日本時間8月7日午後1時1分、トランプ米大統領が主導する「相互関税」が正式に施行され、世界の貿易は対立の時代に突入した。新たな関税制度は事実上ほぼすべての国を対象としており、米国と自由貿易協定(FTA)を結んでいる欧州連合(EU)や日本も例外ではなかった。
台湾から米国への輸出品には20%の関税が課され、韓国や日本の15%よりも高い水準となった。低い税率の獲得に至らなかったことは、海外メディアや専門家の間で批判を招いており、台湾は「交渉失敗国」との烙印を押されるに至っている。
米ピーターソン国際経済研究所の上級研究員チャド・バウン氏は、「我々は新たな世界に突入した。貿易の専門家でさえ、この複雑さには頭を抱えている」と指摘している。
台湾はなぜ関税交渉の「最も失敗した」国の一つと指摘されたのか?
海外メディアによれば、台湾はスイス、カナダ、インドと並び、今回のトランプ政権による関税交渉で「最も失敗した国」の一つと位置づけられている。とりわけ、世界有数の半導体輸出国である台湾が、今回の交渉でより低い関税率を勝ち取れなかったことに対しては、多くの疑問が投げかけられている。
元中広(中国広播公司)董事長の趙少康氏は、「民進党はよく『台米関係は史上最良だ』と言うが、実際には民主党としか関係を築いておらず、共和党を敵に回した。その一連の誤りが今回の結果を招いた」と厳しく批判した。
世界関税戦争の正式開始、誰が免除を受け、誰が懲罰を受けるのか?
最新のデータによると、各国はトランプ関税構造の下で以下のように扱われている。
国/地域 | 対米輸出関税率 | 免除条件の有無 | 備考 |
---|---|---|---|
台湾 | 20% | 無 | 4度の協議を経ても日本・韓国より高水準 |
日本/韓国 | 15% | 無 | 台湾よりも低い水準を確保 |
スイス | 39% | 無 | 大統領が訪米するも効果なし |
カナダ | 高関税 | 無 | オタワ政府が強く抗議 |
メキシコ | 90日間の猶予措置 | 有 | 一時的な緩和期間を獲得 |
インド | 50% | 無 | ロシア産原油の輸入により制裁対象に |
なぜトランプ税率は地政学的な道具として操作できるのか?
今回の「対等関税」の大規模な導入は、米国の《通商拡大法》第232条に基づくものであり、同条項は大統領に対し「国家安全保障上の理由」により外国製品に高関税を課す権限を与えている。トランプ大統領はこれを根拠に、過去には鉄鋼やアルミニウム、自動車に対して25~50%の関税を課しており、今回は半導体や医薬品も新たに「国家安保上の重要品目」として指定された。
トランプ氏は最近、輸入半導体に対し100%の関税を課す方針を発表したが、企業が「米国内での生産を約束する」場合には免除の可能性があると述べた。同氏は「関税によって米国に数兆ドルの収入がもたらされる。私の貿易政策は米国を再び豊かにする」と主張している。
調査会社パンテオン・マクロエコノミクスのデータによれば、米国の2025年7月の関税収入は300億ドル(約4兆7,000億円)に達し、前年同月の平均80億ドル(約1兆2,500億円)を大きく上回った。
台湾の交渉はどこで失敗したのか?民進党政府はなぜ指摘されたのか?
趙少康氏は、副総統の蕭美琴氏が駐米代表を務めていた際、「民主党との関係構築に偏っていた」と指摘し、さらにトランプ氏が当選した後も賴清德総統が速やかに祝意を表さなかったことなど、一連の政治的判断ミスが、今回の関税圧力として台湾に跳ね返ってきたと批判した。
また趙氏は、「台湾は何を材料に交渉したのか。本当に何らかの条件を得られたのか。誰が明確に説明できるのか」と疑問を呈したうえで、最終的な対米関税協定は立法院の承認が必要であると強調し、「いずれ真実は明るみに出る」と述べた。
さらに、現在に至るまで交渉内容が公開されていないことについて、「民進党はかつて“密室政治”を最も嫌っていたはずだ。なぜ今になって透明性が失われたのか」と厳しく批判した。
編集:柄澤南 (関連記事: TSMC株、トランプ氏「関税100%」発言で急落も…なぜその後反発? | 関連記事をもっと読む )
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