解説》米国でも「大リコール」はできる?カギはシュワルツェネッガーにあり

2025-07-30 12:35
米国連邦レベルの国会議員には「リコール」制度は存在しないが、例外もある。写真は国民党が先日、凱達格蘭大道で開催した「リコール反対」選挙前夜集会の様子。(写真/陳品佑撮影)
米国連邦レベルの国会議員には「リコール」制度は存在しないが、例外もある。写真は国民党が先日、凱達格蘭大道で開催した「リコール反対」選挙前夜集会の様子。(写真/陳品佑撮影)
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台湾史上初の「大リコール」投票は7月26日に幕を閉じ、結果は25対0となった。現職の立法委員や与党の県市長はいずれもリコールされず、与党・民進党と頼清徳総統にとっては大きな政治的打撃となった。一方で、野党の国民党や民衆党、多くの立法委員にとっては大きな励みとなった。多くの分析によれば、台湾の有権者は既存の民選代表や官員を肯定する傾向にあり、選挙結果を軽々しく覆すことには慎重であるとされる。

しかし、8月23日には第2回「大リコール」投票が控えており、リコール権や国民の基本権利が濫用されているのではないかとの議論が高まっている。これに対し、国内の法学者は《風傳媒》の取材に対し解説した。米国の連邦下院議員や上院議員は連邦レベルに属するため、米国の法制度上リコールは認められていない。ただし、米国史上にはごく少数の「例外」が存在している。米国と台湾のリコール制度の違いは、台湾の政権側や国民にとって改めて考えるべき課題である。

20250611-政大副教授廖元豪11日出席「黨外在野大聯盟」成立大会。(柯承惠攝)
政治大学法学部副教授廖元豪氏が6月11日に「党外野党大連盟」成立大会に出席した際の写真。(写真/柯承惠撮影)

カリフォルニア州は米国の「リコール」の聖地?

憲法、行政法、米国公法の研究を専門とする国立政治大学法学部副教授の廖元豪氏は、水曜日に《風傳媒》の単独インタビューに応じ、「リコールの英語はRecallであり、その意味は文字通り『呼び戻す』に近い」と述べた。

廖氏によれば、「罷免」という制度はもともと英語の用語が先に存在し、その後に中国語訳が生まれたが、実際には多くの米国人はリコールという概念をほとんど知らず、制度そのものを聞いたことがない人も少なくないという。今回の「大規模リコール」の過程で、台湾の学者が海外の研究者と交流する中で、多くの米国人がリコール制度を理解していないことが明らかになった。

廖氏はさらに説明する。米国では連邦レベルにおけるリコール権は存在しない。しかし例外もあり、台湾でも馴染みのあるカリフォルニア州は、まさに米国リコール制度の「宝庫」といえる。州政府の資料によれば、カリフォルニア州では1913年以来、選挙民によるリコールの試みが181回あったが、「実際にリコールが成功するのは非常に難しい」としている。

廖元豪氏によると、公式資料によれば、カリフォルニア州の歴史における181回のリコール運動のうち、必要な署名を集めて投票資格を得られたのはわずか11回であった。その11回の投票のうち、実際にリコールが成立したのは6回にとどまり、成功率はおよそ半分である。 (関連記事: 台湾、大規模リコール失敗 頼清徳政権に打撃 2028年総統選「盧秀燕vs陳其邁」の可能性も浮上 関連記事をもっと読む

阿諾史瓦辛格。(美聯社)
米国の伝説的映画スター、アーノルド・シュワルツェネッガー氏は「罷免案」を通じてカリフォルニア州知事に当選した経歴を持つ。写真はシュワルツェネッガー氏の写真。(写真/AP通信提供)

同時に代替候補者を提出する必要がある

台湾の「大規模リコール」と大きく異なるのは、廖元豪氏によると、台湾は先に罷免投票を行い、3か月後に「補欠選挙」を実施するが、これは米国の制度とは全く異なる。カリフォルニア州の規定では、州レベルの公職者に対して過半数の有権者が罷免を支持した場合、カリフォルニア州は罷免投票と同時に代替候補者への投票も実施し、罷免後の後任者を決定する。「罷免対象となった官員は、代替候補者として自分を立候補させることはできない」とされている。

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