公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)は2025年10月31日、オンライン・プレス・ブリーフィングを開催し、出入国在留管理庁政策課長の菱田泰弘氏、同庁政策課調整官の山形雅宏氏、厚生労働省人材開発統括官付海外人材育成担当参事官室参事官の高松利光氏が登壇した。「外国人材の受け入れ—育成就労制度の運用開始に向けた取組み」をテーマに、制度の趣旨と具体策について説明が行われた。
冒頭、菱田氏は、少子高齢化と人口減少が進むなかで外国人労働者の役割が一段と重要になっていると述べ、労働力不足への対応としてDXやAIによる生産性向上、女性・高齢者の就労促進を進めつつ、国際的な人材獲得競争において「外国人から選ばれる国」を目指す必要があると強調した。
続いて、2024年6月成立の改正入管法により、技能実習制度に代わる新たな「育成就労制度」が創設され、2027年4月に運用を開始する予定であることを紹介した。制度の目的は「人材育成と人材確保の両立」であり、外国人が3年間の就労を通じて特定技能1号相当の技能を習得し、キャリアアップにつなげる仕組みと説明した。
現行の技能実習制度については、制度目的と実態の乖離、権利侵害の懸念、キャリア形成の難しさなどが指摘されてきたとし、新制度ではこれらの課題を抜本的に見直す方針を示した。改正法は、技能実習を発展的に廃止し、外国人労働者としての権利性の向上や、関係機関の要件適正化を図る内容となっている。
制度の概要では、対象分野を特定技能制度と原則一致させ、育成就労から特定技能1号への円滑な移行を可能にすることで、キャリアの道筋を明確化するとした。加えて、これまで原則認められてこなかった転職についても、一定の要件を満たす場合には本人の意思による転職を認めると説明し、魅力ある制度設計によって長期的な人材確保を図る考えを示した。
関係機関の新体制としては、外国人技能実習機構を改組し「外国人育成就労機構」を設置する。管理団体に代わる「管理支援機関」が企業と労働者を橋渡しし、監査機能を担う。さらに、悪質な送り出し機関の排除に向け、原則として送り出し国政府との二国間取決め(MOC)のある国からのみ受け入れる方針を明らかにした。
費用面では、外国人が送り出し機関に支払う費用の上限を設定する。来日前に支払う費用は「就労予定月額賃金の2か月分以内」とし、上限を超える場合は育成就労計画の認定取消しの可能性があるとした。あわせて、送り出し機関には徴収基準のインターネット公表を求め、過去5年以内に不正な利益供与がないことなどを要件として加える。
日本語教育については、育成就労開始前にA1相当の日本語能力を求め、就労期間中にA2水準の講習を100時間以上受講できる機会を設ける。認定日本語教育機関や登録日本語教員による講習が条件を満たす場合はオンライン受講も可能とする経過措置を設け、双方向のコミュニケーションが確保された学習を求める。
最後に、対象分野の拡大にも触れた。特定技能の16分野に3分野を追加して19分野とする方向で検討が進んでおり、このうち17分野を育成就労の産業分野として設定する見通しだとした。
質疑応答では、地域社会との共生に関する質問に対し、山形氏が、地方公共団体と連携して相談窓口の設置などを通じた支援を進めていると説明した。排外的風潮をめぐる問いには、政府としてゼノフォビアは好ましくないとの立場を示し、外国人が日本のルールを理解できるよう情報提供を強化する一方、違反行為には毅然と対応する姿勢を示した。会見は、外国人が安心して働ける環境整備が日本社会の持続的成長につながるとの認識で締めくくられた。
「育成就労制度」2027年4月運用開始へ 外国人材受け入れの新たな枠組みが本格始動
説明資料によれば、出入国在留管理庁は2024年6月成立の入管法等改正を受け、技能実習に代わる新たな「育成就労制度」を創設し、2027年4月1日の運用開始に向け準備を進めている。新制度は、外国人が3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を身に付けることを狙いとし、人手不足分野での持続的な人材確保と、外国人のキャリア形成支援を両立させる枠組みとなる。
日本に在留する外国人数は令和6年末で約376万8,977人、総人口比は3.04%に達した。このうち外国人労働者は230万人を超え、「技能実習」「特定技能」などの在留資格による就労が大きく増加している。地域経済や産業の維持において、外国人材の役割が一段と重みを増しているのが現状だ。
政府は、少子高齢化に伴う深刻な人手不足を背景に、受け入れ政策の再構築を進めている。従来の技能実習では、研修名目の実質労働や転職制限に起因する人権上の課題、目的と実態の乖離が指摘されてきた。新制度はこうした問題の是正を図り、透明性と実効性の高い枠組みを整えることを目標に据える。
育成就労は技能実習と特定技能の中間に位置づけられ、両制度の連続性を明確化する。受け入れ分野は原則として特定産業分野と一致させ、3年間の就労を通じて日本語能力と実務技能を習得。一定の要件を満たした場合には、特定技能1号・2号への移行を可能とし、日本でのキャリア形成と長期定着につなげる。
転籍については、これまで「やむを得ない場合」に限られていた制限を緩和する方向だ。同一の職種・業種で一定期間勤務した場合、本人の意思による転籍を認める案が検討されており、労働環境の改善やミスマッチ解消への効果が見込まれる。
制度の実効性を担保するため、政府は新たに「外国人育成就労機構」の設置を予定する。同機構が受入れ機関や管理支援機関の監督・指導を担い、悪質な送り出し機関の排除を進める。受け入れは原則として二国間の覚書(MOC)を締結した国・地域に限定し、透明性と信頼性の確保を図る。
費用負担の透明化も重視する。来日前に送出し機関へ支払う費用の上限を「就労予定月額賃金の2か月分以内」と定め、上限超過が確認された場合は育成就労計画の認定取消しの対象とする。あわせて、送出し機関には徴収基準のインターネット公表を義務付け、不正抑止を強化する。
日本語教育体制の強化も柱となる。入国前にA1相当の講習を100時間以上受講することを求め、入国後はA2水準の教育機会を提供する。講習はオンラインも可とするが、双方向の会話機能を備えることを条件とする経過措置を設ける。
対象分野は、特定技能19分野のうち17分野を想定。介護、建設、農業、製造、外食、宿泊など幅広い業種を含む。今後は地方自治体や産業界との連携を強め、地域での共生社会の実現を目指す。政府は「外国人が安心して働き、地域社会の一員として生活できる環境づくりを推進する」としており、制度の円滑な移行と定着に向け、関係省庁が連携してガイドライン策定を進めている。
編集:田中佳奈