+1という「超優遇補償」で、長年勤務した従業員は88万元を手にした

最も話題になったのは、キヤノンが提示した驚異的な補償金だった。

補償の計算式は「2.5N+1(Nは勤務年数)」

この金額は中国の『労働契約法』でよく見られるN、N+1、2Nなどの計算式を大幅に上回っており、ほぼ「追加の追加」だと言える。例えば、勤務年数が10年の場合、従業員は26か月分の給与を一度に受け取ることになる。

ネット上には従業員の振込明細が多くアップされており、ある従業員は63万元(約1,350万円)を受け取ったことを報告。さらに20年以上勤務したベテラン組長は88万元(約1,900万円)を受け取ったと報告している。

日本企業の「優しい退職手続き」で、従業員は笑顔で退職

キヤノンは単に金銭的な補償を提供するだけでなく、従業員のその後の転職活動にも積極的にサポートを行い、まるで「日本らしい細やかな配慮」を示した。この一連の手続きは中国のネットユーザーから「誠意溢れる退職処理」と高く評価されている。

1. 退職前に感謝の気持ちを込めた「送別会」を開催

従業員が式典的な感覚で別れを告げることができ、陰鬱な気持ちで退職せずに済んだ。

2. 人事部門が一人ひとりの特技を把握し、次のキャリアに向けたアドバイスを行う

従業員一人ひとりのキャリア方向性を確認し、個別に適した転職先を紹介。

3. 外部企業による求人イベントの開催

従業員が次の職場にスムーズに移行できるよう支援。

4. 代表取締役自らが推薦状を書いて提供

多くのベテラン社員が自らの推薦状を披露し、「上司が手書きで書いた推薦状なんて、思ってもみなかった」と称賛。

これらの手続きは、いわゆる「日本企業の退職処理」として、賠償金の手厚さだけでなく、退職後のサポートが細やかであることが示され、多くの中国ネットユーザーから「補償金が厚い、処理が丁寧、企業はこうあるべきだ」と称賛されている。「内地の企業もキヤノンを見習うべきだ」という声も少なくない。

プリンターの黄金時代は終わり、キヤノンの撤退は業界の縮小を象徴

キヤノン中山工場の閉鎖は、単なる企業の運営変更ではなく、世界のプリンター市場の黄金時代が終わりを告げたことを象徴している。需要の急減、国産製品の台頭、AIとデジタル化の進展が産業の転換点となり、キヤノンもその流れを止めることができなかった。会社は「従業員に最小の損害を与える方法で」工場を閉鎖することを選択し、この決断はブランドイメージを保ったまま行われた。

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編集:田中佳奈

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