ブルームバーグ(Bloomberg)は事情に詳しい関係者の話として、アップルが一時は世界的な議論を呼んだ混合現実(MR)ヘッドセット「Vision Pro」の改良開発を打ち切り、開発資源をスマートグラスに振り向ける方針を決めたと報じた。メタの人気製品に対抗する狙いである。
報道によれば、同社(iPhone製造元)は、より安価で軽量なヘッドセットの新型(コードネーム「N100」)を投入する計画で、当初は2027年の発売を見込んでいた。だが先週から社内メールで従業員に対し、当該プロジェクトの人員を再配置し、スマートグラスの開発を加速させる方針を通知した。
Apple halts Vision Pro overhaul to focus on AI glasses, Bloomberg News reportshttps://t.co/MvcWDwcbJhhttps://t.co/MvcWDwcbJh
— Reuters (@Reuters)October 2, 2025
発売価格が3,499ドル(約51万6,000円)に達する「Vision Pro」は、2024年2月に大々的に発表されたものの、発売後は特色あるコンテンツの不足に加え、本体の大きさや重量がユーザーの想定を上回ったこと、さらにはメタの「Quest」などコストパフォーマンスに優れた競合機の登場も相まって、熱量と話題性が急速にしぼんだのである。
関係者によれば、アップルは「少なくとも2種類」のスマートグラスを開発中である。第一の製品はコードネーム「N50」で、iPhoneと連携して用いるが、自身に表示機能は備えない。最短で来年(2026年)に公開し、2027年に発売する計画である。第二の製品は表示装置を内蔵し、2028年の投入を見込むが、メタとレイバンの共同開発によるスマートグラスのシェアに挑むべく、開発の前倒しを模索しているという。

もっとも、アップルは一連の報道についてコメントを拒否している。
前述のメタのスマートグラスは、マーク・ザッカーバーグ氏とサングラス大手レイバンの協業による製品で、希望小売価格は800ドル(約11万8,000円)である。ディスプレーと新型リストバンド型コントローラーを内蔵する。レイバンとの共同モデルが好調な販売を記録したのち、メタは続けてオークリー(Oakley)と提携したスポーツ向けモデル「Vanguard」も投入した。

ヘッドセット分野と比べると、アップルの人工知能(AI)への取り組みは相対的に薄い。強力な競合であるグーグルが自社開発の最新フラッグシップ機にすでに「Gemini」モデルの計算能力を組み込むなか、アップルはこの競争で依然として後れを取っている。
編集:柄澤南 (関連記事: 半導体に100%関税の衝撃、TSMCとアップルが恐れない理由とは? 陸行之が「5企業」を優先的免除と指摘 | 関連記事をもっと読む )
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