秋田県知事が語る「自衛隊派遣」に踏み切った理由と「新世代クマ」の脅威 人里で相次ぐクマ襲撃、秋田で何が起きているのか

秋田県の鈴木知事は外国特派員協会で会見し、過去最悪のクマ被害を受けて自衛隊派遣に至った経緯を説明するとともに、自治体のみでの対応は限界があるとして国による主体的かつ広域的な支援を訴えた。(写真/FCCJ提供)
秋田県の鈴木知事は外国特派員協会で会見し、過去最悪のクマ被害を受けて自衛隊派遣に至った経緯を説明するとともに、自治体のみでの対応は限界があるとして国による主体的かつ広域的な支援を訴えた。(写真/FCCJ提供)

日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見を行った秋田県の鈴木健太知事は、今年度県内で発生した記録的なクマによる人身被害の実態と、それに対応するために自衛隊の災害派遣要請に踏み切った経緯について説明した。

秋田県の鈴木知事は外国特派員協会で会見し、過去最悪のクマ被害を受けて自衛隊派遣に至った経緯を説明するとともに、自治体のみでの対応は限界があるとして国による主体的かつ広域的な支援を訴えた。FCCJ
秋田県の鈴木健太知事は外国特派員協会で会見し、過去最悪のクマ被害を受けて自衛隊派遣に至った経緯を説明するとともに、自治体のみでの対応は限界があるとして国による主体的かつ広域的な支援を訴えた。(写真/FCCJ提供)

鈴木知事は、秋田県内での今年の人身被害が66件に上り、そのうち4名が死亡したことを明らかにし、特に市街地中心部や住居内での襲撃など、住民の生活圏で被害が相次いでいる現状を報告した。10月をピークとする被害の拡大に伴い、県内での目撃件数は1万3000件を超え、住民の不安がかつてないほど高まっているとした

被害拡大の背景について、鈴木知事は、餌となるブナの実が今年は大凶作であったことに加え、人口減少により里山の緩衝地帯から人の気配が消えたことでクマの生息域が拡大したことを挙げた

また、人を恐れない「新世代クマ」が増加しており、過去の大量出没時に人や街を恐れる必要がないと学習した個体が増えた可能性を指摘した。県内には推定で2800頭から6000頭のクマが生息しているとされ、有害駆除数は一昨年の2000頭を超えるペースで推移しているが、地元猟友会の高齢化とハンターの減少により、現場の対応力は限界に達していたと説明した

こうした状況を受け、秋田県は10月28日に防衛省へ自衛隊の派遣を要請した。派遣期間は11月30日で終了しており、期間中に延べ900人以上の隊員が罠の運搬や設置、見回りに伴う輸送などの後方支援に従事した

鈴木知事は、自衛隊の本来の任務は国防であり、地域の鳥獣被害への対応は例外的措置であるとの認識を示しつつも、今回は他に手段がない緊急事態であったと強調した。この要請は、地方自治体のリソースだけでは対応が不可能であることを国に示す「シグナル」でもあったとし、その結果、国による対策パッケージの策定や規制緩和などの迅速な動きにつながったと評価した

今後の対策として、鈴木知事は、クマと人の生活圏を明確に区分するゾーニングの徹底や、放置された柿や農作物の除去による環境整備、捕獲圧を高めることによるクマへの学習効果を狙う方針を示した

また、クマの個体群は県境を越えて移動するため、各自治体単独での対応には限界があるとし、国レベルでの広域的かつ主体的な対応が必要であると訴えた。冬眠期に入るため直近の被害は沈静化すると見込まれるが、来春以降に向けた体制づくりと、自治体職員としてハンターを採用する「ガバメントハンター」の拡充など、持続可能な対策の構築が急務であるとした

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編集:小田菜々香

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