公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)は9月30日、オンライン記者ブリーフィングを開催し、関西国際大学客員教授の毛受敏浩氏が「外国人材の受け入れ拡大に動く日本」と題して講演した。長年にわたり外国人政策を研究してきた毛受氏は、人口減少が急速に進む日本において、外国人受け入れが不可欠である一方、制度設計や社会の受け止め方に大きな課題が残っていると指摘した。
毛受氏は冒頭、日本に在留する外国人が2024年末時点で377万人に達し、総人口の約3%を占めると説明。一方で、日本人の減少は年間94万人に上り、近く100万人規模に達するとの見通しを示した。「日本は歴史的な人口大変動の時代に突入している」と強調し、外国人の増加は今後20年で600万人規模に達し、2040年代には人口の1割を占めるとの予測を示した。
産業別に見ても依存度は高まっている。農林業では2014年に119人に1人だった外国人労働者が、2024年には31人に1人となり、建設業でも246人に1人から27人に1人へと急増した。毛受氏は「日本人の若者が減少する一方で、外国人労働者が不可欠になっている」と述べた。さらに、留学生が週28時間まで就労可能である日本独自の仕組みを指摘し、「学びながら働く留学生が労働力として期待されている」と語った。
政策面では、2018年の入管法改正で創設された「特定技能」制度を転機と位置づけ、技能実習制度に代わる形でブルーカラー分野の労働者を正面から受け入れる方針が打ち出されたことを紹介。さらに、日本語教育推進法や「共生社会の実現に向けたロードマップ」が策定され、外国人を一時的滞在者ではなく定住を前提に支援する方向性が示されたと説明した。
一方で政府は「移民政策」という言葉を避け続けており、毛受氏は「日本は事実上の移民政策を進めているが、国内のアレルギーから正面から認めようとしない。これは『ステルス移民政策』だ」と批判した。
質疑応答では、外国人政策に関する報道の役割について「外国人が増えているにもかかわらず、移民問題は政治で議論されてこなかった。参政党が取り上げたことで、各政党が議論せざるを得なくなった」と回答。技能実習や特定技能制度については「労働力だけに焦点を当て、家族や教育を含めた制度設計が欠けていた」と批判した。
帰化制度に関しては「韓国に比べて日本の帰化率は3分の1程度にすぎない。移民政策を取らないという前提では積極的に帰化を進めることは難しい」と述べた。さらに、参政党による「日本人ファースト」の動きについては、外国人急増への不安が広がり、規制論が強まっている現状に触れ、「外国人労働者を大幅に減らすことはできない」と指摘した。
外国人受け入れの将来像については、「日本は島国であるため入国管理をコントロールできる利点がある。人口減少により働く世代が減る中、日本語研修や適切な教育を行えば、長期的に失業者が大量に出る可能性は少ない」と語り、日本社会における受け入れの可能性に言及して講演を締めくくった。