世界的に地政学リスクが高まり、防衛テクノロジーへの需要が急速に拡大する中、無人機(ドローン)は各国の軍事・安全保障体制において不可欠な存在となっている。こうした状況を背景に、台湾の無人機メーカーである銘旺科技(銘旺科技、証券コード:2429)はこのほど、ウクライナに招かれ、戦場環境での実地テストを実施することになった。これは同社の事業展開における重要な節目であると同時に、台湾の無人機産業が欧州防衛サプライチェーンの中核へと段階的に入りつつあることを示している。
今回の実戦テストの契機となったのは、銘旺科技が先ごろ台湾・ポーランド商業協会の仲介を通じ、ポーランドの代表的な無人機システム関連団体と産業協力に関する覚書(MOU)を締結したことにある。協力は技術交流にとどまらず、短期間で実戦検証の段階へと進展しており、欧州防衛システムにおける台湾製無人機技術への関心と信頼が明確に高まっていることを示している。
地域安全保障の枠組みから見ると、ポーランドはNATO東翼に位置し、長年にわたりウクライナ支援の重要な兵站・技術拠点としての役割を担ってきた。銘旺科技にとって、ポーランドの産業体系を通じて欧州市場に参入することは、単一市場への進出にとどまらず、欧州防衛サプライチェーン全体への戦略的な入口を意味する。

ポーランド現地の産業団体による推薦と後押しを受けることで、銘旺科技の製品は実戦環境という高い基準のもとで直接検証を受けることが可能となった。この流れは、欧州の防衛調達が従来の価格重視から、サプライチェーンの信頼性、技術統合能力、長期的な協力の安定性を重視する方向へと移行している現状を反映している。
現代の戦場では、単一の性能指標よりも、高度な妨害や不確実性の高い環境下でシステムが安定して機能するかどうかが重視される。今回銘旺科技が実戦テストに投入した機体の最大の強みは、まさにそのシステム統合能力にある。
同社が独自に開発したAI飛行制御、AI追尾機能、高度な自律飛行システムは、モジュール化設計を採用しており、欧州で既に運用されている地上管制システムとの統合運用が可能だ。測位信号が妨害を受けやすい戦場環境においても、慣性航法技術を組み合わせることで、任務の安定性と精度を維持できる点は、現在の欧州防衛当局が強く関心を寄せる実務的ニーズと合致している。
業界関係者は、今回の動きが台湾の無人機産業が従来のハードウェア製造中心の位置付けから、システムソリューションおよび高付加価値アプリケーションへと明確に転換しつつあることを示していると分析する。
銘旺科技は空中無人機にとどまらず、複数の無人プラットフォームを統合する分野にも積極的に取り組んでいる。今回のテスト対象機は、主に国境防衛や非対称戦への応用を想定しており、今後は無人艇と組み合わせた海空連動型の作戦モデルの構築も計画している。
こうした動向は、ポーランド無人載具システム協会や現地企業の注目を集めており、双方は現地生産や製造協力の可能性について協議を進めている。欧州防衛システムがサプライチェーンの安全性と現地化生産を重視する傾向を強める中、台湾企業が信頼できる技術・システムパートナーとして位置付けられれば、長期的な産業連携の深化につながるとみられる。
市場では、ウクライナでの実戦テストが順調に進めば、将来的に数千台規模の受注につながる可能性があるとの見方も出ており、銘旺科技の中長期的な業績にとって追い風になると期待されている。ただし、業界がより注目しているのは、その象徴的な意味合いだ。
欧米が防衛サプライチェーンの再構築を進め、「非レッド・サプライチェーン」を模索する戦略的背景の中で、今回の実戦テストは、台湾の無人機産業が単なる技術供給者から、国際防衛システムの一角を担う存在へと歩みを進めていることを示している。
ポーランドからウクライナへ、研究開発・試験から実戦検証へと展開する銘旺科技の動きは、台湾のハイテク産業が世界の安全保障産業チェーンに参画し、国際市場を切り拓いていく過程を象徴する事例といえる。
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編集:梅木奈実

















































