FRB分裂、利下げ巡り異例の反対票 31年ぶりの波乱で市場動揺

2025-08-01 12:33
FRB議長パウエル氏。(AP通信)
FRB議長パウエル氏。(AP通信)
目次

米連邦準備制度理事会(FRB)は、日本時間の31日午前3時に最新の政策金利を発表した。市場予想通り、5回連続で据え置きとなり、フェデラルファンド(FF)金利は年4.25〜4.50%に維持された。しかし今回の決定では、理事のウォラー氏とボーマン氏が利下げを主張し、反対票を投じた。理事2名が同時に反対したのは1993年12月以来で、259回連続の会合で初めての事態となり、FRB内の分裂が市場の注目を集めた。

発表に先立ち、トランプ米大統領は演説で「パウエル議長はきょうは利下げしないだろう。9月に利下げするという話は聞いている」と述べ、さらに「高金利は人々を傷つけている。今すぐ利下げすべきだ」とFRBを批判した。ホワイトハウスのハセット国家経済会議委員長も、現在の経済データは利下げ条件に合致していると指摘しつつ、「FRBの独立性は尊重する」と強調した。多くの経済学者はFRBの対応が後手に回っていると見ている。

ウォール街の投資家は今回の投票結果に強く反応し、2人の理事による反対票が意味する政策分裂に注目している。パウエル議長は午前2時30分の記者会見で説明に臨む予定で、市場はその発言を精査する構えだ。連邦公開市場委員会(FOMC)の投票は9対2で据え置きが決定され、声明文に大きな変更はなかったことから、市場はFRBが当面利下げに慎重な姿勢を維持していると受け止めている。なお、反対票を投じたウォラー氏とボーマン氏はいずれもトランプ氏が任命した理事で、現行の金融政策は過度に厳しいとの認識を示している。

市場アナリストは、今回の反対票は予想外ではないと分析しつつ、今後の注目点はパウエル議長がこの「意見の分裂」をどう位置付けるかだとしている。FRBの政策運営は今後も難しい舵取りを迫られる見通しだ。

以下はFOMC声明全文:

輸出の変動は経済データに影響を及ぼしているが、最近の指標は、今年上半期の経済活動がやや減速していることを示している。失業率は依然として低水準で、労働市場は引き続き安定している。インフレ率はなお目標をやや上回っている。

委員会の目標は、最大限の雇用と長期的に2%のインフレ率を維持することにある。現時点でも経済見通しには不確実性が残っており、委員会はこれらの目標達成に対するリスクを注視している。

この目標を支えるため、委員会はフェデラルファンド金利の誘導目標レンジを年4.25〜4.50%に維持することを決定した。今後、この目標を調整する必要があるかを判断する際には、最新のデータ、経済見通しの変化、そしてリスクのバランスを慎重に評価する。

委員会は引き続き、国債、政府系機関債務、および住宅ローン担保証券(MBS)の保有を縮小する方針を維持する。最大限の雇用と2%のインフレ目標の実現に向け、断固たる姿勢で取り組む。

適切な金融政策スタンスを判断する際、委員会は新たな情報が経済見通しに及ぼす影響を注視する。目標達成を妨げるリスクが顕在化した場合には、適時に政策対応を調整する。判断にあたっては、労働市場の状況、インフレ圧力やインフレ期待、金融市場および国際情勢など幅広い要素を考慮する。

