ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2025秋、AI時代の映像表現と国際交流が融合した5日間

生成AI映画『インぺリア』アジア初上映から国際会議まで全日程が終了

米国アカデミー賞公認のアジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア（SSFF & ASIA）」は、2025年10月22日から26日にかけて、東京都と共催で秋の国際短編映画祭を開催した。赤坂インターシティコンファレンス、東京都写真美術館ホール、LIFORK HARAJUKUなど複数会場を舞台に、生成AIによる映画制作、国際マーケット戦略、クリエイター同士の交流、女性監督の視点、グローバルな映像文化の共有、そして創造性と倫理をめぐる未来への対話が交錯する5日間となった。

2025年10月23日には、東京都写真美術館でドイツの作曲家・映画監督マルセル・バルソッティによるSFショートフィルム『インぺリア（Imperia）』のアジア・プレミア上映が行われた。本作は脚本を起点に映像デザイン、キャラクター造形、編集、音響、Dolby 5.1ミックスに至るまで100％生成AIによって制作された36分の作品であり、トロント国際平和映画祭で名誉トリビュート映画賞を受賞、今後も東京、ローマ、ユタ、パリなど世界各地での上映が予定されている。

上映後のトークには共同脚本を務めた妻のグンドゥラ・バルソッティ＝バスト氏も登壇し、監督は「AIは単なるツールではなく、新しい芸術的挑戦そのもの」と語った。バルソッティ＝バスト氏は「膨大なアイデアからテーマに適した要素を選び、人間の感情を保つことを意識した」と述べ、観客からは「AIと人間の協働の在り方を考えさせられた」という声が寄せられた。

同日には若手クリエイター向けのセミナー「ショートフィルムと国際マーケット：作品の価値を広げる戦略」も開催され、海外マーケットでの売買経験を持つ磯山亜希氏がマーケットプレースや商談プロセス、契約事項を解説し、人気作品の具体例を紹介した。映画祭プロデューサー阿部龍太郎は「LIFE LOG BOX」を紹介し、次世代プラットフォームの可能性に言及。フェスティバルディレクター武笠祥子は国際映画祭とマーケットの構造を解説し、グローバル展開を目指す制作者への指針を示した。講義の内容は後日アーカイブ配信される予定となっている。 （関連記事： ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2025開幕へ　菅井友香主演作が世界初公開、アカデミー賞候補短編も上映 ｜ 関連記事をもっと読む ）

10月24日には、元Amazon Studios日本代表としてグローバル市場に精通する早川敬之氏を招いた特別セミナーとクリエイター交流会が実施された。早川氏は日本コンテンツの独自性や市場ごとの特性、資金調達の現実、劇場公開と配信の選択肢、グローバル基準と日本の感性を融合させたエンターテインメント制作の方法論を語った。その後の交流会には海外監督や国際会議登壇予定のAI専門家らも参加し、映画文化とテクノロジーに関する意見交換が行われた。映画祭側は「LIFE LOG BOX」におけるDID／VC（デジタル証明書）機能の発行開始を発表し、Web3.0時代におけるクリエイター支援の形を提示した。

10月25日、赤坂インターシティコンファレンスでは上映やQ&Aが行われ、会場ロビーにはソニーブロックソリューションズラボ、しまうま劇場、イマーシブラボの体験ブースが登場し、しまうま劇場からは看板女優・水瀬紗彩耶氏が来場した。ノンストップ上映ではBriah March監督の『いないないばぁ』（ニュージーランド）、Moara Passoni監督の『母は牛だった』（ブラジル）、Putri Sarah Amelia監督の『オトナの不調』（インドネシア）が上映され、各監督が女性視点による表現や制作背景を語った。イベントの締めくくりには菅井友香主演の“Yuuka Sugai Short Stories”2作品が世界初公開され、菅井氏と孫明雅監督、松尾巧監督によるトークが行われ、多くの観客が詰めかけた。

10月26日には「AIと映像制作の未来」をテーマとする国際会議が赤坂インターシティコンファレンス the air で開催され、マルセル・バルソッティ氏（独）、グンドゥラ・バルソッティ＝バスト氏（独）、Shin Chul氏（韓）、Hussein Dembel Sow氏（セネガル）、Takeshi Kushida氏（日本）、Alexandre Michelin氏（仏）、Douglas Montgomery氏（米）、Oscar Parres氏（墨）、Javid Sobhani氏（イラン）、Hiroki Yamaguchi氏（日本）ら10名の専門家が登壇した。

議論は「AIは芸術的パートナーかツールか」という問いから始まり、串田壮史氏が「AIは共同制作者となり得る新しい教師」と語り、バルソッティ監督は『Imperia』制作を例に「これはテクノロジーではなく新しい芸術の形」だと発言した。シン・チョル氏は「AIは共有言語であり、評価から対話の時代に入った」と指摘し、倫理セッションでは著作権や開示をめぐり意見が交錯した。ソブハニ氏が「透明性が信頼の鍵」と述べた一方、串田氏は「神秘性を損なわないため開示不要の場合もある」とした。デンベル・ソウ氏は「資金難地域にも制作環境を開く」と述べ、パレス氏は「効率化と感情の断絶への注意」を促した。モントゴメリー氏は「映像作品の爆発的増加の中で、価値ある作品を発見する力が鍵となる」と総括し、最後にモデレーターの東野正剛氏が「倫理と多様性がAI時代の映像芸術を支える柱となる」と締めくくり、フォトセッションで幕を閉じた。

SSFF & ASIA 2025秋の国際短編映画祭は、生成AIによる新たな映像表現の可能性、国際マーケットにおける作品価値の拡張、クリエイター間の交流と共創、映画制作をめぐる創造性と倫理の議論を通じ、映像文化の未来を見据える舞台となった。映画とテクノロジー、芸術と市場、個人と国際社会が交わるこの映画祭は、次なる時代の映像芸術の方向性を提示する5日間となった。

編集：柄澤南 （関連記事： ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2025開幕へ　菅井友香主演作が世界初公開、アカデミー賞候補短編も上映 ｜ 関連記事をもっと読む ）

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