アメリカの制裁対象となったプリンス・ホールディング・グループが、台湾で展開していたギャンブル事業について、検察が相次いで捜査に乗り出している。同グループがパラオで不動産を取得する際、仲介役を務めたとされる台湾人3名も召喚を受けた。問題の土地取引は、香港・マカオの元大物ギャング、尹国駒(ユン・グオクウ、通称「崩牙駒」)の紹介によるものとされる。尹はすでに5年前、アメリカの経済制裁を受けている人物だ。彼の弟子で、マカオのサンシティ・カジノを率いた周焯華(アルヴィン・チャウ)も2021年末に拘束され、周が率いた「サンシティ・インターナショナル」は台湾でオンラインゲーム事業を展開していた。
台湾でプリンス・グループが保有していた資産は、次々と検察によって差し押さえられている。なかには、台北市和平東路の高級マンション「和平大苑」地下駐車場に止められていた高級スポーツカーも含まれる。だが、台湾当局の調査が始まったのは、アメリカが制裁を発表してから半月後。すでに関連企業「天旭国際科技」の関係者は退去しており、現場には使われなくなったコンピュータ機器だけが残されていた。
「KK詐欺拠点」の原点 パラオに洪門経済特区を構想
プリンス・グループだけが制裁対象ではない。尹国駒は2020年、アメリカ財務省のブラックリストに追加された。彼はミャンマー北部の少数民族組織「カレン民族同盟(KNU)」と提携し、香港上場企業「環亜国際」を通じて工業団地の建設を進めた。この団地こそ、後に国際的な詐欺拠点として知られる「KK園区」の原型とされる。米国政府は、尹が麻薬取引や違法賭博、詐欺、人身売買に関与し、ミャンマーのミョワディ地区にある「東美投資グループ」と連携していると非難しているが、本人は人身売買疑惑を否定している。
報道によると、尹は2018年、台湾の友好国パラオで「洪門経済特区」構想を掲げ、暗号通貨「洪幣(Hong Coin)」を発行。当時のトーマス・レメンゲソウ大統領とも会談していた。プリンス・グループはその後、パラオ空港近くのコロール港やレーダーステーションを99年間リース契約し、米軍施設からわずか数百メートルの距離に拠点を確保。この取引に関与した3人の台湾人社員が、アメリカの制裁リストに加えられた。グループをパラオへ導いた人物が、尹国駒であったとされる。

弟子の周焯華は詐欺で逮捕 帝国グループ傘下で再編進む
国連薬物犯罪事務所(UNODC)が今年9月に発表した最新報告書では、尹国駒とその三合会組織「14K」がカンボジアのオンラインカジノと密接に関係していると指摘されている。報告書には、服役中の「洗米華」こと周焯華や、カンボジアの有力実業家でフン・セン首相の盟友である符国安(Kok An)との関連も明記された。報告によると、これらの国際犯罪ネットワークは合法企業を装い、経済特区のデジタルIDシステム開発を利用して詐欺拠点を構築したという。

尹と周が相次いで摘発された後、サンシティ・インターナショナルは2021年末に「帝国金融グループ(Imperial Finance Group)」へ改名。周の逮捕後は、元妻の楊素梅氏の夫である鄭丁港氏が経営の実権を握り、現在は「帝国グループ・グローバル」および「帝国テクノロジー・グループ」を運営している。傘下には不動産、競馬、鉱業、サッカー、エンタメ、ギャンブル関連事業が並ぶ。
興味深いのは、「帝国金融グループ」へ改称後も、同グループが台湾で展開するオンラインゲーム代理事業はほとんど影響を受けていない点だ。鄭丁港氏が代表を務めていた「フェニックス・デジタル・エンターテインメント」や「セブン・エレメント・ゲーム」では、MMORPG『カエサル』や『7 SENSE』などを配信しており、現在の台湾責任者は邱澤峯氏とされる。
マカオの裏社会から派生したギャンブルネットワークが、国際投資とテクノロジーを装って再編され、いまも台湾を舞台に姿を変えつつ息を続けている。
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