中国語関連記事

編集:田中佳奈

最新ニュース
「災害対応にジェンダーの視点が不可欠」 女性自衛官らが語る現場の変化と課題
吳典蓉コラム:「民意」を読み違えた頼清徳総統 大規模リコールで露呈したリーダーの孤立
台湾と中国、異例の非公式交渉 頼政権の「オリーブの枝」を北京が一蹴
親中路線を強めるトランプ氏 頼清徳総統を冷遇か?米中「取引外交」に警鐘
舞台裏》台湾リコールで中国も誤算 最も懸念していた人物とは?
台湾関税は20%に決定 なぜ「最良税率」が日韓より高いのか、その背景とは
20%関税で台湾株1.2兆台湾ドル蒸発 国家安定基金が緊急介入
台湾の関税「20%はまだ前菜」──卓栄泰・行政院長、台米協議の焦点は「サプライチェーン協力」と「232条項」
台湾株先物が急落500ポイント超 トランプ20%関税で市場に警戒感
「テクノロジー冷戦」の最前線は東南アジアに 米中のAI覇権争いが地政学リスクを加速
韓国、関税15%で米国と合意 3500億ドル投資と自動車・農産品市場を全面開放でトランプ氏が10ポイント引き下げ発表
世論調査》大規模リコールの「逆風」直撃──頼清徳総統の信頼度、ついに3割台に転落 再選支持は半数以下
外国人との共生社会を目指す、鈴木法相「外国人を人として受け入れる時代へ」──新・育成就労制度の方向性
戦後80年──米軍記録映像が語る知られざる「戦争の実像」 映像解析で次世代へ記憶をつなぐ
堺が見せる日本の底力!大阪万博で職人技と伝統文化を再発見
暑さに負けない!梅・ネギ・XO醤…五味で味わう“夏ごはん” アコメヤのフェアが全国で開催中
暑さにひと息!茅乃舎の「冷たい飲むだし」東京&福岡で無料提供、先着100名限定
「石破首相は辞任すべき」自民党内で退陣論が噴出 ヒゲの隊長も決断迫る
ロシア・カムチャツカM8.8巨大地震が琉球海溝100年周期地震を誘発?専門家「台北は二重共振に警戒」
イチロー、アジア人初の米野球殿堂入り 「3度目の新人」とユーモア溢れるスピーチ
韓国が15%関税優遇と引き換えに差し出したものとは?台湾が驚く「代償の大きさ」
台中市、神戸のマイクロソフトAIラボを視察 「アジア唯一の拠点」にスマートシティ構想のヒント探る
評論:なぜリコールは失速したのか 強権的な拘束と「司法不信」が招いた反発
北京観察》中国社会は台湾の「大リコール」に強い関心 学者「北京は国民党にまだ期待?」
頼清徳総統、リコール惨敗で支持者に謝罪 「悔しさを改革の決意に変える」
津波警報で交通網まひ 東海道線、横須賀線など主要路線が終日運休、仙台空港も滑走路閉鎖
舞台裏》日本と台湾の53年の禁忌を突破 林佳龍外交部長が東京都を訪問
台海解読》米中首脳会談の陰で台湾は犠牲に? 賴政権に「厄介者」回避のブレーキ役
TSMCの苦境!インテル救済か25%関税か 専門家「短期利益も長期は不透明」
台湾が15%の最適関税を獲得の可能性 追加投資と米中交渉の駒リスク
「関税交渉」期限迫る トランプ政権が台湾に「最良税率」提示か、中国は慎重対応
ロシア・カムチャツカ沖M8.8地震 北千島列島が壊滅的被害、漁船・工場水没、2,400人が緊急避難
兵庫・丹波市で国内観測史上最高41.2℃ 京都・福知山は府内初の40℃超 近畿で31年ぶりの40℃台
舞台裏》高雄での民進党陣営初選の変化!「三分天下」が定局 彼女は最強勢力の支援を得た
津波警報》台湾、13:18から「警戒高度」に到達!30センチで人が流される恐れ 沿岸の住民に緊急避難指示
ゼレンスキー大統領の職務解除を検討か 米英がウクライナ高官と秘密会談と報道
独立派支持者も民進党に不満? 専門家「反罷免は藍白連携だけではない、第三勢力の怒りが鮮明に」
M8.8巨大地震、津波がロシア沿岸を直撃 史上最強地震と津波被害を振り返る
評論:「反中カード」が裏目に?頼清徳総統、孤立深める 米国も北京に配慮の姿勢
トランプ政権が「黄金株」で拒否権 米国で国家資本主義モデルが加速か
解説》米国でも「大リコール」はできる?カギはシュワルツェネッガーにあり
TSMCがテスラの165億ドル契約を逃す!マスク氏が新チップ製造を「この企業」に依頼
台湾が国際的非難の渦に直面 アムネスティ「ジェノサイド共犯」の可能性を警告
台湾、最大1メートルの津波到達の恐れ カムチャツカ半島沖M8.8地震で「津波警報」格上げの可能性
ロシア・カムチャツカ半島沖でM8.8巨大地震 地震学者「地球は地震活発期入り」巨大地震続発の恐れ
ロシア・カムチャツカ半島沖でM8.8の巨大地震、日本各地で津波警報 最大3mの津波予想
フジロック2025、来場者12万人超、大盛況のうちに閉幕 来年は2026年7月24~26日に開催決定
【インタビュー】震樂堂、フジロック2025「ROOKIE A GO-GO」に初登場──台湾の廟会文化×メタル、30分で世界を魅了
トランプ氏、中国・習近平氏との会談を模索 台湾・頼総統のNY訪問拒否に、米国内から懸念も―FT報道
台湾人から見たフジロック2025──文化の違いと現場のリアルな魅力