分析》大規模罷免後の米中台情勢 焦点はトランプの台湾対応

2025-08-04 13:15
2025年7月23日、米国大統領トランプがワシントンで行われた人工知能サミットに出席。(写真/AP通信提供)
2025年7月23日、米国大統領トランプがワシントンで行われた人工知能サミットに出席。(写真/AP通信提供)
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米国ワシントンのシンクタンク、ブルッキングス研究所は1日、サントン中国センター研究員のリチャード・ブッシュ氏とライアン・ハス氏による大規模リコールに関する分析を掲載した。特に、第一波の投票が全面的に失敗した後、台湾、中国、米国、そして台湾海峡情勢にどのような影響を及ぼすかを論じている。両氏は、頼清徳政権は引き続き分裂した政局に直面し、北京は親中政権の誕生という次善の結果を得た一方、トランプ氏は台湾に対してより強硬となる可能性がある北京への対応を迫られると指摘した。

米国のシンクタンク、ブルッキングス研究所のジョン・L・ソーントン中国研究センターに所属するリチャード・C・ブッシュ氏とライアン・ハス氏は、2024年の台湾総統選挙の結果、台湾には「分裂政府」が生まれたと指摘した。民進党の頼清徳氏が総統選に勝利した一方で、野党である国民党と民衆党が立法院で過半数を占めたことで、権力の分配は政治的な膠着を生んだのである。

立法院が政府提出の年度予算案を承認しようとせず、とりわけ国防費増額案に抵抗したことにより、頼清徳総統と与党民進党は次第に不満を募らせた。与党支持者の間では、野党勢力が中国共産党の意向を受けて行動しているのではないかとの疑念が高まり、台湾の防衛のためには野党議員をすべてリコールすべきだとの声も出始めた。一方、野党側は、自分たちは必要な監督を行い、財政規律を守り、政府による税金の乱用を防いでいるにすぎないと主張した。こうした対立が、市民団体による「大規模リコール」運動の発端となった。しかし、7月26日に行われた第一波の投票では、国民党議員を含む野党側の誰一人としてリコールは成立せず、8月23日には第二波の投票が予定されている。

ブッシュ氏とハス氏は、この「大規模リコールの大失敗」が、頼清徳総統やリコールを主導した市民団体への批判を招いたと指摘する。頼清徳氏自身はリコールを主導していないにもかかわらず、である。選挙結果は、国民党議員が北京の指示で頼清徳政権を妨害しているというリコール側の主張を有権者が認めなかったことを示した。むしろ、多くの有権者は野党議員が引き続き任期を全うすることを支持したのである。たとえリコール側が彼らを「売国」と非難しても、台湾の民意を動かすには至らなかった。

台湾政局は引き続き分裂

第一波の大規模リコールで、国民党の立法委員24名や新竹市長の高虹安氏のいずれも失職させられなかったことから、リチャード・C・ブッシュ氏とライアン・ハス氏は、台湾政府は依然として分裂状態にあり、リコール前と何ら変化はないと指摘した。今後の焦点は、国民党がこのリコール結果を踏まえて、有権者の支持を得られる将来ビジョンを提示できるか、特に若年層への訴求力を高められるかどうかである。現在、多くの台湾市民は二大政党の双方に距離を感じている。

国民党にとって次の試金石は、2026年末の地方首長選挙となる。過去の傾向では、国民党は地方選で民進党よりも強さを見せてきた。現在、全22県市のうち14の首長ポストを国民党が握っている。「大規模リコールの大失敗」の余波が2026年の地方選挙まで続くなら、国民党は2028年1月の総統・立法院選挙で優位に立つ可能性がある。

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