台湾の廟会(ミャオホェ、宗教祭礼)文化とヘヴィメタルを融合させたバンド「震樂堂(ジェンユエタン)」が、2025年のフジロックフェスティバル「ROOKIE A GO-GO」ステージに初出演した。わずか30分間のパフォーマンスで、台湾ならではの儀式性と現代ロックの熱量をぶつけ、強烈な印象を残した。

台湾のバンド「震樂堂」は、台中ロックフェスティバルとフジロックの連携による選出枠を通じて初来日。インタビューに応じたメンバーたちは、「最初は信じられなかったが、今は大きな期待で胸がいっぱいだ」と語り、「台湾の廟会文化のエネルギーを日本、そして世界の観客に伝えたい」と口を揃える。

驚きと興奮の初招待
ドラマーの維罡(ウェイガン)は、出演が決まったときの気持ちをこう語る。
「最初は本当に信じられなかったです。まさか自分たちが選ばれるとは。でも日本に到着して、ホテルで有名なアーティストたちとすれ違う光景を見たとき、『スラムダンク』の全国大会の会場に来たような気分になりました(笑)。それで、自分たちも主人公のつもりで、この舞台で全力を出そうと決めました」
当初は日本の観客向けに演出を調整すべきか悩んだが、「最終的には自分たちらしく、楽しもうと決めた」と振り返る。
廟会×ロック、30分に込めた台湾の魂
ボーカルの大偉(ダーウェイ)は、「たった30分だからこそ、最も凝縮されたエッセンスを届けたかった」と話す。
「廟会の儀式的な雰囲気やエネルギーを、限られた時間の中でどう表現するか、何度も練り直しました。台湾独自の音と精神を、ストレートに感じてもらえるよう工夫しました」

ギターの明騏(ミンチー)は、パンデミックを挟んだ日台音楽交流の再開についても言及する。
「今回の出演は台中ロックフェスとの連携によるものです。コロナ禍では国際的な交流が止まってしまいましたが、今ようやく回復しつつあります。これから台湾のバンドが日本に出演する機会も増えるでしょうし、日本のバンドも台湾のフェスにもっと来てほしいです」
海外観客へ「台湾の精神」を届けたい
スオナ(嗩吶、中国の伝統管楽器)担当の詠丞(ヨンチョン)は、震樂堂の存在そのものが文化の橋渡しだと語る。
「廟会の精神を、ヘヴィメタルやエレクトロのサウンドに融合させています。顔にペイントを施し、儀式的な動作を加えることで、海外の観客からすればとても神秘的に映るでしょう。そして、それが台湾という土地の文化そのものでもあるんです。私たちは音楽を通じて、その“直感的な体感”を伝えたい」
日本でのツアーにも意欲
ベースの楚翰(チュー・ハン)は、日本のライブハウス文化に強く興味を示した。
「渋谷のduo MUSIC EXCHANGEを見に行きましたが、あのエリアにライブハウスが密集しているのはとても新鮮でした。台湾ではあまり見ない光景です。ぜひ東京、大阪、他の都市でもツアーができればと思っています。音楽フェスやイベントにも、また呼んでもらえたら嬉しいですね」
最後に、大偉は日本や世界に紹介したい台湾のアーティストとして、以下の名前を挙げた。
「生祥樂隊、三牲獻藝といったベテランに加えて、装咖人(Tsng-kha-lâng)、同根生など新しい世代のアーティストたちも、伝統音楽と現代の音を絶妙に融合させています。台湾には本当に魅力的な音楽文化がたくさんあります」
編集:梅木奈実 (関連記事: 台湾人から見たフジロック2025──文化の違いと現場のリアルな魅力 | 関連記事をもっと読む )
世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版X:@stormmedia_jp