クマ被害急増の真因は「エネルギー革命と森の回復」 横山真弓教授が指摘「日本の生息密度は欧米の10倍以上」

横山真弓教授は、日本のクマ被害急増はエネルギー革命後の森林回復によって生息密度が欧米の10倍以上に達したことが主因であり、特に東日本ではまず個体数を減らす対策が不可欠だと指摘した 。(参考写真:FPCJ)
横山真弓教授は、日本のクマ被害急増はエネルギー革命後の森林回復によって生息密度が欧米の10倍以上に達したことが主因であり、特に東日本ではまず個体数を減らす対策が不可欠だと指摘した 。(参考写真:FPCJ)

日本でクマ被害が増加する背景を解説 FPCJが横山真弓・兵庫県立大学教授を招きオンライン説明会

横山真弓教授は、日本のクマ被害急増はエネルギー革命後の森林回復によって生息密度が欧米の10倍以上に達したことが主因であり、特に東日本ではまず個体数を減らす対策が不可欠だと指摘した 。FPCJ
横山真弓教授は、日本のクマ被害急増はエネルギー革命後の森林回復によって生息密度が欧米の10倍以上に達したことが主因であり、特に東日本ではまず個体数を減らす対策が不可欠だと指摘した 。(参考写真:FPCJ)

兵庫県立大学自然・環境科学研究所の横山真弓教授は12月12日、フォーリン・プレスセンター(FPCJ)で「日本でクマ被害が増えたのはなぜ?」と題したブリーフィングを行った。横山教授は、近年のクマ被害急増の背景には、戦後のエネルギー革命による日本の森林環境の劇的な変化があると指摘。一部地域では生息密度が欧米の10倍以上に達しており、「もはや共存できるレベルの生息数ではない」として、個体数管理の重要性を訴えた。

「ハゲ山」から「豊かな森」へ 

横山教授はまず、明治末期から昭和中期にかけての日本の里山の写真を提示し、かつての日本の山林の多くが、木材資源の過剰利用により「ハゲ山」や草原状であった事実を紹介した。明治時代、木材は主要なエネルギー源であり、日々の煮炊きや風呂、暖房、さらには農業用肥料(刈敷農業)や鉱山開発のために森林資源は徹底的に利用されていた。

転機となったのは1960年代の「エネルギー革命」だ。電気・ガス・水道や化石燃料が普及したことで、薪炭林としての森林利用が一斉に放棄された。加えて植林活動が進んだ結果、現在の日本は国土の約7割を森林が占めるに至った。横山教授は「人間が木材を使わなくなったことで、日本の森林は平成・令和にかけて大変豊かな広葉樹の森へと回復した。これは野生動物にとって生息地が拡大・回復したことを意味する」と説明した。

西日本の対策と東日本の遅れ 

クマの生息数管理について、横山教授は西日本と東日本の対応の差を指摘した。西日本では保護政策を経て早い段階から個体数増加の兆候を捉え、5〜10年前から「管理捕獲(増えた分を取り除く)」を進めてきた。 一方、東日本では個体数調査が遅れ、「増えているのか減っているのか判断がつかない」状況が長く続いたという。その結果、直近2年間で捕獲数が激増。横山教授は「今年の被害が深刻化した最大の要因は、個体数が激増していることにある」と分析し、捕獲数と死傷者数の相関関係を強調した。

「共存」か「駆除」か

質疑応答では、海外メディアから「クマを殺すのではなく、共存できる方針はないのか」との質問が上がった。 これに対し横山教授は、「日本はずっとクマを守り続けてきたが、その結果、数が増えすぎてしまった」と回答。欧米諸国のデータと比較し、日本のクマの生息密度は場所によっては「10倍以上の高密度な状況」に陥っていると指摘した。その上で、「今年被害が深刻だった地域は、共存できるレベルの生息数ではない。東日本ではまず数を減らすしか方法がない」と述べ、危機的な現状を訴えた。

求められる「プロの捕獲体制」 

また、日本の野生動物管理システムの問題点として、狩猟者の高齢化とスキル依存についても言及された。現在のハンターは個人の研鑽に委ねられており、危険回避などの専門的な訓練体系が確立されていない。横山教授は「専門的な捕獲体制(プロフェッショナルな管理システム)」の構築が必要であるとし、学会等でも議論を進めていく方針を示した。

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