アメリカのトランプ大統領は6日、半導体に対する関税方針を前倒しで発表し、今後すべての半導体製品に対して100%の超高関税を課す方針を示した。ただし、米国内で半導体を製造し、アメリカへの投資を約束する企業に対しては、新たな関税を免除すると明言した。『ウォール・ストリート・ジャーナル』および『ブルームバーグ』は、この発表がアップルをはじめとする神経を尖らせていたテック大手にとって、大きな勝利であると報じている。
トランプ氏は6日、ホワイトハウスの大統領執務室(オーバルオフィス)において、半導体関税に関する方針を正式に発表した。同時に、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)と共に、同社がアメリカに1000億ドル(約15兆6000億円)を投資する計画も明らかにした。『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、今回の関税免除の決定はクック氏にとって極めて重要であり、アップルが最も厳しい関税の影響を免れたことを意味すると伝えている。
クック氏は、トランプ氏の要請通りにiPhoneの全製造ラインをアメリカに移転することはなかったが、トランプ政権1期目と同様に、今回も関税の免除を受けることとなった。トランプ氏は「半導体やチップに対して高率の関税を課す」と述べつつも、「アップルのような企業にとって朗報なのは、もしアメリカで生産する、あるいは生産を約束しているなら、関税はかからないということだ」と強調した。
ほとんどの大手テック企業が米国内事業への投資拡大を表明しており、過去7か月間の投資総額はすでに2兆ドル(約312兆円)を超えている。こうした流れを受け、トランプ氏による半導体関税100%の方針は、現時点ではシリコンバレーのテック大手にとって「警戒解除」となり、パソコンやスマートフォンの製造コスト高騰はひとまず回避される見通しとなった。

産業アナリストによれば、iPhoneの米国内生産は現実的ではなく、アップルはすでに中国からインドへの一部生産ラインの移転を進めている。アメリカに関しては、iPhoneやApple Watchに使用されるすべてのガラス部品をケンタッキー州のコーニング工場で製造するなど、一部部品の生産を約束するにとどまっている。アップルが6日に発表した1000億ドル(約15兆6000億円)の新たな投資は、今年2月に公表された5000億ドルの計画に続く追加措置であり、今後4年間での米国内総投資額は6000億ドル(約93兆6000億円)に達する見通しとなった。
この日、クック氏はトランプ氏に特注の金色の台座付きガラス製記念プレートを贈呈し、「完全にアメリカ製である」と説明した。
(関連記事: TSMCの2ナノ機密流出危機 国家技術を守る女性検察官がスパイ摘発へ | 関連記事をもっと読む )
関係者によると、6日早朝にはトランプ氏がホワイトハウスでNVIDIAのジェンスン・フアン(黄仁勳)最高経営責任者とも会談していたという。『ウォール・ストリート・ジャーナル』によれば、フアン氏はトランプ氏にとって最も信頼される経営者の一人とされ、アメリカへの5000億ドルの投資を約束したことに加え、ホワイトハウスに対して対中輸出政策の緩和を成功裏に働きかけたと報じられている。今年5月、トランプ氏はフアン氏が自らに同行して中東を訪問したことを称賛し、アップルのインド生産については批判的な見解を示していたが、6日にはクック氏を紹介する場面で「世界で最も偉大で尊敬されるビジネスリーダー、天才、そして革新者の一人」と讃えた。

2025年8月6日、アメリカのトランプ大統領とアップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)はホワイトハウスにおいて、アップルの投資計画と米国の半導体関税方針を共同で発表した。(写真/AP通信提供)