10月15日、東京・有楽町の外国特派員協会(FCCJ)でディープダイブシリーズ「Japan’s Economy and Markets Under Takaichi?(高市政権下の日本経済と市場)」が開催された。登壇したのは、アモーバ・アセット・マネジメントのチーフ・グローバル・ストラテジストであるフィンク直美氏、マネックスグループのエキスパートディレクターで日本カタリストファンド投資委員のイェスパー・コール氏、そして『The Contest for Japan’s Economic Future』の著者である経済ジャーナリストのリチャード・カッツ氏。
司会のアントニー・ローリー氏は冒頭、「自民党の高市早苗総裁誕生が市場の期待を呼び、日経平均を押し上げた」と述べ、三氏による分析が始まった。
フィンク直美氏:金融政策の修正が高市政権の“試金石”に
フィンク氏はまず、アベノミクス初期と現在の経済構造の違いを指摘した。「2012年12月当時と比べて、インフレーションの構造や企業利益、失業率など、経済環境は大きく変化している」と述べ、失業率が当時の4%から現在は2〜3%に低下し、企業収益も回復傾向にあると分析。一方で「物価上昇が家計にどれだけ受け止められているか」を慎重に見極める必要があるとした。
また、円安とインフレ率の推移を示しながら「日本銀行は依然として緩やかな姿勢を維持しており、目標達成には時間を要する」と説明。「今後の金融政策の軌道修正が高市政権の最初の大きな試金石になる」と指摘した。
財政面については、「日本の債務水準は高く、さらなる財政出動はリスクを伴う」としつつも、「成長のためには企業セクターの代謝を促し、国家のチャンピオン企業を育てる税制改革が必要」と強調。特に「40年に及ぶ自民党体制が農業の効率化を妨げてきた」とも批判した。
イェスパー・コール氏:政策を動かすのは“官僚機構”
コール氏は、日本の政治構造を「過大評価されがち」と指摘し、「実際に政策を動かしているのは、強固な官僚機構だ」と述べた。「改革は危機のときに進む」とした上で、「現在の日本は危機の段階にはないが、高市政権が金融政策を誤れば、グローバルな信頼を損なう危険がある」と警鐘を鳴らした。
さらに、国内投資家の変化に注目。「コーポレート・メタボリズム(企業代謝)が進み、ガバナンス改革の圧力が強まっている。国内機関投資家が変化の原動力となっている」と述べ、資本市場の自律的進化に期待を寄せた。
リチャード・カッツ氏:「成長の果実」が市民に届いていない
カッツ氏は、「ポートフォリオ投資家にとって日本市場は魅力的だが、日本国民の生活水準はこの35年で実質的に低下している」と指摘。「アベノミクスや高市政策の成果が一般市民に届いていない」と批判した。その上で、「日本は成長のために国際的な競争を維持しつつ、包摂的な(インクルーシブ)成長を目指すべきだ」と提言した。
「タカイチノミクス」はどこへ向かうのか
質疑応答では、参加者から「高市政権が金融目標を掲げているか」「次期首相としての可能性」などが議論された。
フィンク氏は「現状では選挙後に方向性が変わる可能性がある」と述べ、コール氏は「高市氏は右派的・ナショナリスティックな傾向を持つが、官僚機構との協調が鍵になる」と分析。カッツ氏は「市場は彼女の首相就任に約6〜7割の確率を織り込みつつあるが、不確実性は依然として高い」と結論づけた。
編集:梅木奈実 (関連記事: 日経平均が史上初の5万円超え!謝金河氏が明かす「狂気株」急騰で日本人驚愕 | 関連記事をもっと読む )
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