「中国+1」戦略は失敗か トランプ関税がアジア経済を揺さぶり、台湾チップに高関税の懸念

2025-08-05 10:45
アメリカ大統領トランプ。(写真/AP通信提供)
アメリカ大統領トランプ。(写真/AP通信提供)
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米国のトランプ大統領は東南アジア各国に対し新たな関税を発動するとともに、「迂回貿易」への取り締まりを強化し、ここ数年世界の製造業が採用してきた「中国+1」のサプライチェーン戦略を根底から揺さぶっている。中国と東南アジア諸国との関税差が縮小し、生産拠点移転に伴うコストも高騰する中、海外に工場を構えた中国メーカーの間では「後悔」の声が上がり、中国国内への生産回帰を再検討する動きが広がりつつある。アジアのサプライチェーンは大きな再編の局面を迎えており、トランプ関税はアジア経済と供給網の構造を再び描き変えつつある。

ここ数年、世界の製造業はトランプ大統領の第1期政権下で対中貿易戦争が激化したことを受け、リスク分散を狙って資金と生産能力を東南アジアに移し、いわゆる「中国+1(China plus one)」戦略を構築してきた。英国『フィナンシャル・タイムズ』は4日、トランプ政権が最近、中国製品への関税を30%に引き下げる一方で、東南アジア各国には10~40%の関税を課す方針を示したことで、このサプライチェーン大移動のルールが根本から書き換えられつつあると指摘した。

さらに衝撃的なのは、トランプ氏が先週、中国から第三国を経由して米国に輸入されるすべての製品に対し、一律で最大40%の高関税を課すと発表したことである。この措置は、最終組み立てのみを東南アジアに移し、主要部品の多くを依然として中国に依存している工場にとって、まさに爆弾のような打撃となる。

「中国+1」戦略の失敗

「『中国+1』戦略は大きな圧力に直面するだろう」と、オックスフォード・エコノミクス(Oxford Economics)のアジア担当エコノミスト、ルイーズ・ルー氏は分析する。ルー氏は、一部の企業はさらに遠方の生産拠点を模索する可能性があるものの、多くの企業は最終的に中国への回帰を選ぶだろうとみている。「新市場への移転には、初期コストが驚くほど高くつく」ためである。

フランスの外貿銀行(Natixis)アジア太平洋地域チーフエコノミスト、アリシア・ガルシア=エレロ氏は、今回のトランプ政権による新関税はより精緻化されており、最終組立地だけでなく部品の原産地や所有構造まで審査の対象としていると指摘する。これにより、ベトナム、タイ、インドネシアなど中国の生産能力を一部受け入れてきた国々でも、再び生産活動の移転が起きる可能性があり、最大の恩恵を受ける国の一つはメキシコになるとみられる。

トランプ関税に対応するため積極的に海外進出した中国企業にとって、現在の状況はまさに不意打ちとなっている。

「以前は中国国内の関税政策が不透明だったため、米国の顧客の大半が注文を東南アジアに移すよう厳しく求めてきた」と、中国福建省で靴製造を手がける閩源(Minyuan)シューズの代表、林思潔氏は語る。同社は今年、カンボジアに2つ目であり、より大規模な工場を新設したばかりだ。しかし林氏によれば、「最新の関税の影響で、まだ発注していない顧客は、カンボジアで注文すべきかどうか非常に迷っている」という。

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