イスラエルとパレスチナの戦闘が続く中、台湾政府がイスラエルに医療センター建設の資金提供を約束したとの情報が伝わった。問題となっている計画地は、イスラエルが占拠し入植を進めるパレスチナ領土、いわゆる入植地である。国際法は入植地建設の支援を明確に禁じており、今回の動きは2023年末以降、国家が入植地に直接資金を提供する初の事例となる。アムネスティ・インターナショナル台湾支部の邱伊翎秘書長は、国際誌『ディプロマット』への寄稿で、台湾の対応は国際法に反するのみならず、イスラエルのジェノサイド行為に加担するものであり、民主と人権の守護者としての台湾の国際的イメージを損ないかねないと厳しく批判した。
寄付金問題と当局の対応概要
台湾のイスラエル駐在代表、李雅萍氏は6日、イスラエルが実効支配するヨルダン川西岸に位置し、48の入植地を管轄するベニヤミン地域議会(Binyamin Regional Council)を訪問し、同地で建設が進められている「ナナシ医療センター(Nanasi Medical Center)」への資金提供を約束した。イスラエルのメディアJNSは、これを「外国がユダヤ人コミュニティの発展に初めて資金援助を行った画期的事例」と報じた。
しかし、香港メディア『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』は20日、イスラエルの入植地への寄付や人員配置は、国連安全保障理事会や国際司法裁判所(ICJ)など国際機関によってすでに違法と認定されていると指摘した。これまで外国政府からの資金が慈善団体を経由して間接的に流入する例はあったが、台湾のように直接寄付を行う手法は国際法違反となる恐れがあり、国際社会での支持獲得にも不利に働く可能性がある。
台湾外交部の蕭光偉報道官は22日、医療分野は台湾とイスラエルの重要な協力領域であるとしつつ、今回の援助はまだ意見交換の段階にあり、駐イスラエル代表処が正式に寄付を約束した事実はないと強調した。
実際、台湾駐イスラエル代表処は2024年3月と5月に計1,590万台湾ドル(約50万米ドル)を寄付し、イスラエル都市での医療巡回活動や、ガザで活動する非政府組織を通じた基本的な人道支援を行ってきた。しかし今回の入植地への直接支援は、従来の人道援助とは性質が異なり、事実上イスラエルの違法占領を認める行為となる。
🇹🇼🇮🇱 Taiwan Stands with Judea and Samaria!
— Betar Worldwide (@Betar_USA)July 8, 2025
‼️ Historic first: A foreign country supports settlement development. In a groundbreaking gesture, the Representative of Taiwan in Israel visited the Binyamin Regional Council and presented Council Head Yisrael Gantz with a donation…pic.twitter.com/bTFXrInm41
国際司法裁判所:いかなる国もイスラエル入植地を支援してはならない
アムネスティ・インターナショナル台湾支部の邱伊翎秘書長は、医療施設の建設地であるヨルダン川西岸は「被占領パレスチナ領土(OPT)」であり、国際法の第四ジュネーブ条約に基づけば、イスラエルによる入植地の設置や拡張はいずれも違法であり、戦争犯罪に該当すると指摘した。
国連や欧州連合(EU)、アムネスティ・インターナショナル、人権監視団体ヒューマン・ライツ・ウォッチなど複数の国際機関も同様の立場を繰り返し表明している。国際司法裁判所(ICJ)は2024年7月の勧告的意見で、すべての国家はイスラエルの違法占領を承認せず、また支援してはならないと強調した。つまり、たとえ医療支援名義であっても入植地の基盤整備に資金を提供する行為は、イスラエルの違法占領を助長することになる。